【写真レポート】東京湾「猿島」ビーチで注文した缶ビールが海を渡って楽天ドローンで届く
楽天ドローンを使った有料の配送サービスが今夏いよいよ始まる。離島のビーチからスマホで商品を注文すると、配送料金500円でドローンが海を渡って運んできてくれるサービスだ。7月4日からの約3ヶ月間、夏だけの期間限定とはいえ、これは日本のドローン配送にとって大きな前進だと言えるだろう。
ロボスタ編集部は「離島へのドローン配送発表式典」に参加し、ドローンによる猿島への配送サービスの全容を取材し、動画と写真で解説したい。
離島へのドローン配送発表式典に行ってきた
楽天と西友、横須賀市は共同で「離島へのドローン配送発表式典」を開催した。横須賀市の海上に見える「猿島」にいるユーザーからの注文を西友が直接受けて、楽天ドローンで配送するサービスだ。当日は風が強いにもかかわらず、デモ飛行を披露。ドローンは無事に海を渡って猿島のビーチに降り立った。
猿島のビーチからユーザーがアプリで直接、西友に注文
神奈川県横須賀市にある無人島「猿島」は、年間20万人が来島する人気の観光地で、特に夏場のビーチではバーベキューや海水浴、釣りなどが楽しめて大人気だ。また、明治時代から陸軍省と海軍省所管の東京湾要塞として知られ、現在でも古いレンガ造りの要塞跡を目当てに観光客がやってくる。昭和世代には「仮面ライダー」旧1号がサイクロン号で駆け抜ける映像が記憶に残っている人も多いだろう。
楽天では大型と小型の2種類のドローンを持っているが、今回は大型のドローンを使用して猿島への配送サービスを行う。
注文から配送完了までの流れ
この配送サービスの流れはこうだ。
まず、ユーザーは「楽天ドローン」アプリ(スマートフォン用)をインストールして登録すると、猿島のビーチ等から対岸の「西友 リヴィンよこすか店」に飲み物や食材、日用品や救急用品を注文することができるようになる。注文時に配送時間の指定も可能だ。支払いは「楽天ペイ」(オンライン決済)で行う。
デモでは、缶ビール6缶パック、アンガスビーフ(牛肉)、絆創膏を注文した。
西友 リヴィンよこすか店にて
注文を受けたスタッフが商品を用意して、屋上で待機するドローンに積み込む。積載商品は最大5kgまで(注文の際にユーザー自身が重量を確認できる)。
商品を積み込んだらいよいよドローンが屋上から飛び立って出発。いったん港の上空に向かって飛行し、進路を猿島に補正して直行する。配送中、ユーザーはアプリでドローンの現在位置を確認することができる。
猿島にて
ドローンは海を渡って猿島に向かう。その距離は片道約1.5km。高度は約40m、時速36km/hで飛行する。約5分の飛行時間だ。
猿島のビーチにはドローン着陸用のドローンポートが用意されている。やってきたドローンは自動的にポートに着陸する。
ドローンがドローンポートに自動的に着陸した後、自動で荷物を切り離してすぐに再び離陸。海を渡って西友に帰投する。
ドローンが離陸すると残された荷物を猿島のスタッフが回収し、中身を確認の上、注文したユーザーに引き渡して納品が完了、という手順になる。
■楽天ドローンが自律飛行でビーチに商品を届ける
ドローンによる配送は、期間中の木・金・土曜日のみ。一日最大8便。配送料はユーザー負担で、商品代金のほかに別途500円がかかる。
位置情報で飛行・着陸
運営は西友側に2人、猿島側に2人のスタッフで行われる。風速10m以内の状況なら飛行でき、雨天は配送中止となる。
技術的に興味深いのは、このドローンにはカメラを搭載していないこと。ビジョンではなく、位置情報で飛行と着陸を行う。位置情報にはGPSやGNSS(Global Navigation Satellite System)を使用。更にRTKを使用するため、精度は数10cm内の誤差で着陸できる。(GNSSやRTK技術については関連記事を参照「位置情報の誤差1.4センチ!ソフトバンクがRTK-GNSS技術で高精度測位サービスを11月に開始 ヤンマー、鹿島、SBドライブと連携」)
今後のドローン配送に着実なステップ
ユーザーが利用しやすい料金に設定した。しかし、週に三日、一日8便という運送では、運営サイドから見れば到底、利益が見込めるものではない。だが、現状ではさまざまな法的な制限もある我が国のドローン配送の事情に対して、採算を無視してでも有料配送サービスを実現するのは今後のビジネスに繋がるだろう着実な一歩となるに違いない。評価すべき導入だといえるだろう。
なお、横須賀市、楽天、西友は、猿島へのドローン配送を実現した後、今後は災害時やインフラなど、ドローンを幅広く活用していくことに意欲を示した。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。