【速報】日本最大級の音楽祭「横浜音祭り2019」に分身ロボット「OriHime」が参加 葉加瀬太郎、エビ中、ももクロら公演予定

日本最大級の音楽フェスティバル「横浜音祭り2019」が今年9月15日(日)に開幕する。「横浜音祭り」は3年に一度、横浜で開催されているイベントで今回は11月15日(金)までの約2か月間にわたって開催され、横浜「発」、横浜「初」のオリジナルコンテンツを世界に発信していく。約300の公演プログラムが予定され、葉加瀬太郎氏、林英哲氏、村治佳織氏、エビ中やももクロらも、ジャンルを超えて公演予定だ。そしてなにより今回は分身ロボット「OriHime」(オリヒメ)がひと役買うことになった。会場に行くことができない障がい者の人にも音楽祭が体験できる機会を提供するため。

ゲストとして登壇した「横浜音祭り2019」で公演を行うアーティストたち。一番右は「OriHime」と、その開発を行うオリィ研究所の吉藤健太朗氏


「横浜音祭り2019」とは

クラシック、ジャズ、ポップス、日本伝統音楽など、ジャンルを問わず、約300ものプログラムが用意されている。場所は横浜全域で開催され、これは横浜に大きな劇場・音楽ホールが存在しないためだ。これを逆手にとって、横浜各地で開催され、地域全体が音楽に包まれた62日間になると言う。
オープニングプログラムは「横浜音祭り2019 オープニングコンサート アンドレア・バッティストーニ×東京フィルハーモニー交響楽団」で、最終のクロージングプログラムが葉加瀬太郎氏の公演となる。

4月23日、「横浜音祭り」の開催内容の発表会見が開かれ、冒頭では実行委員長の近藤氏、横浜市長の林氏らが登壇し、「横浜音祭り」開催の社会的・芸術的な意義を語った。

「このフェスティバルを通じて横浜から世界に向けて情報を発信するとともに、大きな時代の変わり目を感じ、ひとりひとりが自分自身のよりどころを正しく見つめ直すイベントにしたい」横浜アーツフェスティバル実行委員会 実行委員長 近藤誠一氏

「横浜全市内で約300のプログラムが開催されます。この音祭りと、現代アートの祭典の「ヨコハマトリエンナーレ」と、そして「Dance Dance Dance at YOKOHAMA」と3つのイベントが毎年代わる代わる行われていくので期待してください」横浜市長 林文子氏(名誉会長)


ももクロからビデオメッセージ

実際に開催されるプログラムは魅力的なものが目白押しとなっている。ディレクターは第1回から続けて新井鷗子氏が担当。発表会では「横浜音祭り2019」の見どころと注目のプログラムを解説した。

「水道や電気のように、音楽をインフラにしたい。すべての人にとって音楽が届いていることを実感できるイベントにしたい」横浜音祭り2019 ディレクター 新井鷗子氏

その際、ももいろクローバーZによるビデオメッセージが流された。ももいろクローバーZは「ヨコハマ・ポップス・オーケストラ2019 本広克行プロデュース 横浜音祭りスペシャル」に出演する予定。

■ももいろクローバーZ 「横浜音祭り2019」ビデオメッセージ


「横浜音祭り2019」で公演予定の豪華ゲスト陣

更にはゲストとして、それらプログラムに出演するヴァイオリニストの葉加瀬太郎氏、作曲家の菅野祐悟氏、和太鼓奏者の林英哲氏、ギタリストの村治佳織氏、アイドルグループの私立恵比寿中学らが登壇した。

作曲家の菅野祐悟氏。大河ドラマ「軍師官兵衛」、連続テレビ小説「半分、青い。」「新参者」「MOZU」、アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」など、数々の作品を手がける。今回は「踊る大捜査線」の本広克行氏プロデュースでももクロとのコラボも。「ヨコハマ・ポップス・オーケストラ2019 本広克行プロデュース 横浜音祭りスペシャル


アイドルグループの私立恵比寿中学(エビ中)。期間中の週末を中心に商業施設や公園などのオープンスペースで行われる「街に広がる音プロジェクト」に参加

ギタリストの村治佳織氏。「村治佳織の世界」に出演

■「横浜音祭り2019」発表会見 私立恵比寿中学、葉加瀬太郎氏、村治佳織氏コメント


分身ロボット「OriHime」も「横浜音祭り2019」に参加

そして分身ロボット「OriHime」の開発者として、ロボスタではお馴染みの吉藤健太朗氏も登壇した。
「OriHime」はカメラやマイク、スピーカーが内蔵され、感情が表現できるように首と腕が動作する機構を持つロボット。遠隔から操作することができるが、他の遠隔操作ロボットと大きく異なるのが、障がいを持つ人でも操作できることを前提に開発された点だ。
障がいなど身体的制約があって外出することができない人も、コンサート会場の臨場感を味わい、感動を共有できるような環境を実現するために分身ロボット「OriHime」がひと役買う。

株式会社オリィ研究所 代表取締役 吉藤健太朗氏

ステージ上では実際に分身ロボット「OriHime」を操っている村田さんがロボットを通じて挨拶をした。村田さんも重度の障がいを持つが、「OriHime」の操作と会話するのには支障がないため、吉藤さんとともに「OriHime」でこの場に参加し、会場の人たちにメッセージを伝えることができる。

村田さんが「OriHime」を通じて挨拶。さまざまな障がいを持つ人でも音楽祭に参加できる、そんな可能性を広げてくれる

■OriHimeが「横浜音祭り2019」に参加




吉藤健太朗氏インタビュー

身体的な理由で音楽祭に参加できない人も分身ロボットで会場に参加することができる、それはオリィ研究所にとって新たな取り組みとなる。発表会の終了後、吉藤氏がロボスタの単独インタビューに応じてくれた。

編集部

発表会ではディレクターの方が「今回はようやくOriHimeに参加して頂けることになった」と熱望されていたコメントが印象的でした。「横浜音祭り」参加の経緯を教えてください。

吉藤氏

ディレクターの方をはじめ、関係者の方々が分身ロボット「OriHime」を知ってくださって、1年半くらい前、「横浜音祭り」に「OriHime」も参加して欲しいというオファーを頂いたのがきっかけでした。当初は、「OriHime」には通信速度や音質表現の技術的な限界もあって、音楽を楽しむならテレビなどによる中継の方がいいだろうし、分身ロボットに出る幕があるのだろうかという気持ちから参加を躊躇していました。
しかし、いろいろ話を聞いたり、打ち合わせしていくうちに、音楽というのは音楽そのものを楽しむだけでなく、誰かと一緒に聞いたり、参加したイベントについて友達や他の人達と話すといったことも音楽の楽しみ方なんだと気づかされました。一緒の会場にいる感覚を共有することが音楽の大きな楽しみのひとつなのであれば「OriHime」のコンセプトにまさに合致しますし、会場に参加することが困難な人にとって役立てて頂けるだろうと確信しました。

編集部

なるほど。具体的には「OriHime」は「横浜音祭り」でどのように活用されることになるのでしょうか

吉藤氏

3つあります。ひとつはコンサートなどの一部の会場に複数台の「OriHime」を設置する、いわゆるOriHime席が用意され、会場に来ることができない人達がスマートフォンなどを使ってOriHimeを通じて会場に参加して楽しむことができます。横を見れば隣のOriHimeが見えたり、会場で一緒に聴いている人たちも見えるという、自分だけの身体を持って参加しているという未知の体験ができると思います。
もうひとつは「OriHime」を持って誰かと一緒に横浜の街歩きを楽しむ体験です。外出できない人が「OriHime」を通じて、音楽で溢れている横浜の街と音楽フェスティバルを見ながら、感想を話し合ったり意見を交換しながら、あたかも同じ空間にいるように楽しむことができます。
3つめは「OriHime」を開発しているメンバー達にも「OriHime」で「横浜音祭り」に参加してもらおうと思っています。音楽が好きなメンバーもいるので「OriHime」を通じてフェスティバルやコンサート会場に参加した感想などを、公式ブログなどに書いて発信してもらおうと考えています。

編集部

スマートフォンのテレビ電話を使って街歩きをするのと、分身ロボットを通じて行うのとではどのような違いがありますか



この質問に対して、インタビューに「OriHime」で参加してくれていた村田さんは「自分の意思で視点を自由に変えたり、発言に手の動きを付けて表現したり、周囲の人に話しかけてもらえたり、景色も相まって私はいま周囲の人達と一緒に横浜にいるんだ、と体感するには分身ロボットは掛け替えのない存在」だと話してくれた。

吉藤氏

その場所にいることを自分が実感するには、周囲の人にそこに自分がいることを意識してもらうことが実は重要なんです。分身ロボットが動いて話していると周りの人が注目してくれて、目を合わせてくれたり話しかけてくれます。このような「リアクションの連続性」によって、そこに自分が確かに存在しているということを実感させてくれます。そこが実体と存在感のあるロボティクスの利点だと考えています。

編集部

どのような障がいを持つ人が「OriHime」を使って「横浜音祭り」に参加できそうですか

吉藤氏

スマートフォンの操作ができる人ならまずはどんな人でも参加できると思います。また、目の不自由な方も会場で音楽を聴いて楽しんだり、街歩きで音楽フェスティバルを耳で体感して楽しめるのではないかと思います。また、耳の不自由な方でも街歩きで景色やフェスティバルの様子を見て楽しめれば素晴らしいのではないかと感じています。
また、私達が開発している視線入力では目の動きで「OriHime」を操作したり発話することができるので、ALSのように重度な障がいの方でも参加して頂けると思います。



「OriHime」はテレワーカーによる遠隔操作ロボットとして多くの企業に導入されている。昨年11月には、身長120cmの「OriHime-D」を使って障がい者が遠隔操作で接客することができるカフェ「DAWN」を期間限定でオープンし、新しい就労支援への道を提案したオリィ研究所。
横浜で、外出することができない人の音楽フェス参加支援への新たな挑戦がはじまる。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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