「SoftBank World 2019」が本日、東京芝公園のザ・プリンス パークタワー東京で開幕した。多数の講演と展示会場が用意され、明日までの二日間で開催される。展示会場には全86ブースが出展している。
同イベントは今年で8回目を迎える。「テクノロジーコラボレーションで、世界を変えていこう。」をテーマに、ソフトバンクが注力する「IoT」「AI(人工知能)」「ロボット」「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」「クラウド」などが中心のイベントとなる。
初日の基調講演には孫正義氏が登壇し、「日本はいつの間にかAI後進国になってしまった。インターネット黎明期と同様、まだ遅くはないが、AIに対して早く目を覚ました方がいい」と強くメッセージを発した。これは孫氏流の警鐘であり、AIをビジネスに活用できていない日本企業や、孫氏が投資に値すると考えるベンチャー企業が少ない日本の現状へのエールだ。
概要としては、講演全体を通して新しいものに触れた内容はほぼ見当たらず、新鮮味に欠けた内容ではあった。予定より早い時間に終了して切り上げた点も異例だった。
しかし、ソフトバンクが進めているビジョンファンドに関わる内容を中心に、AIが実践社会で成果を出し始めていること、これからリーダーとなっていくベンチャー企業の活動にスポットを当てる内容となっていた。
ソフトバンクは現在「群戦略」を展開している。具体的には、様々な分野で活躍し、急成長しているNo.1、もしくはNo.1に匹敵する企業に対して投資を行い、その投資先のシナジー(群)で効果を最大限に出そうという戦略だ。
人類の進化は「推論AI」によって加速する
それに先がけて、孫氏は人類の進化についてついて語った。人類の進化を支えてきたものは「推論」であり、「今後も人類の進化は「AIの推論」によって更に加速する」とした。人とモノが通信する時代から、モノとモノが通信する時代を迎え、取り扱うデータ量は更に増大。それらの膨大なデータを活用するAIにシフトすることで人類が加速するという考えだ。
例として、TV等のCMを上げた。「私が深夜にひとりでテレビを観ているとき、ヘアードライヤーのCMを見せられても何も効果はない。女子高生にメルセデスの高級車モデルのCMを見せても同じく効果はない。AIがそれを理解し、効果があるCMを推論して提供する、そういう使い方、未来になる」と語った。そして「AIが最も優れている点、得意なことは「Prediction」(予測/推論)であり、それを活用することで人類をもっと幸せにすることができる」と力説した。これはAI否定論を牽制する意味を込めたもので、AIになんでもやらせようという考えには無理があり(失敗につながる)、AIは予測や推論の分野で活用するべき、というメッセージであるとともに、AIが人類を滅ぼす、AIが人間を不幸にする、という考えに対する反論となっている。
ビジョンファンド、群戦略を推進
講演の後半は、ビジョンファンドの投資を受けている企業の中から、OYO、Grab、Paytm、Plentyの4社のキーマンが登壇した。孫氏は「ビジョンファンドがAI革命を牽引する」としている。
OYO
「OYO」(オヨ)はホテルチェーンで、ヒルトン・ホテルズを抜いて世界第2位に上りつめた企業だ(1位はマリオット)。AIと行動力を駆使して躍進しているが、そのCEOはわずか25歳。欧州、米国、アジア諸国等、80ヶ国で110万の客室を保有、2023年までに客室数が東南アジアだけでも200万室を超える計画を掲げる。
Grab
「Grab」(グラブ)は解りやすく分類するとタクシーやライドシェアの「配車アプリ」サービスを展開する企業だ。競合はUber等。現在では、タクシーだけでなくバス等も含めて、ユーザーに最適なルートと移動手段を提案したり、フードデリバリーサービスなども提供。総合的にユーザーエクスペリエンスを提供するサービスに拡大している。
Paytm
「Paytm」(ペイティーエム)は電子決済及び電子商取引サービスを展開するインドの企業で、日本の「PayPay」は、Paytmから技術的な連携、支援を受けた。
Plenty
「Plenty」(プレンティ)は少ないスペースの温室環境によって、野菜や果物を栽培する「インドア農業」を展開する農業ベンチャー企業だ。世界人口の増加と資源の枯渇が懸念されている将来に向けて有望な分野だが、現時点でベンチャー企業が有効なビジネスモデルを見いだすのが難しい分野とも言われている。その中にあって同社は「味」にこだわった。IoTセンサーによる膨大なデータをAIによって分析し、味や収穫をコントロールする技術を開発している。