武蔵精密工業は「第3回 AI・人工知能EXPO」において、SixEye Interactiveとの合弁で、Musashi AI株式会社を設立することを発表した。同社は「第3回 AI・人工知能EXPO」の初日となる3日、同社ブース内でプレスブリーティングとプレゼンテーションを行い、展示ブースのステージ上で新会社設立を明らかにした。
(冒頭の写真:ガッチリと握手をかわす大塚社長とSixEye Interactive Ltd.のRan Poliakine氏:「第3回 AI・人工知能EXPO」の同社ブースにて)
Industry 4.0、スマートファクトリー実現を加速する狙い
武蔵精密工業は愛知県豊橋市に本社を置き、14ヶ国に生産拠点を持つ、約1万6千名の従業員数を持つ企業。四輪・二輪車用向けのデファレンシャル、トランスミッションギヤ、プラネタリィ、ボールジョイント、カムシャフト等の開発/製造/販売を行っている。特に二輪車向けトランスミッションでは約30%と高い世界シェア率を誇る。
子会社となるMusashi AIの設立に関しては、Industry 4.0、スマートファクトリーの実現のため、AI技術開発に取り組んできたが、今後さらに技術開発のスピードアップ、製造現場への実装、グローバル展開をより加速するため、とその目的をあげた。Musashi AIは「人と機械との協働を実現し、製造プロセスの最適化により生まれる新たな価値を顧客へ提供」していくと言う。
同社の代表取締役社長である大塚浩史氏はステージに登壇し、少子高齢化による労働力不足の解消、人に依存する品質維持からの脱却、ものづくりの最適化による働き方改革、の3つを、製造現場での解決したい課題として掲げた。
また、ものづくりの現場では「搬送」が全体の20%、「段取」と「加工」で60%、「検査」で20%の作業があり、「搬送」と「検査」を合わせた40%をまずは自動化して作業効率のアップをはかりたいとした。(このためのソリューションとして、今回の展示では搬送と検品の自動化システムが展示されている)
特に「検査」では、5万分の1の確率しかない不良品をみつけるために、一日中同じ検査作業をスタッフが延々と行っているため、効率化のためだけでなく、働き方改革の意味でも、自動化によるメリットは大きいと言う。
SixEye Interactiveは、Carallon groupのメンバーで、高度な制御システムに特化した独自の製品開発拠点を持ったイスラエルの企業。プレスリリースによれば、エンターテイメント用照明制御コンソール、建築照明システム、およびビデオ処理技術の領域に精通した技術者がいて、高度な映像・照明制御ソリューションの分野における豊富な実績があるとしている。
AIエッジコンピュータ、外観検査システム(ロボ)、自動搬送車などを展示
同社の展示ブースでは、NVIDIA Jetson TX2内蔵のAI現場実装用GPUボックス「ニューラルキューブ」とロボットアームによるデファレンシャルギヤの外観検査システム(打痕検出デモ)を展示したほか、溶接ギヤ 外観検査システム(スパッタ検出デモ)、更には開発中の工場用自動搬送車(SDV : Self Driving Vehicle)なども披露した。
SDVは、従来からある技術ライントレースに加え、SLAMを活用した自律走行のデモも行われていた。従来の自動搬送車と比較して登坂能力にも優れると言う。このシステムの開発にSixEye社が携わり、今後の製品化にあたっては新会社のMusashi AIが行っていく模様だ。
ニューラルキューブやSDV(AGV)については既報の記事も参照。
武蔵精密工業株式会社
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。