「製造業のコストはAIで劇的に削減できる」ABEJAが導入事例とAIモデル作成を披露「NVIDIA ディープラーニングセミナー 次世代の製造現場へ提案」で

NVIDIAは「次世代の製造現場へ提案 NVIDIA ディープラーニングセミナー」を都内で開催した。タイトルのとおり今回のテーマは「製造現場」と「ディープラーニング」。NVIDIA とパートナーが提供する製造業向けのディープラーニング・ソリューションを紹介し、活用し始めている製造業の導入事例を当事者から直接聞くことができるセミナーとなっている。来場者はほぼ製造業に関わる人、多くはディープラーニングの導入は未だこれからで、検討中という人がほとんど。

講演の冒頭ではエヌビディア 日本代表兼米国本社副社長 大崎真孝氏が登壇し、来場者に挨拶を行なった。ディープラーニングがこれほど進展している理由を3つの理由として、ビッグデータの存在、ディープニューラルネットワークの登場、3つ目がNVIDIAが提供しているGPUの存在を掲げた。

エヌビディア 日本代表兼米国本社副社長 大崎真孝氏


基調講演にABEJA岡田氏

基調講演には、株式会社 ABEJA CEO 岡田氏が登壇し、「ABEJA Platform が提供する製造業のビジネスモデル変革とオペレーション変革」というタイトルで講演した。ABEJAの導入事例を聞くケースはこれまで多くはなかったが、今回、いくつかのユースケースを知るよい機会になった。

日本ディープラーニング理事/株式会社 ABEJA 代表取締役 CEO 岡田 陽介氏

岡田氏は冒頭、ABEJAのビジネスの変遷を紹介、製造業ではダイキン工業と連携したのがはじまりで、今ではNVIDIAやGoogleから出資を受けている。また、今回は「製造業の方向けにビジネスモデルの変革、オペレーションの変革」について話したい、とした。

ABEJAは現在200社以上の企業に導入、1万以上のコンテナが稼働、70テラバイト/日の情報を処理しているという。AIに対するは幻滅期に突入しているが、AIへの期待値が大きい人が幻滅している状況であり、我々は現場へのAIの実践を粛々と進めていく、とする。


岡田氏は日本はAIの変革期に乗り遅れそうになっていて、なぜ多くの企業が積極的にに勉強しないのか謎だ、と発破をかけた。その上でよく製造業の人から「製造業はAIを使って何を目指すべきなのか?」という質問をもらうことを紹介した。「その答えはDigital Transformation(DX)だが、その言葉自体はフワフワしている。それを具体的に表現したものが「ビジネスモデルの変革」と「オペレーションの変革」だ」と語った。




オペレーションの変革とは

AIを導入することは、業務をAIに外注する、と考えるべき、AIでどれだけコストが下がるかが重要だ。現場のデータをクラウドに上げている企業はそのデータをAIで解析させると効果がでると考えている、とし、導入企業としてデンソーを紹介した。

デンソー
DENSOでは、工場の組立工数のタクトタイムを計測しているが、各作業が効率的なのか、更に効率を上げるにはどうすべきかの改善策をAIが推定しているという。従来はストップウォッチで計測して効果測定していたが、カメラとAIで行うことで自動化を進め、実際に効果が出ているという。




武蔵精密工業
武蔵精密工業は製品の出荷前検査や検品、自動運搬車など、工場現場での自動化に積極的だ。そのAI関連技術をABEJAが支援している。



ビジネスモデルの変革

製品を体重計を例にすると、ユーザーは体重計自体が欲しいわけでなく、ユーザーは健康が欲しくて体重計を購入する。しかし、物売りを基本な考えると体重計の機能に目を奪われてしまう。AIが前提にあることで、モノ売りからコト売りへ、という思想が拡がるという。
そらに具体的には「サブスクリプションを前提すること」を挙げた。サブスクリプションは顧客満足度の定義が変わる。例えば、新車を買ったときが金属度のピークで使えば使うほど満足度は下がっているが、サブスクリプションの場合は満足度を維持したり、上げていかなくてはならない、とした。ハードウェアでは満足度を向上していく進化を提供するのは困難なので、サブスクリプションで成功するにはソフトウェア技術の進化が重要になってくる。企業はこうしたビジネスモデルの変革を積極的に検討すべきだ、とした。


トプコン
TOPCONは眼底検査の高度化によって、眼だけでなく身体全体の状況が診断できるようになる技術を発表し、AIが医療の進化を急速に進める可能性が出てきた。


ダイキン
エアコンの部品点数は40万点の中から、故障修理の部品を判別しなければならない。高齢化でベテランが減り、人手不足も進む。それを見越して同社はダイキン情報技術大学を設立、AIがその業務を支援する AI人材を200名を育成しているという(岡田氏も講師をつとめている)。





オリジナルAIが5分で作れる

ABEJA PLATFORMのしくみや使うプロセスも具体的に紹介された。岡田氏は工場出荷時の検品作業を例に、企業がオリジナルの「傷を検出するAI」をABEJA PLATFORMを使って作る手順を動画で紹介、具体的なAIモデルの作成が垣間見える面白い内容だった。


まず60枚程度の傷が入ってしまっている部品の画像をABEJA PLATFORMにアップロードする。しかし、この時点では、AIはアップロードされた画像のどこに傷があるのかわからない。傷を教える作業(メタデータ、正解データの付加)がアノテーションだ。どこが傷の箇所か、画像に直接マーキングして傷の箇所を教えていく。こうしてAIは部品の画像を解析しながら傷がどういうものかを学習し、AIモデルが作られる。これをデプロイしてAIが実践(実証実験)に投入できるようになる。


この作業の時間はおよそ4分30秒。岡田氏は「この動画はほぼ等速で再生をしている。プログラミングもまったくなし。ABEJA PLATFORMなら、ほぼ4分30秒程度で傷検出のオリジナルAIを作れる可能性がある」と強調した。


アノテーションやラベリングも請け負う

更にABEJAは世界中に10万人のスタッフを配置し、アノテーションやラベリング作業を請け負う体制も整っているという。岡田氏は「データサイエンティストがラベリングの作業をするのはコスト高だしもったいない。これらの作業はクライアントからの依頼で当社が行うことができる」とした。「ABEJA PLATFORMでは認識した結果の正答率が低いものは複数名のスタッフが目視して確認するしくみ等を導入している。これによってAIの精度は使えば使うほど向上していく。

その結果、コストが1/100に削減できている会社も実際に出てきている。プログラミングは必要なく、月額レベルは数10万円レベルから導入できるの気軽に検討して欲しい。既にアカデミア分野では効果が検証できているが、今は社会実装していくフェーズ、多くの企業様と一緒に日本発の技術を広めていきたい」と語った。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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