ロボットやドローン、カメラやモバイル機器など、小型デバイスにおけるAIエッジコンピューティング分野が急拡大する気配だ。そしておそらく競争も激化するだろう。
AI、自律走行車、ロボティクスにおける NVIDIA の最新イノベーションが集結するイベント「GTC 2019」がシリコンバレーで開幕した(現地時間の21日まで)。
その「GTC 2019」において、NVIDIAは超小型のAIコンピュータボード「Jetson」シリーズの新製品「Jetson NANO」(ジェットソン・ナノ)を発表した。基調講演でNVIDIAのCEOジェンスン・フアン氏がお披露目した「Jetson NANO」はクレジットカードサイズの「Jetson TX」シリーズよりも更に小型のAIコンピュータボードだ。
ロボットやドローン、監視カメラ等に組み込めるAIコンピュータが「Jetson」
クラウドのスーパーコンピュータからサーバ、パソコン、小型の端末まで、今や様々なデバイス環境で「AI」が必要とされている。しかし、「AI」が高速に処理するには、コンピュータには相応の演算パワーが必要となる。主にその大役をGPUが担っているが、小型の端末やカメラ、ロボット、自動搬送車などに内蔵するための、GPUを搭載したAIコンピュータが「Jetson」シリーズだ。
Jetsonシリーズは、クレジットカードサイズの「Jetson TX2」(TXシリーズ)と、それより少し大きいサイズだがハイパワーの「Jetson AGX Xavier」がある。そこに新たに、更に小型の「Jetson NANO」がラインアップに加わった格好だ。
処理性能はJetson nanoが0.5、Jetson TX2が1.3、Jetson AGX Xavierがと10TFLOPS(テラフロップス)で、Xavierの高速性は突出している印象だ。しかし、このクラスのサイズのAIコンピュータで、モバイル性も重視される環境の場合、「消費電力」も重要な要素となる。その点ではJetson Nanoは最も電力が低く魅力的だ。価格は129USドル。(開発者向けキットは99ドル)
早速、開発者向けキットがGTC会場で販売されている。
開発者数は5倍に増加
Jetsonシリーズはこの2年で急激に成長している。同社の発表によれば、2017年と比較して開発者数で5倍、ユーザー数は6倍、エコシステムパートナーの数も2.5倍に増加していると言う。
監視カメラ(セキュリティカメラ)などのIVA分野、産業用ロボットなどのビジョン分野、サービスロボット、ドローン、AGV(自動運搬車)、各種IoT、エッジコンピューティングなどの拡大を考えると、これから数年、急拡大が期待できる市場と言えるだろう。
とはいえ同時に、これからもっと競争が激化する可能性も予想される。GPUの牙城を切り崩そうと、TPUやFPGAがこの分野での競争に加わろうとする動きもある。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。