国立大学法人東京大学と日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)は、先端デジタル技術と人文社会科学の融合をテーマとした革新的な社会モデルを、日本企業と共にデザインする新たな研究プログラム「コグニティブ・デザイン・エクセレンス(CDE:Cognitive Designing Excellence)」を設立したことを8月21日に発表した。同研究プログラムをリードするのは東京大学 大学院情報学環 須藤修教授。2019年7月から2022年3月まで実施される。
金融、政治、環境といったさまざまな要素が複雑に絡み合う社会において、急速に進展するデジタル技術がもたらす価値を生かすためには、先端デジタル技術と人文社会科学を融合させた革新的な社会モデルの創出をデザインすることが重要、という考えに基づくもの。グローバル化における日本、とりわけ日本企業、日本社会のあり方という命題に取り組むことは、産業界、学術界において喫緊の課題となっており、双方が連携した優れたアイデアが求められているという。
(※冒頭の画像はイメージ)
「コグニティブ・デザイン・エクセレンス」とは
今回新設した「コグニティブ・デザイン・エクセレンス(CDE)」は、日本企業の経営幹部が参加して新しい社会モデルをデザインするもので、人文社会科学やデジタル・デザインの専門家による課題提起を受けたうえで、参画企業によるディスカッションを行い、新たな視点や洞察力を得ながら社会や企業の未来に向けた社会モデルを提起する。現在検討しているテーマは、農業、エネルギー、格差、災害、教養、交通インフラ、ポストイベント、多様性など。
同プログラムをリードする須藤修教授が議長を務める「人間中心のAI社会原則検討会議」(内閣府)が人間中心(Human-centric)を訴えるように、革新的な社会モデルは芸術、文学、歴史、文化、哲学、経済学、法律学、政治学、社会学などの人文社会科学的なアプローチが有用だ。CDEは、これらの人文社会科学領域とSTEMを融合させた学際的な見地から、生活者に新たな価値をもたらす革新的な社会モデルをデザイン・構築し、またその基本的な技能を学生に教育する。
東京大学
国際連合が採択したSDGsの達成と経済成長の両立に向けて、知識集約型への社会変革の起点となるよう進めている。そのためには、Society5.0という新たな社会の実現が不可欠であり、さらに、経済成長のエンジンとなるデジタル・データについても、信頼ある自由なデータ流通を目指したDFFT(Data Free Flow with Trust)のグローバルな展開を推進するとしている。
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日本IBM
1911年の創業時から現在に至るまで世界をより良い場所とするためのリーダーとしての活動を絶えることなく続けており、「社会のために、お客様のために、そして人々のために、これまで以上になくてはならない存在に」なるため、日本IBMとしてCDEの取り組みを推進するとしている。
CDEへの参画企業
株式会社IHI、味の素株式会社、アルパイン株式会社、会社NTTドコモ、オリンパス株式会社、鹿島建設株式会社、キリンホールディングス株式会社、第一生命保険株式会社、帝人株式会社、株式会社デンソー、東京電力ホールディングス株式会社、日産自動車株式会社、日揮株式会社、パナソニック株式会社、マツダ株式会社、株式会社三井住友銀行、株式会社明治安田総合研究所、ヤマトホールディングス株式会社
今後の展開
両社は、東京大学が持つ人文社会科学系や先端科学系の卓越した知見と、IBMが持つAI、ブロックチェーン、IoT、量子コンピューターなどの先端デジタル技術を融合し、日本企業の強みを生かしながら持続的成長を実現する社会モデルの創出を、産学連携で推進していくと述べている。
具体的な展開内容
今後は、革新的な社会モデルのデザイン・構築の教育機能として、AI研究やデータサイエンティスト育成をはじめ、先端デジタル技術の革新的な社会応用を学ぶ機会の提供を検討していく。また、社会・産業プラットフォームを創出することを目的に、アイデア出しを支援し、ワークショップを開催し、最先端テクノロジーの情報を提供する予定だ。さらに、人材交流、人材育成を目的とした学生、スタートアップ企業、インターンの共有の場として、東京大学本郷地区に新しく産学協創スペースを設けて研究・討議を行うとしている。