三菱地所が描くデリバリーロボットによる次世代物流!高評価の「Marble」を丸の内でラストワンマイル実証実験
三菱地所株式会社は、次世代のエリア物流の自動化とデリバリーロボット導入への展開にも積極的だ。三菱地所グループが全国に所有していたり、運営管理している様々な施設にも次世代物流システムの導入や活用方法を今後も検証していく方針を示している。
その一環として、三菱地所は5月17日、アメリカのロボット開発企業Marble(マーブル)社が開発した自動運搬ロボットの自律走行実証実験を東京・大手町にて実施し、その様子を報道関係者に公開した。この自動運搬ロボットはサンフランシスコでマーブルが実験実験を重ねてきた製品で日本では初公開となる。最大の特徴は屋外と屋内をシームレスに、スムーズに自律走行すること。予め、専用のマップを作成しておけば、広い範囲でもカバーできる。
立命館大学キャンパスでの実験が高評価
Marbleの実証実験は、まずは先日連携を発表した立命館大学のキャンパス内で行われた。その結果が高評価だったこともあり、三菱地所のお膝元である丸の内エリアへの展開へとコマを進め、報道関係者に向けて発表することになった。実証実験に伴って、Marble社のCEOであるPeterson氏や開発スタッフが来日、発表会に参加した。
独自のマップ技術で屋内外を自動走行
物流において、消費者や最終目的地に近い地域をラストワンマイルと呼ぶが、Marble社のCEOのKevin Peterson氏は「1909年からの110年間で物流の作業形態はほとんど変わっていない。大きなクルマ(トラック)で荷物を運び、クリップボードを確認しながら配送先を探して配達している。我々はこのラストワンマイルの業務形態を自動搬送ロボットによって変えたい」と語った。
Marble社のロボットは高性能のレーザーセンサー(LiDAR)と複数のカメラを活用した独自技術により、雨天走行も可能な屋外・屋内双方での自律走行をシームレスに行うことができる。三菱地所はこれを世界最高レベルの自動運搬ロボットと評価している。
従来、屋外走行を前提とした自動運搬ロボットの多くは、GPS(全地球測位システム)を利用する。そのため、屋内を自律走行することは難しい。
このロボットでは事前に専用のマップを作成する。ただし、マップは予めリモートコントロールで走行することで、搭載したLiDARとカメラによって自動的に作成できる。Googleマップのような地図情報や建物のCADデータなどは全く必要ない。そのため屋内でも屋外でも、また屋内外を経由して複数の建物内も自律走行でシームレスに行き来することができるしくみだ。
■三菱地所によるMarbleの解説
基本的には専用に作成したマップで中継地点やゴール地点を指定することで自律的に走行し、障害物を検知したり、人やモノが飛び出した際は瞬時に検知して停止や回避行動をとることができる。
■自律走行中に人が飛び出し場合の緊急停止デモ
自動搬送ロボットの自律走行デモ
報道関係社向けの発表説明会では、LiDARとカメラで予めマッピング済みの自動運搬車を使って、敷地内の屋外を走行、自動ドアを通って大手町ビル内を走行し、再び自動ドアを通ってビル外へ出て走行するというデモが公開された。感想としては、走行スピードも比較的速く、人を検知するとキビキビと回避行動をとる印象。横に広いキャンパスのような敷地内では即戦力として活躍できそうだ。
■Marble が屋内外をシームレスに自律走行するデモ
なお、デモでは、より具体的な導入事例として、敷地内のテラス等から飲食物などをスマホ等で注文し、自動搬送車が注文を受けた店舗に出向き、飲食物を受け取ってテラス等にデリバリーすることを想定したデモも行われた。
■注文の品をMarbleが店舗に出向いて集荷し、テラスに届けるデモ
スマートシティ構想での自動運送ロボットの役割イメージ
三菱地所では、Marbleの技術と自動搬送ロボットを使い、屋内を起点とした商品等の配送や、将来的に公道を経由して(現時点では道路交通法によって歩道を含めて公道の走行はできない)、複数の建物間を自律走行、エリア内の無人物流に繋げたい考えだ。また、将来はエレベータとの連携を研究することで多層階への対応も視野に入れたい、と展望を語る。物流トラックが地下駐車時用にビルのテナント宛の荷物を配送。そこからは自動搬送ロボットに入れ替えて、自動的に配達するイメージを描く。
三菱地所は既にロボスタの記事でも報道してきたとおり、人手不足社会の到来も見据え、2018年4月から街のサービス及び運営業務を担う様々なロボットの実証実験を東京・丸の内エリアを中心に展開してきた。清掃ロボットについても積極的で、出荷がはじまったソフトバンクロボティクスの「Whiz」も既に先週より実践導入をはじめ、清掃ロボットの活用に併せて、どのようにビル清掃業務を変更していけば効率的かの検討を始めているという。
ABOUT THE AUTHOR /
神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。