【速報】機械人間オルタ3が新国立劇場でアンドロイドオペラを指揮 2020年夏には特別公演も予定 東京大学/大阪大学/ミクシィ/ワーナーらの合同プロジェクトで世界へ

オルタ3の登場で「人間とアンドロイドによる新たなコミュニケーションとエンタテインメントの未来」が開く。

2月28日、新国立劇場の大階段で機械人間「オルタ3」がオーケストラを再び指揮したオペラ「Scary Beauty」が初披露された。
ミクシィ、大阪大学 石黒研究室、東京大学 池上研究室、ワーナーミュージック・ジャパンによる「4社共同研究プロジェクト」がスタートする。

新国立劇場の大階段でオーケストラを指揮する「オルタ3」、演目は「Scary Beauty」。左は発案者で音楽家の渋谷慶一郎氏。奥に国立音楽大学学生・卒業生有志のオーケストラが見える


人工生命×アンドロイド「オルタ」(Alter)とは

「オルタ3」は、人間とのコミュニケーションの可能性を探るために開発された人工生命×アンドロイドだ。名前のとおり、3世代めとなる。「生命を持つように感じさせるものは何か?」という問いを追求するため、2016年7月に日本科学未来館で展示されたのがはじまり。翌2017年7月には、指揮者となった「オルタ2」が800人の観客の前でオペラを指揮する「Scary Beauty」(スケアリー・ビューティー)が日本科学未来館で公開された。

オルタ3の全景。

アクチュエータの高出力化、ボディ剛性のアップ、両眼にカメラを搭載し、スピーカーモジュールを採用して口許から発声したり歌うなど、幅広く改良・刷新が行われている。また、誰でも分解・組み立てができ、飛行機輸送もできるポ―タビリティも備えた。
開発の中心を担う大阪大学の小川浩平氏によれば、オルタ3は「世界で最も想像力を喚起する存在」になった、と言う。



「4社共同研究プロジェクト」とは

このプロジェクトは「コミュニケーションを通じて世界を鮮やかに変えていくこと」を事業活動のミッションに抱えている。これまで手掛けてきたさまざまなコミュニケーションサービスで培った技術を応用し、開発には従来通り、世界的なアンドロイド研究者の石黒浩氏と小川浩平氏(ともに大阪大学)、「ALife」(人工生命)の研究者としても知られる池上高志氏と土井樹氏(ともに東京大学)が中心となり、升森敦士氏と丸山典宏氏(東京大学)、オルタ3のシミュレーターを提供するミクシィ、実証実験の場を提供するワーナーミュージック・ジャパンの4社が主なプロジェクトメンバーで構成される。(池上高志氏と土井樹氏はオルタナティヴ・マシン社としての肩書きもある)

左からミクシィの代表取締役社長執行役員の木村弘毅氏、アンドロイド研究の第一人者 大阪大学の石黒浩氏、「ALife」(人工生命)の研究者 東京大学の池上高志氏

オルタ3の開発について解説する大阪大学の小川浩平氏(左)。隣は東京大学の土井樹氏(中央)とミクシィの執行役員CTOの村瀬龍馬氏(右)

昨年、行われたオルタ2による公演の好評を受けて、ワーナーはコンテンツとしての展開を模索していく。また、ミクシィはオルタ3のシュミレータフログラム「Alter3 Simulator」を開発、今回のプロジェクトのリーダー的な役割とともに貢献している。ミクシィの取締役社長の木村弘毅氏は「これほどの高いレベルで科学技術とアートを融合・実現できるのは日本だけ」と表現し、日本発としてアンドロイドオペラを発信していく考えだ。

オーケストラを向いて指揮するオルタ3。空圧式らしい柔らかさと、まるでモーター式のような制動やレスポンスを得て、よりダイナミックな表現が可能になった


「ALIFE Engine」を世界で初めて搭載

「オルタ3」には「ALIFE Engine」が世界で初めて搭載されている。アンドロイドの美的表現を極限まで追求するために東京大学池上研究室が理論設計し、オルタナティヴ・マシン社が新たに開発したダイナミクス生成エンジンだ。

■ 今回、初披露された「Scary Beauty」オルタ3バージョン (ショート版)


今後の展開

今後の予定として、アンドロイド・オペラの発案者である音楽家の渋谷慶一郎氏による「Scary Beauty」の公演が予定されているほか、日本科学未来館キュレーターの内田まほろ氏が企画する世界各地での展示が計画されているという。

記者発表会の音楽家 渋谷慶一郎氏(左)。右はワーナーミュージック・ジャパンの増井健仁氏

さらに世界中から東京に注目が集まる2020年8月には新国立劇場の「特別企画」に参加する予定だ。これは、国際的指揮者の大野和士氏、作家の島田雅彦氏、渋谷慶一郎氏が共作するオペラ作品となる予定で、子ども達とアンドロイドの共演になるようだ。

新国立劇場2020年特別企画について語る新国立劇場オペラ芸術監督であり指揮者の大野和士氏(右)。中央は作家の島田雅彦氏、左は日本科学未来館の内田まほろ氏

「4社共同研究プロジェクト」では、オルタ3の登場が人間とアンドロイドによる新たなコミュニケーションとエンタテインメントの未来を示唆していく、としている。

ロボスタでは、オルタ3の開発に携わった池上先生のインタビュー記事「【アンドロイドオペラ特集(1)】オルタ3に初搭載された「ALIFE Engine」とは? 人工生命とは何か、東京大学 池上教授インタビュー」や小川先生のインタビューを交えた詳細を公開。

■ 前回の公式動画 「Scary Beauty」(Android Opera “Scary Beauty” , July 22, 2018)

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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