カメラ映像をAIが解析、業種別AI活用事例 〜事故や犯罪の防止、交通量調査や来店客分析などの事例を紹介「NVIDIA IVA Summit」

ディープラーニングなどのAI関連技術の登場によってコンピュータは「目」(認識能力)を持ち、画像の内容を判断することができるようになった。そして、それによって映像関連分野での活用が飛躍的に進んでいる。ポイントとなっている技術は「NVIDIA Jetson」シリーズなどを活用した、エッジでのAI解析だ。

NVIDIAは3月1日、丸紅株式会社 東京本社にて「NVIDIA IVA Summit in Japan」を開催した。主なテーマは「IVA」。Intelligent Video Analyticsの略称で「インテリジェント ビデオ分析」と訳す。カメラ等の映像をAIによって解析する分野で、AIが不審者を発見したり、万引きを防止したり、踏切事故を監視したり、交通量調査など、既に幅広い分野で導入が進んでいる。また、人手不足の解消や事業の効率化にも期待が集まっている。



映画の中で、たくさんの監視カメラのモニタ映像を見張っている警備員のシーンをよく見かけるが、あれは監視カメラの映像を警備員がチェックして異常をみつけたら現場のスタッフに通知するものだ。まさにこの役を自動化しようというのがIVAの解りやすいユースケースと言えるかもしれない。


ビジネス分野別AIによる映像解析業務(可能性)

冒頭、NVIDIAのシニアマネージャー鈴木氏より「AIが暮らしを変える 超高齢社会で期待されるIVAの可能性」について講演が行われた。

NVIDIA インダストリー事業部 シニアマネージャー鈴木 紀行氏

鈴木氏は、IVAのユースケースを紹介する動画を通して、空港のセキュリティ、街頭や混雑の中で迷子を捜す、デンソーウェーブのタオルを折りたたむロボット、ピッキングロボット、人間の五感との連動、自動運転などに触れた。また、そのムービーのBGMもAIが作曲したとして、AIの芸術分野への広がりの可能性も示唆した。

立ち入り禁止区域に侵入した人の検知、その他不審者や迷子の検知、交通状況の予測や管理など、便利で安全なまちづくりに貢献する「スマートシティ構想」のほか、無人店舗や無人コンビニ、レジの自動化、万引き防止、陳列棚を来店客がどのように移動したかのトレース、販売状況の予測・分析など、小売業での活用も期待されている。


AI関連技術とカメラ映像を組み合わせて最も多くの成果を上げている企業のひとつがオプティムだ。この日もオプティムにより、スマート農業(ピンポイント農薬散布テクノロジー)、駅のプラットフォームの安全管理、建築現場の安全&運用管理(コマツとの合弁会社)、無人ストア、駐車場の空き状況検知など、多くのユースケースが紹介された。その他、丸紅、エクサウィザーズ、クラウディアンなども導入事例を次々に紹介した。


AIはビデオ映像をクラウドで見るか、エッジで見るか?

一方で、IVAには大きな課題もある。その一つがカメラの映像データをどこでどうやってAIに解析させるか、ということ。
ひとつの方法が「カメラの映像データをまるごとクラウドに送って、クラウドでAIが解析する方法」だ。これは考え方としてはシンプルだし、クラウドの高性能なAIが解析するので高い精度が期待できる一方で、カメラからクラウドに送る映像データは膨大な容量になるという課題がある。モバイルで通信する場合にはコストにも影響する。なおかつ、複数台のカメラ、数百台のカメラからの映像解析となればクラウドに送る映像データはどんどん増えていき、実用には現実的ではないことがわかる。


そこで浮上するのがもうひとつの選択肢だ。カメラ自身や現場に設置できる小型のコンピュータにAI解析処理能力を持たせること(上記イラストの下半分)。このイベントでNVIDIAと連携している丸紅は、NVIDIAのGPUを積んだ超小型のAIコンピュータ「Jetson」(ジェットソン)を搭載したカメラ「TRASCOPE」(トラスコープ)AIを2018年から販売している。各カメラの単価は上がるものの、各カメラ内で解析できる利点がある。また、クラウディアン社(Cloudian)が開発・販売している「Cloudian AI BOX」を用いる方法もある。カメラと「Cloudian AI BOX」を現場に設置し、カメラの映像を現場で処理する方法だ。

クラウディアン社が開発・販売している「Cloudian AI BOX」(公式ホームページより)。左が防水防塵などが考慮された屋外用、右が屋内用

これらエッジ側でAI処理を行う場合、AIが異常事態、緊急事態を判断するとともに、そう判断した映像のみ、クラウドに送信して詳細に解析する方法もとれる。この場合でも、すべての生映像をクラウドに送信するよりもずっとローコストになることは言うまでもない。

現状では、エッジでAI解析処理を行うには「NVIDIA Jetson」シリーズの採用が近道で最有力だ。今後は、GPUにくわえて、TPUやFPGAなどの選択肢も増えてきそうだが、いずれにしてもエッジでのAIコンピューティングが当分ホットな市場になりそうだ。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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