ソフトバンクは「SoftBank World 2019」の展示ブースで、ロボットの遠隔操作に重要な「力触覚」のデモを展示し、多くの来場者がリアルハプティクス技術を体験した。
遠隔操作ロボットは内視鏡手術を支援する「ダビンチ」や、重度の障害者が喫茶店で接客できる「OriHime-D」などが知られている。「ダビンチ」は医師が3D画面を見ながら特殊な鉗子を操作して患者のお腹の中で患部の切除や縫合などの作業を行う。現在の遠隔操作ロボットは視覚に頼る部分が大きいが、人間が作業する際は力触覚(手触りや柔らかさ、弾力性)も重要な要素だが、実用化はまだ難しい(ゲームではフォースフィードバックという技術で反発力や応力をリアルにプレイヤーに伝えている)。
また、農業の収穫ロボットにも力触覚は重要だ。果実を潰さないよう力加減を調節する必要がある。遠隔ロボットでは力触覚とその伝達は重要な技術となる。
力触覚にはリアルタイム性が重要だ。触った時の感覚が即反映されないと違和感を感じてしまうし、正確な作業の支障になる。新世代の通信技術「5G」では、レスポンス性が大幅に向上するため、遠隔操作における力触覚技術が進むと期待されている。
この技術をソフトバンクは慶應義塾大学ハプティクス研究センターと共同で研究開発、今回のデモを実現させた。(以前、Pepperを使ったデモも公開された経緯がある)
スポンジの「硬さ/柔らかさ」を遠隔地で感じるデモ
デモの内容は2つ。ひとつはスポンジの「硬さ/柔らかさ」を遠隔地で感じるデモ。2つ並べられた機器は連動して動くが、一方にある機器に挟んだスポンジを押した感覚がもう一方の操作機器で感じられる。スポンジを硬いものに変更すると、操作側の機器に硬さの違いがわかる、というもの。
ロボットアームを遠隔で操作するデモ
もうひとつは遠隔地にあるロボットアームをカメラのビジョンとレバーを使って操作するもの。右が操作するレバーになっていて、左のロボットアームが連動してモノをつかんで所定の場所まで持って運んではなす、という体験だ。ここでも力触覚が用いられ、ビジョンと力触覚でロボットアームの操作体験ができるものになっていた。
面白いことにこの技術はビジョン技術が中心になっている。すなわち、超短時間でモノの動きや移動といった変位を捉えて、硬さや柔らかさを触覚として伝達している。
なお、会場では5Gの電波が使えないので、デモでは有線が使われていたが、同社によれば5Gの実験では有線と同様のレスポンスが実現できたという。