H.I.Sハピロボが瞬間移動ロボット「temi」を発売へ!遠隔対話、追従、自動マッピング、自律移動、Alexa連携、店舗案内など可能性は無限大

株式会社hapi-robo st(ハピロボ)がパーソナルロボット「temi」を11月1日から発売することを発表した。高さ(身長)は100cm。1回の充電で約8時間稼働する。充電ステーションには自律的にドッキングして無線給電(Qi)を行う。
基本はスタンドアローンで動作するため月額利用料などの設定は発表されなかった。(追記:記事初出し時は本体価格を掲載していましたが、企業からの希望により本体価格の数字を削除しました)
なお、ハピロボはロボット及び先端技術の開発及び販売、投資、コンサルティングを展開する企業。H.I.Sグループ、ハウステンボス株式会社の子会社。

パーソナルロボット「temi」。発表会にて。充電器に収まっているところ

報道向け発表会が行われ、パルコ、NTTファシリティーズ、大塚商会、大和ハウス工業など、多くのパートナーが名前を連ね、登壇してそれぞれの思いを語った。なお、temiはBtoC、BtoB、BtoBroCに展開していく。

登壇した企業(順不同)。NTTファシリティーズ、大塚商会、コトバデザイン、大和ハウス工業、蔦屋家電エンタープライズ、テクムズ、パルコ、ミライト・エックス、モノプラス、temi USA inc.、hapi-robo st、H.I.Sグループ




自動追従、遠隔操作、自律移動のマルチブリッド

temiは米国temi USA inc.(ニューヨーク州)が開発したロボットで世界中で続々と販売が始まっている。日本国内ではハピロボが総代理店として契約した。
世界のどこからでも「自らがあたかもそこにいるように」コミュニケーションできるAIアシスタンス機能を持った自律走行するパーソナルロボットだ。特筆すべき特徴はも基本的にはスタンドアローンで動作し、クラウドが必須ではないこと。人の後ろをついて歩いて自律的にマッピングし、指示したポイントに自律で移動したり、障害物をよけながら人を案内することもできる(現時点では作成・記録できるマップはひとつのみ)。

身長は100cm。富田氏いわく「お婆ちゃんが杖として使うこともできる」

人に追従して移動できる。追従しながら周囲を自動マッピングする。移動はマップ上の登録地点をタップするだけ


Alexaとの連携

クラウドと連携したシステムはパートナーから提供される見込み。独自の音声認識、音声合成エンジンを持っているが、AIアシスタントとしてAmazon Alexaと連携もできる。Alexaのほぼすべての機能が使え、Alexa対応の家電機器等を音声で操作することができるとしている。また、スマートホームやIoT関連との連携はIFTTTにも対応しているため、Alexa対応デバイス以外も対応の範囲内となる。

■ temi with Alexa in Retail Stores

SDKの提供について具体的な案内はなかったが、将来的に準備していく予定だ(ホームページでは”提供している”となっている)。





富田氏「世界で一番すぐれたパーソナルロボット」

発表会の冒頭、ハビロボの富田氏が登壇し、相変わらずの富田節がさく裂した。マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの創立者であるニコラス・ネグロポンテ所長の言葉「ATOMS to BITS」を引用した。

株式会社 hapi-robo st 代表取締役社長 富田 直美氏

富田氏は今や私たちはスマホやスピーカー、パソコン、スマートスピーカーなどたくさんの電子デバイスを使っているが、それらすべてが自分一緒に移動することはできないが、世界で一番すぐれたこのロボット「temi」ならそれが実現する。しかも何より、今まで実現できなかったことはそのロボットを「誰もが使えるのか」ということ。移動するのに操縦する必要はない。行きたいところをマップでタップするだけ。お婆ちゃんでも子どもでも使えるロボットが実現した、と熱く語った。

そして、temiによって「瞬間移動が実現する」と表現した。そして「私がそこにいたら何ができるか」が大切。ムービーではtemiによって母親の存在を子ども達が感じとり、ペットのイヌまでが感じている、と存在感を強調した。

■ temi – Be Anywhere.




今年度末までに15,000システムが全世界で稼働へ

続いて、temi USA inc.のCEO、Gal Goren氏が登壇した。
「複雑な仕事を繰り返しこなす産業用ロボットと異なり、パーソナルロボットはいつもユーザーが次に何したいのか、何を望んでいるのかを知り、サプライズを提供するもの」と語った。

temi USA inc.のCEO、Gal Goren氏

しかし、従来のパーソナルロボットには課題があったが、temiはそれを解消できるロボットだと語り、お婆さんでも子どもでも誰でも使える直感的な操作の実現、誰でも購入範囲の価格帯の実現をあげた。

「temiは世界中の多くの国や地域で稼働が始まっている。ただ、まだ始まったばかりで米国では6月、昨日に韓国ソウルでチームを立ち上げることを決め、中国では3週間前に販売を開始した。まだまだスタート時点ではあるが、今後は各国でパートナーシップを作り、今年度末まで15,000システムが全世界で稼働することを予定していて、見込みはある」と続けた。

サラウンドシステムを装備し、広いスペースでも臨場感あるサウンドを提供

「日本市場に向けては来月からハビロボが正式販売を始めるが、日本はtemiのプロジェクトを引っ張っていく市場になると考えている。その理由は日本のユーザーは新しいテクノロジーの採用率が高いこと、商品の精度を求める文化を持っているのでサービスの改善が加速することが期待できるとした。今後の展望としては、日本に開発センターを設置し、日本の技術を駆使してtemi向けのアプリケーションを提供していきたい」とした。

temiのトレイにスマートフォンを乗せたところ。temiが無線給電Qiの充電ステーションになる

■発表会でのtemiの様子(雑多)




渋谷パルコで店舗に導入

パルコはこれまでも、店舗においてさまざまなロボットの実証実験を行ってきた。同社執行役の林氏は「ロボットが商業施設で活躍していく時期がすでにきている。その一方で導入する際にどこにどんな課題があるのかもわかってきた。安全な走行をロボットが自律的におこなうためには、一般的にルートの設定や安全に走行するためのエンジニアリングが必要。しかし、パルコは自身でエンジニアチームを持っていないのが大きな問題となっていた。それをこのtemiは簡単に操作できる、ということで解決してくれる」とした。

株式会社パルコ 執行役 林 直孝氏

また「お客様からのすべての問合わせを人間と同様にロボットが応対することは残念ながらまだ技術的にできない。しかし、temiは遠隔でオペレータや詳しい人間が対応することができる」と新たな可能性を示唆した。そのうえで「新生渋谷パルコが11/21にオープンする。渋谷パルコ内にはクラウドファンディングのキャンプファイアと共同で店舗「ブースタースタジオ」(BOOSTER STUDIO by CAMPFIRE)を開設する予定だが、そこでtemiを導入することを決定した。temiを顧客が体験できるだけでなく、temiが販売も担当、また、各クラウドファンディングの会社の担当者がtemiを使って新製品の説明をしたり、接客することも考えている」と語った。どうやらその先は、渋谷パルコの通じようフロアにもTemiの導入の拡大を検討していきたいようだ。




上半身がAndroid、下半身がLinuxの2システムCPU構造

開発パートナーとして、コトバデザインの栄藤氏が登壇した。同社は対話型インタフェースや、AI音声アシスタントのエンジン、プラットフォーム等をオープンソースを含めて開発しているという。「temiは上半身がAndroid、下半身がLinuxでCPUが動作していて、とてもよくできていると感じている」と語った。


そのうえで、temiを店舗で使用した場合のデモムービーを紹介した。それはロボットによる省力化、自動化のヒントとなる具体的なものだった。(実際の撮影はまだ1台しかないということで苦労した様子)

株式会社コトバデザイン 執行役員社長&CEO 栄籐稔氏




4種類の連携パートナーたちと共創

temiのプロジェクトを進めるのは「インテグレーション」「イノベーション」「開発」「サービス・サポート」の4つのパートナーたちだ。
大塚商会は「既に350社とtemiの商談をすすめていて、販売は予想より早く軌道に乗るだろう」と語った。更に「レンタルサービスの開始に向けての準備やtemiを業務に組み込むためにアプリ開発会社との連携を進めている」と続けた。
また、大和ハウス工業は「コミュニケーションをキーワードに孤独な状態にしない街をtemiで実現し、今後の住宅のあり方を提案していきたい」とした。



H.I.Sグループ澤田社長「temiは社内的にも活用していきたい」

発表会の最後にH.I.Sグループの代表として澤田社長が登壇した。澤田氏は「変なホテルにたくさんのロボットを導入してきて海外でも話題になってきたが、temiは本物の実用的なロボットだと確信している。H.I.Sグループは”これからはAIとロボットだ”ということで積極的に取り組んできたし、ロボット事業をこれからもどんどん進めていきたい。temiは社内的にも活用していきたい」と語った。

H.I.Sグループ 代表取締役会長兼社長 CEO 澤田秀雄氏

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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