長崎県五島市教育委員会、三菱総研DCS、日本サード・パーティ(以下 JTP)は、小学校における学習支援ツールとしてコミュニケーションロボットを活用することをめざし、五島市立奥浦小学校にて実証実験を開始したことを発表した。
ソフトバンクロボティクスのNAOを活用
実証実験では、DCSのクラウド型対話AIエンジン「Hitomean(ヒトミン)」とソフトバンクロボティクスの小型二足歩行ロボット「NAO(ナオ)」を連携させて、Small Talkやクイズを提供。児童や教員がスムーズにロボットを受け入れられるよう、段階的に使用範囲を拡大しながら進めていく。なお、ソフトウェア開発をDCSが担当し、「NAO」の提供をJTPが担当する。
Small Talkは、小学校高学年の外国語教育にて行われる活動。テーマを決めて教師と生徒が英語で話をしたり、または生徒同士で自分の考えや気持ちを英語で伝え合う。2時間に1回程度行われ、学んだ表現を繰り返し使用してその定着を図ることと、対話を続けるための基本的な表現の定着を図ることを目的としている。
NAOは身長約58cmの小型ロボット。多くの教育機関や研究施設において、プログラミングツールのスタンダードとなっており、新しいコミュニケーションやエンターテインメントなどに数多く活用されている。Hitomean(ヒトミン)は、DCS独自のクラウド型対話AIエンジン。学習データをもとに、表現の揺れを吸収し、自然言語での対話を実現する。
コミュニケーションロボットは、音声認識や画像認識機能を駆使してさまざまな人間的な動作を行い、児童の知的好奇心や挑戦心を刺激する新しいコミュニケーションUX(ユーザエクスペリエンス)を提供。対話をきっかけとして児童のより前向きな気持ちを引き出すことで、学習への参加や継続を促すとともに、教員・学校の負担軽減を目指す。
<児童への期待効果>
・コミュニケーションロボットとのふれあいをきっかけとした「知的好奇心の育成」 「学習意欲の引き出し」
・英語での語りかけによるネイティブな英語との接点の増加
・クイズ形式での繰り返し学習による学習内容の定着
<教員/学校への期待効果>
・英語科授業の一部代替による教員の負担軽減
・個人の正答率やその推移の見える化による個別指導支援
・標準化された教材の使用による、学習内容の品質安定化
実験は立奥浦小学校 全校児童43人を対象に、2020年1月31日まで行われる。なお同プロジェクトは、ソフトバンクロボティクスの「NAO」を活用し、三菱総研DCSが独自に実施している。
教育現場に貢献できるサービスを検討
教育現場では、2020年度新学習指導要領内の小学3・4年生の外国語活動、小学5・6年生の英語教科化の完全実施にともない、英語教育を担う教員の育成が課題となっている。ALT(外国語指導助手)としてネイティブスピーカーを採用するケースも増えているが、財政面などの理由から地域によってばらつきが生じている。
また、文部科学省が実施した教員勤務実態調査では教員の多忙化の実態が明らかになり、小・中学校では、国の定める過労死ラインを超えて働く人の割合が、他業種と比べて突出して高くなっている。
こうした背景を踏まえ、DCSとJTPは、児童への新たな教育機会の創出と教員の働き方改革の両面に貢献できるサービスとして、教育現場でのコミュケーションロボットの活用検討を進めている。
ICT機器活用力が年々上昇傾向の五島市
五島市は九州の最西端に位置し、世界遺産に登録された「長崎と天草地方における潜伏キリシタン関連遺産」や「ジオパーク」など、特色ある自然や文化に触れることができる。人口は、令和元年9月末現在で36,733人であり、少子化・人口減少や過疎化の問題を抱える地域でもある。市内には小学校14校、中学校7校(小中併設校は、小学校数に含む)があり、少子化にともない、複式学級を抱える割合が全体の30%を超え、教育の質の担保が喫緊の課題となっている。
五島市では、平成22年度から「五島市教育振興基本計画」に則り、国に先んじて「地域雇用創造ICT絆プロジェクト(教育情報化事業)」を実施し、現在まで小中学校における教育のICT化を継続的に推進している。その取組としては、小中学校への教育ICT支援員の計画的な派遣や普通教室におけるICT環境整備及び機器配置などが挙げられる。教育の情報化実態調査によると、教職員のICT機器活用力は年々上昇傾向にあり、教育現場における情報化が進んでいる。
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山田 航也横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。