【GTC2019基調講演】NVIDIAの自律ロボット「Kaya」はJetson Nano搭載、Isaacで開発!Amazon AWSとJetsonの連携も発表

NVIDIAのイベント「GTC 2019」が開催され、現地時間で18日の午後、基調講演に同社のCEO、ジェンスン・フアン氏が登壇した。昨年は、約3,500人が収容できるサンノゼ・マッケンリー・コンベンションセンターの大ホールで行われたが、満員で観客が溢れていたため、今年は規模を拡大して約5,000人収容のサンノゼ州立大学で行われた。
ジェンスン・フアン氏はいつもの革ジャンと黒いパンツのルックスで登壇し、ロボティクスや自律マシン分野の話題として小型のAIコンピュータボード「Jetson」とロボティクス開発プラットフォーム「Isaac」に触れた。


Jetsonの市場は拡大、ロボティクス市場に注目

フアン氏は「驚くべきことに約2,000社で、約20万人の開発者たちがJetsonを活用して自律マシンの開発を行っています。倉庫物流ロボット、小型配送ロボット、農業用ロボット、小売分野向けロボット、アシスタント用ロボット、産業用ロボットなど、既にあらゆるところにロボットがあります(Robots are everywhere!)。困難だったり大変だったりすることを私たちの代わりにやってくれたり、能力を拡張してくれます」と語った。

NVIDIA Jetsonプラットフォームは、AIで迅速に処理しつつ、電力効率の高いコンピューティングを実現する。小売業、製造業、農業などの産業用の自律マシンおよびスマートカメラ等に、最先端のAIを提供し、知能化をはかることができる。


「そして今、この分野は多くの研究で溢れ、究極のAIが求められています。今日、私達は新しいロボット工学に向けたAIコンピュータを発表します。それはこれまでで最も小さいAIコンピュータです。これがJetson Nanoです。AIコンピュータなのにわずか99ドルです(開発者向けキット)!それはCuda環境で動作します。他のJetsonシリーズと共通のスタックと開発環境です。私たちはロボティクス業界にとても注目しています。そして、ロボティクス・エコシステム用のツール一式を作成することにしました」と続けた。

超小型の「Jetson Nano」を持つジェンスン・フアン氏(基調講演にて)


ロボティクス開発プラットフォーム「Isaac」

そこで紹介されたのが、昨年のGTC2018の基調講演でも注目されたロボットの開発環境「Isaac」(アイザック)だ。Isaacはロボティクスを開発するためのプラットフォームだ。

例として、同社が開発中のコンセプトモデル「Kaya」(カヤ)を公開した。

ちょこまかと動作するKaya(基調講演で紹介されたもの)。Jetson Nanoを内蔵している。カメラや深度センサーなどを搭載している

Kayaは玩具のようなサイズながら自律走行するロボットだ。Kayaにはこの日発表された「Jetson Nano」が内蔵されている。

Kayaはコンセプトモデルなので様々なバージョンがある(公式画像より)


CarterとKayaは共通のスタックで開発

Jetson AGX XavierとNanoは共通のスタックで開発と運用ができるため、Jetson AGX Xavierを搭載し、セグウェイの駆動機構を持った自動運搬車AGV「Carter」と共通のシステムで動作している。


Kaya、Carter、Linkはすべて共通のスタックで開発されている。KayaがNano、その他はXavierを搭載している


「Isaac SIM」と「Isaac GYM」

Isaacでは、ロボットは仮想現実環境で動作を自律学習し、本物の自律ロボットとして一人前になるようにロボットシミュレータ「Isaac SIM」で成長する。ロボットが一旦完成すると、その頭脳となるAIシステムを、現実のロボットに物理的に組み込む。知覚、推論およびプランニングからなる「ロボティクス・ループ」は基本的にどのロボットでも同じだ。ロボットに世界を認識させる方法を正確に学ばせ、ロボット自身が何をすべきかを判断するために、リアルな世界とほとんど同じシミュレーション環境と、シミュレータが必要だ。


また、機械学習アルゴリズムが重要だ。フアン氏は「ものを見て、そこに移動して拾い上げる、人はその一連の動作をどのようにやっているでしょうか。モノの形状は様々だし、置いてある場所も常に同じとは限らないのに」と語りかけた。このように周囲の環境や拾い上げるモノの形状や位置が変わったとしても、いつもロボットにそれを正確にやらせるには、コードによるプログラミングではほぼ無理なのだ。だからこそ、自分自身でそこまで移動してモノを拾いあげるために、状況に応じて自律的に対応できるAIアルゴリズムが重要となる。
そこで強化学習を使って学習することができる「Isaac GYM」を開発した。これらをエコシステムとして提供することで、知能的な自律ロボットを短時間で開発できるようになる。

Isaac SDKの提供先も公開された

Kayaを見せながらジェンスン・フアン氏は「もしも、このような小さなロボット玩具を作りたいと想ったら、JetsonとIsaacを使って簡単に開発できます」と呼びかけた。例えば、このようなイヌ型ロボットを作ることもできるし、もっと大きなロボットや、ビジョンやスピーチ認識など、さまざまなロボットやデバイス開発にこの環境を活かすことができることを強調した。
これが「Isaacプラットフォーム」のコンセプトと概要だ。フアン氏はオープンな環境なので気軽に使ってみて私たちにフィードバックをくださいと、会場に呼びかけた。


Jetsonでの開発をAmazon AWSで加速

Jetsonにおいては更に基調講演とは別に、Amazon AWSとの連携に関するプレスリリースも発表した。内容は「AWS IoT Greengrassを使うことでNVIDIA Jetson搭載のエッジデバイスに対してシームレスにAIが展開できる」というもの。AWS RoboMakerでも利用できるようになる。
AWSでモデルを簡単に作成し、トレーニング、および最適化してから、AWS IoT Greengrassを使用してJetson搭載のエッジデバイスにデプロイすることもできる。

AWS IoT Greengrassは、AWSで管理や分析など生成したデータに基づいた機械学習の推論などをエッジデバイスにシームレスに拡張できる。Jetson搭載のデバイスは、AWS IoT Greengrassを使用して、ほぼリアルタイムで実行を行い、エッジ側で推論を行う。その後、データはAmazon SageMakerなどの機械学習サービスにフィードバックされ、モデルの精度が向上していく、という。

(Featured Ayuka Alyson Kozaki)

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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