NTTドコモと東海旅客鉄道は、東海道新幹線車内における、更なる快適なモバイル通信環境を実現するための検討の一環として、「5G」による無線通信実験を実施したことを発表した。実証実験は2019年8月24日〜9月7日の期間、静岡県 富士市内の三島駅~新富士駅間で行われた。
200km/h以上で走行する高速鉄道車内と、地上との間の5G無線通信実験の成功は世界で初めてであり、将来の高速鉄道車内における5G通信サービスの本格利用に向けた重要なデータを得ることができたという。(冒頭の写真:実験用5G移動端末を搭載したN700S確認試験車の走行模様)
技術的に検証すべき事項が多くあった
高速で走行する鉄道車内との5G無線通信を実現するためには、実際の走行環境における基地局の配置と移動端末への追従性、利用者の実利用シーンにおける周囲の遮へい物の影響など、技術的に検証すべき事項が多くあった。
これら技術的検証のため、東海道新幹線沿線に仮設した実験用5G基地局と、N700S確認試験車内に搭載した実験用5G移動端末との間の5G無線通信実験を行い、高速走行中の実験に成功。
■5G無線データ伝送実験
・地上基地局、移動端末の双方が持つ機能(ビームフォーミング機能、ビーム追従機能)を駆使した超高速データ伝送
最大データ伝送速度 1.0Gbps以上 ・・・・・・【成功】
・移動端末が接続する地上基地局(3箇所)を順次切り替える連続ハンドオーバー
地上基地局間の連続ハンドオーバー ・・・・・・・・・【成功】
■5G無線映像伝送実験
・ 超高精細の8K映像コンテンツを、地上基地局から移動端末へ5Gを介して高速ダウ
ンロード配信
8K映像コンテンツの高速ダウンロード配信 ・・・・・【成功】
・N700S確認試験車内に設置した4Kカメラにより撮影中の車窓映像を、移動端末
から地上基地局へ5Gを介してライブ中継
4K車窓映像のライブ中継 ・・・・・・・・・・・・・【成功】
GTRで模擬実験を行ってきた
ドコモはこれまでに、約200〜300km/hでテストコースを走行する自動車を用いた5G通信実験を段階的に行ってきた。
これらの実験は高速鉄道を模擬した環境における基本実験で、ビームフォーミング・ビーム追従の各機能を用いて、5G基地局からの28GHz帯の電波の放射方向を自動車に搭載した5G移動端末に向けて維持しながら、高速走行する自動車と基地局の間で5G通信が可能であることを実証した。
しかし、電波を遮へいする物がない自動車のテストコースとは異なり、実際の高速鉄道の走行環境は、沿線の電柱などによって頻繁に電波が遮へいされる可能性があり、さらに自動車のフロントガラスや在来線車両の窓に比べ小さい新幹線車両の窓に電波を通過させるなど、直進性が高く遮へい物などで弱まりやすい28GHz帯の電波の使用においては通信速度の低下や不安定につながりやすい環境といえる。
今回の実験では、そのような通信環境で応用実験を行うべく、静岡県富士市の東海道新幹線沿線に28GHz帯の実験用5G基地局3局を400~500mの間隔で仮設置した5G通信実験エリアを構築するとともに、東海道新幹線の上り方向または下り方向を試験走行するN700S確認試験車内の座席に28GHz帯の実験用5G移動端末を搭載。
なお、実験用5G基地局および実験用5G移動端末は、5Gプレサービス用の装置とは異なり、将来の5Gのさらなる拡張に向けた実験にも対応可能な装置として開発されたもので、実験試験局の無線局免許を取得して使用している。
また、実験用5G基地局および実験用5G移動端末は日本電気、8Kコンテンツサーバおよび8Kデコーダはシャープよりそれぞれ提供を受けるとともに、実験の実施にあたって各社の協力を得ている。
JR東海