2019年4月24日、NVIDIAが主催する「NVIDIA AOI Summit Tokyo」の第1回目が都内で行われました。
AOIとは聞きなれない言葉かもしれませんが、Automated Optical Inspectionの略で、「自動外観検査」や「自動光学検査装置」、それに関連する技術のことをさします。平たく言えば、AIを活用して製品の外観検査などを自動化する技術分野や装置のことです。最近、GPUとディープラーニングを活用して、この分野でもAIを導入する流れが急加速しています。そんな中、開催された第一回イベントに参加してきました。
開催にあたり、イベントの概要は次のように案内されていました。
ディープラーニングの技術革新を背景に、製造業の外観検査にディープラーニングを活用する事例がひろがっています。 従来は人が行っていた官能試験は、ディープラーニングを活用することで高精度に短時間で実現することが技術的に可能になっており、ディープラーニングによる外観検査は、少子高齢化による労働力不足問題を解決するうえでも製造業に大きな変化をもたらすテクノロジーとなっています。 エヌビディアが AOI (自動外観検査) の海外事例と、AOI をサポートする最新 GPU 技術をご紹介すると共に、業界をリードする各パートナー様から AOI のためのソフトウェア、ハードウェア、周辺機器のソリューションを御紹介していたきます。
イベントでは海外・国内での事例を中心にソリューションの紹介なども行われました。
最初にエヌビディアのインダストリー事業部長、齋藤氏から開催の挨拶があった後、同ビジネスデベロップメントマネージャーの大岡氏より「エヌビディア最新 GPU 技術および海外 AI 外観検査事例の御紹介」と題して、最新技術の紹介等がありました。
冒頭、今年アメリカのシリコンバレーで開催された「GTC 2019」の動画が紹介され、NVIDIAの最新ハードウェア製品群、クラウドからエッジまでのテクノロジーに触れ、続いて海外での外観検査の事例が紹介されました。
社会全体の課題はやっぱり労働人口の減少。この課題に対して、AI組み込み製品開発向けのAIコンピュータボード「NVIDIA Jetson」シリーズが、工場内での外装塗装の検査や基板検査などに既に利用されはじめているということでした。
ここからは、導入を促進している企業からのプレゼンテーションです。
パートナー各社のプレゼンテーション
フォクスター(Phoxter)
フォックスターは「ディープラーニングによる高精度な外観検査ソフトウェア『Preferred Networks Visual Inspection』」と題してPreferred Networks社の『Preferred Networks Visual Inspection』の製品紹介がありました。PFN Visual Inspectionは直感的な学習の操作性が売りで、「OK」「NG」の振り分けだけで学習ができるのが特徴。OK画像を約100枚、NG画像を約20枚くらい用意して、1分くらいで学習が完了できるそうです。実にシンプル。
リンクス
続いて株式会社リンクスより「MVTec社製画像処理ライブラリ HALCONディープラーニング機能のご紹介」と題して、様々な画像処理が可能なライブラリHALCONの紹介と展示デモが行われました。
HALCON機械学習での画像判定に必要な様々な画像処理関数群を備えた画像ライブラリで、外観検査や検品などの処理のほかにもカメラのキャリブレーションやアラインメントなど調整機能も含まれています。
また「Jetson AGX Xavier」でディープラーニング技術を使ったIC検知の例もデモで紹介されました。移動し続けるICをJetsonシリーズでリアルタイム検知します。24.64msで検出可能とのことでした。
キヤノン
キヤノンは「組み込みAI・GPUマシンビジョンシステム「AI Power Vision System」」と題して「AI Power Vision System」の概要説明とデモが紹介されました。
「AI Powered Vision System」はJetson TX2とグローバルシャッターを備えたカメラとで構成されるシステムでAI画像処理を高速に行うために調整されています。通常AIで高速度に画像処理をするためには精度の良い画像データが必要ですが、「AI Powered Vision System」はグローバルシャッター方式を採用して全画素を同時にサンプリングすることにより、高速撮影やドローンでの移動撮影でも歪みやブレの少ない画像が撮影できるようにしています。また会場では実際の動作デモも行われました。
シーシーエス
シーシーエスは「LIGHTING SOLUTIONとAIラボの紹介」と題して、AIを活用した検査に最適な照明とレンズの紹介、更にはAIラボの説明をしました。
検査用照明とひと口に言っても検査対象や検査の目的によってさまざまな種類があるそうで、照明の種類によって見え方が変わってくるということです。
ただ、肉眼で判断できないものはAIでも判断することは難しいため、判断の精度が照明の選択で変わることを500円硬貨の撮影などを例にわかりやすく解説しました。
また、東京のテスティングルームはNVIDIAのGPUを搭載したPCを準備し、「AIラボ」として画像検査ソリューションを試せる環境が整っているとのことです。
まとめ
第1回目の「NVIDIA AOI Summit Tokyo」が開催されましたが、会場は満席で立ち見の人がいるほどの盛況ぶりでした。工場などの検査用用途でAI活用への関心の高さが伺えました。実際の外観検査事例は工場のラインなど屋内での検品・検査事例が多く、「NVIDIA Jetson」シリーズをはじめとした組み込みAIデバイスを使用した精度の高いエッジ・ソリューションはこれから一気に導入が進むものと思われます。またソリューションの説明を聞くと、レンズ・カメラ性能・照明の選定が想像していた以上に重要で、導入に際しては検出精度の向上のカギになると感じました。
なお、6月に名古屋で「NVIDIA AOI Summit Nagoya」が開催されます。名古屋近郊の人、今回参加できなかった人はチェックしてみてください。
日程:
6/20(木) 12:30~
会場:JP Tower 名古屋 ホール&カンファレンス
登壇企業:
エヌビディア合同会社(主催)
connectome.design株式会社
株式会社GRID
クリスタルメソッド株式会社
株式会社YE DIGITAL
武蔵精密工業株式会社
株式会社マクニカ
ABOUT THE AUTHOR /
高橋一行Forex Robotics株式会社 代表取締役。AI、機械学習、ロボット、IoTなどのシステム開発を行いながら、コミュニティ活動やLTにも精力的に活動。 参加コミュニティ: 「ソフトバンクロボティクス公認コミュニティーリーダー」「 Creator's NIGHT eXtreme」 2020年のロボット業界を考える飲み会 共同主催 他