快適な睡眠はとても大事、それはアスリートにとっても同じこと。
寝具メーカーの株式会社エアウィーヴは東京2020で選手の宿舎に提供されるマットレスを体型別に個別仕様化し、快適な睡眠をサポートすることを発表した。体型に合わせて「個別仕様化」可能なマットレスが大切と考えるからだ。また、エアウィーヴ社は次世代の身体採寸テクノロジー「Bodygram」(ボディグラム)を採用することも発表している。快適な睡眠のために、マットレスを選択するための自動採寸AIテクノロジーは、アパレル業界でも注目されている技術だ。
全てのアスリートの体型に合わせてマットレスを「個別仕様化」
株式会社エアウィーヴは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会、選手村の寝具供給契約を締結し、寝具を供給することを2019年9月24日に発表した。
次世代の身体採寸テクノロジー「Bodygram」を開発したのはBodygram Inc.だ。アプリを使って、スマートフォンのカメラで服を着たままの写真を正面と側面から撮影するだけで、16箇所の身体のサイズを自動的に解析する技術だ。 独自のAIシステムを駆使して全身の推定採寸を行うという。採寸した身体サイズのデータから、睡眠中も理想的な寝姿勢が保たれるよう、マットレスをカスタマイズする。具体的には、頭部から足部まで3つのマットレス領域に分割し、各部の硬さのパターンを選択することで「個別仕様化」を実現するという。
エアウィーヴによれば、過去の選手村では選手の体型に関わらず全室同一のマットレスが提供されてきた。選手は競技によって、体重、体型、筋肉のつき方が大きく異なるため、下記の図の様に体型の全く異なる二人の選手が、同じマットレスで満足な睡眠をとることが困難だとする。
上図でいうと、左の女性アスリートは背骨が真っすぐで理想的な寝姿勢が保たれている一方で、右の男性アスリートは腰回りの筋肉が多く重いため、腰の部分が沈み込んでしまい、寝返りがしづらく、良質な睡眠を取れない可能性がある腰の部分のみ裏表を入れ替え硬めにすることで背骨が真っすぐになり、理想的な寝姿勢を保ち、睡眠中の身体への負担を軽減することができる、としている。
この課題を解決するため、1枚のマットレスの中で硬さパターンを選択できる、裏表硬さの異なる三分割構造の「個別仕様化」可能なマットレスを開発した。
身体採寸AIテクノロジー「Bodygram」とは
このように、個人の身体のサイズや体型に合わせたマット選びが重要になってくるが、このためには個人が自身の各部サイズを知ることも重要だ。それを測定するツールが身体採寸テクノロジー「Bodygram」となる。
将来は、消費者がマットレスを自身の身体に合わせてカスタマイズしたり、組み合わせる時代が来るかもしれない。
また、今回の発表に合わせて「Bodygram」は、従来のiOS のアプリに加え、ウェブアプリへの対応も行った。これによりiPhoneやiPadだけでなく、Android搭載端末でも、カメラで撮った画像をウェブページに送信することで自身の身体の採寸機能が利用可能となった。
ユニクロアプリの新サービス「MySize CAMERA」も採用
この「Bodygram」技術、実は既にユニクロが採用して実用化されている。ユニクロが提供しているアプリの新サービス「MySize CAMERA」に採用されていて、アプリ画面に、 ユーザー の身長 、 体重、性別、年齢を入力し、画面の指示に従って、正面と左側面の2方向から撮影した写真(服は着たままOK)をアップロードするだけで身体の10ヶ所の寸法を推定して表示できる。表示された数値は、自分の体のサイズ寸法を記録しておける「マイサイズ」機能に登録でき、別の商品を購入する際も簡単に参照することができる。
ネット通販では試着ができないことが消費者にとって課題となっていて、自分の知る範囲のサイズ(S/M/L/XLなど)はブランドによって大きく異なり(日本のメーカーと米国のメーカーなど)、さらにはウエスト何cm、 肩幅やウエストなどの各部位をどのように計測するか等、まちまちで実際の着用感とズレが生じる経験がある消費者も多かった。「bodygram」はブランドごとに異なる計測方法に対応し、ネット通販でもユーザーが安心して購入するための技術のひとつとして、AIを活用したこの機能を開発した。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。