アイロボット、ルンバを月額使用できる「ロボスマ」を導入 ルンバ世帯普及率は5%を突破、ブラーバ新モデルも市場投入へ

アイロボットジャパン合同会社は、2019年6月8日から新規事業としてサブスクリプションサービス「Robot Smart Plan(ロボットスマートプラン)」を開始すると発表し、記者会見を開いた。


「ロボットスマートプラン」は月額

1,200円から36ヶ月間、掃除ロボット「ルンバ」を使用することができるサブスクリプションプラン。対象製品は「ルンバi7+」、「ルンバ980」、「ルンバ641」。月額料金は機種によって異なり、2019年3月に登場したクリーンベース付きの最上位機種「ルンバi7+」の月額料金は3,800円、980は2,800円。満期を完了したあとには、ユーザーに所有権が移る。

「ロボットスマートプラン」対象3機種

ルンバを含むカメラや家電などのシェアリングサービスにおいて実績を持つ、レンティオ株式会社との協業で実施する。サブスクリプションプラン導入は、世界のアイロボットでも初めての試み。

レンティオとの協業で実施する

合わせて、床拭きロボット「ブラーバ(https://www.irobot-jp.com/braava/)」の新シリーズとして、「ブラーバジェット250」と「ブラーバ390j」の発売も発表された。別売りだったクロスなどが追加で付属する。

ブラーバシリーズも「ブラーバ ジェット250」と「ブラーバ390j」へとアップデート

「ブラーバ」シリーズは専用クリーニングパッドを使って、水拭き、あるいはから拭きで床掃除ができるロボット。ジェットスプレーによる水の吹きつけとクリーニングヘッドの振動で汚れをこすり落とす「ブラーバジェット」の価格は 29,880円(税抜)。より広範囲の床を掃除するのに適した「ブラーバ390j」は39,880円(税抜)。発売日は6月7日。

今夏発売予定のブラーバ専用の床用洗剤

また、専用の床用洗剤も今夏に追加発売される。16-17回分となる床用洗剤ボトルの価格は880円(税抜)。従来どおり、床用洗剤なしでも使用できる。洗剤使用後の2度拭きの必要はない。洗剤を使うことで洗浄能力がどの程度向上するかは開示されなかったが、掃除後に爽やかな香りがほのかに広がる専用洗剤で、特に油ものの調理をしたあとの床掃除などにおすすめだという。




ついにルンバ世帯普及率は5%を超えた

アイロボットジャパン合同会社 代表執行役員社長 挽野元(ひきの・はじめ)氏

アイロボットジャパン合同会社 代表執行役員社長の挽野元氏は会見で、アイロボットグローバルでの実績を改めて示した。アイロボットは2018年度、史上初となる年間売上10億ドルを達成。売上金額は前年比+24%。ロボットの累計販売台数は2,500万台を超えた。

アイロボットグローバルの2018年度実績

2018年度は、日本でも過去最高の年間売上を達成している。売上金額前年比は+25%。2018年9月にはロボットの累計出荷台数は300万台を超えた。また、2019年の第一四半期でも+23%と、高い成長率を維持していると述べた。

アイロボットジャパンの2018年度実績

また、アイロボットはアジアのマーケットポテンシャルは大きいと見ており、韓国でのビジネス展開も2019年5月から再開した。

ルンバ売れ筋2トップ

ルンバの売れ筋2トップは、コスパを追求した「e5」と、フラッグシップである「i7+」。特に「e5」は日本で好評で、世界で一番「e5」が売れているのは日本市場だという。「e5」はロボット掃除機市場で7ヶ月連続トップとなっている。

ルンバe5の販売推移は数量ベースで七ヶ月連続1位

いっぽう、間取り学習、自動ゴミ捨てのついたフラッグシップ機の「i7+」も3月の発売以来、非常に好調で、金額ベースでのトップシェアを獲得している。クリーンベースのついた「i7+」に、掃除機本体の「i7」だけのモデルを加えると金額ベースで25%に達するという。なお、7:3でクリーンベース付きを選ぶ顧客が多いとのこと。

「i7+」は発売以来販売金額シェアNo.1

これら新製品投入により、アイロボットの掃除機メーカーシェアは、2018年1-3月期は65%だったのに対し、2019年は71%へと拡大した。また、ブラーバは花粉シーズンから夏にかけて非常に好調であり、挽野氏は「ブランドが成長していると実感している」と語った。

アイロボット社のシェアが拡大中

アイロボットでは世帯普及率を重視している。ルンバの世帯普及率は昨年10月では4.5%だったが、先月、5.1%を達成した。今後、世帯普及率10%を引き続き目指す。そのための戦略の一つが今回のサブスクリプションモデルの導入だ。なお世界でもっともルンバが普及しているのはアメリカで、世帯普及率11%強だという。

ルンバの世帯普及率は5.1%を超えた




サブスクでロボット掃除機の購入障壁を下げる

アイロボットジャパン マーケティング本部 本部長 山田毅氏

事業の詳細については、アイロボットジャパン マーケティング本部 本部長の山田毅氏が紹介した。山田氏は最初に「Empower people to do more(ロボット技術で人々の生活を豊かにする)」というアイロボットの事業理念を紹介した。そしてキャリアプランの多様化、女性が働きやすい環境の実現、家事の役割分担の変化が社会の課題となっていると社会背景を述べた。

アイロボットの調査によると、ロボット掃除機購入への障壁となっているのは、1)従来型の掃除機が好き、2)値段が高い、3)きれいに掃除できないのではないかというロボット掃除への懸念の3つが大きい。その解決法の一つとしてサブスクリプションビジネスへの参入を決めたと語った。

ロボット掃除機の購入障壁

サービス名称は「ロボットスマートプラン」。略称は「ロボスマ」。ロボット掃除機を使って豊かに、スマートに暮らしてもらいたいという願いを込めたという。特徴は低価格であること、家庭に合わなければ返品可能であること(1年以内の解約・返品は不可)、契約期間中であれば初期不良については無償修理を行うこと(ユーザー過失を除く)の3点。1年以内の解約が不可である理由は、事前に床上のケーブルやモノを片付けるなど、ロボット掃除機ならではの使い方に慣れてもらうことを意図しているため。「家庭における働き方改革」の一端をロボット掃除機で担いたいと考えているという。

ロボットスマートプランの3つの特徴




家電レンタルの実績を持つレンティオとの協業で実施

レンティオ株式会社 代表取締役社長 三輪謙二朗氏

今回協業するレンティオ株式会社(https://www.rentio.jp/)ではカメラ、家電レンタルなどを行なっており、1000種類以上、1万点以上の在庫を取り扱っている。これまでにもルンバの貸し出し自体は行なっていた。レンティオ代表取締役社長の三輪謙二朗氏は、従来の顧客の多くは「ルンバ購入前のお試し」が多かったと紹介。今回のプランでもそのまま3年間使いづける人が多いのではないかと期待を示した。

なお、レンティオでは、シャープの「ロボホン」などサービスロボットの貸し出しも行っている。




床拭き掃除ロボット「ブラーバ」2シリーズの特徴

アイロボットジャパン マーケティング本部 プロダクトマーケティング 藤田佳織氏

アイロボットジャパン マーケティング本部 プロダクトマーケティング担当の藤田佳織氏は、全国の子どもがいる20代~50代の既婚女性800名を対象に行なった「居住環境と水拭きに関する意識調査」というアンケート結果を紹介した。8割以上の家庭がフローリング中心の生活をしており、週に1回以上の掃除機掛けしている家庭は86.8%に達するが、水拭きは32.8%にとどまっており、何かをこぼしたついでのみが22.3%、全くしていないとの回答も7.5%だった。

日本の住宅の多くがフローリングになっている

いっぽう、夏場に自宅の床を歩いた際、ベタつきが気になったことがある家庭は76.4%にのぼった。つまり、拭き掃除をしなければならない床が多いにも関わらず、雑巾掛けは多くの人に嫌われている家事だという。

いっぽう雑巾掛けは嫌いな家事ナンバーワン

そこでブラーバの出番であり、特に花粉症シーズン、梅雨から夏の床がべたつく季節に好評だと紹介した。吸引機構がないため稼働音が静かであることや、コンパクトサイズであることも高評価で、顧客満足度は2017年のアイロボット調べで93%となっている。

静音性やコンパクトさも支持されている

ラグやカーペットには乗り上げない

「ブラーバ ジェット」シリーズは前方に水を吹き出すジェットスプレーと細かく振動するクリーニングヘッドで床ふきを行う。小型であることからプレゼントとして選ばれることも多いという。クリーニングパッドは3種類あり、種類を自動認識して清掃モードを自動選択して掃除を実行する。

ブラーバジェットシリーズの特徴

より大型の「ブラーバ300」シリーズは、ナビゲーションキューブを用いて定位する、より大きめの部屋向けの商品で、ドライとウェット、二つの清掃モードを持っている。こちらは市販の掃除シートを使うこともできる点が市場からは評価されている。

ブラーバ300シリーズの特徴

今回新発売となるラインナップから、従来別売りされていた、洗って繰り返し使えるクリーニングパッドやクロスを追加する。より経済的になった。

クリーニングパッド、クロスが追加

また、床用洗剤も今夏に別途発売される。弱アルカリの界面活性剤を使用した専用洗剤で、製品にも使い切りパックがそれぞれ二つ同梱される。

専用の床用洗剤も発売

ブラーバのラインナップ

ブラーバで床を拭かせるとサラサラになるという。藤田氏は「ブラーバですっきりした素足になれる心地よさを体験してもらいたい」と語った。

ブラーバはキッチンの床掃除に用いている家庭が多いとのこと

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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