株式会社全日警とCBC株式会社は、比較的小型の自律移動型警備ロボット「Nimbo」(ニンボ)をリリースすることを2019年10月16日に発表。報道関係社向けに警備ロボットを公開、販売計画等を明らかにした。
自律移動と遠隔操作に対応し、人が乗って移動することもできる(公道は乗れない)オフィスビルやショッピングモール、工場等での警備が可能なロボットだ。
当初「Nimbo」は実証実験を兼ねて全日警の警備スタッフを支援するカタチで現場に導入される。実証実験を兼ねて警備支援に従事し、改善を行った後に、広く販売・普及していくことを目指す。「Nimbo」の導入に伴う月額利用料金の想定金額は20万円。今年度の導入目標は100台を見込む。
警備ロボット「Nimbo」とは
警備ロボット「Nimbo」はシリコンバレー発。米国Turing Video社が開発した。
大きな特徴のひとつは、走行を制御する機構にセグウェイが開発した「Loomo」を採用していること。これにより、初期の開発コストを抑え、一般的なセキュリティロボットの開発や生産と比較して約7割のコストカットを実現しているという。それと同時に、国内最小クラスのコンパクトなサイズ感も目を引く。
警備ロボット「Nimbo」の基本機能
開発した米国Turing Video社のVice-President、ダニエル・フー氏はNimboの特徴や利点について語った。
セグウェイ「Loomo」が持つ、人が乗れるモビリティ機構を「Nimbo」も兼ね備えていて、報道関係社向け発表会でもTuring Video社のCEOが実際に「Nimbo」に乗って登場した。モビリティで話題になったセグウェイと同様、街や人に溶け込み、本当に使われる実用的なロボットを開発したいという思いを込めた、という。
・自律移動で警備パトロールができる
・人が乗って操縦、日中は移動のためのモビリティとして利用できる
・AIを使用してセキュリティのインシデント状況を検知できる
・センサーを搭載することで機能を拡張できる
警備に必要な巡回は自律的に移動して行う。Turing Video社はセグウェイ「Loomo」の基本機能に加えて、LiDAR等のセンサーによる自律移動用ナビゲーションシステム(自動運転)、AIによる画像認識(物体認識)システム、無線給電システム等、重要な機能をプラットフォームに追加することで、自動的に警備を行う移動ロボットを実現した。
巡回エリアのマップ作成などは自律的に行い、巡回コースや移動させたい地点をスマートフォンやタブレットのマップ上で指定するだけで行える。また、遠隔地から操縦やカメラ操作を行う機能と警備業務向けのダッシュボードも追加し、セキュリティソリューションとして充実させた。遠隔操作では、Nibmoを通じてセンターのスタッフと会話することができ、非常時には声を掛けて状況を確認できる。
海外ではCISCOのデータセンターやショッピングセンター等で導入
海外のNimbo導入事例としてシスコ社をあげた。シスコではデータセンター内に導入され、一般の警備だけでなく、登録されていない人間が立ち入っていないかの確認を顔認証システムで随時行っているという。また、水漏れやサーバの異常を検知するためのセンサー類も装備し、人的要素以外のセキュリティ面にも対応している。
サイズ H660 x L580 x W280mm
重量 23kg
速度 最大4.8km/h
乗車時速度 最大18km/h
動作時間 約7.5時間 (※運用方法により異なります。)
アクセサリー チャージングステーション
充電時間 約5時間
警備業界の市場・課題・警備ロボットの現状
冒頭で全日警の佐藤本部長が登壇し、警備業界の市場・課題・警備ロボットの現状について語った。現在、人口減少や高齢化が社会問題となり、深刻な人手不足に直面している。特に、流通、清掃、警備分野はそれらが顕著だ。一方で、セキュリティに対するニーズは高まる一方で、警備分野の業界ではそれを担う人材供給が追い付かないという指摘がされている。過酷な長期間労働も少なくないという。
こうした問題を解決するため、「Nimbo」は実用化に即した機能に絞り込み、大規模施設だけでなく中小規模施設でも実装可能なスキームを実現した“実用的”なセキュリティロボットを目標に開発されたという。現状ではまず警備業務の一部のみを「Nimbo」に代替させ、徐々に仕事の幅を拡げていきたい考えを示した。当面は全日警がクライアントに提供する警備業務のひとつのオプション、警備スタッフ支援として「Nimbo」を導入するとともに実証実験やブラッシュアップを進めていく。ソフトウェア類も現状はすべて英語であることから、他の警備会社への提供は時期尚早と判断した。
販売目標は2021年度には1,000台規模へ
販売面ではCBC株式会社と連携する。CBCの小川氏が登壇し、販売目標を2019年度100台、2020年度300台、2021年度1,000台とし、段階的に増やしていきたい考えを示した。現在は屋内専用だが、2021年度には屋外にも対応できるよう開発を進め、一気に市場拡大を目指す。
既に大阪で実証実験を行っており、警備スタッフには概ね好評だと言う。
「Nimbo」の導入に伴う月額利用料金の想定金額は20万円。警備業界では常駐にはひとりあたり契約料金が月額30〜40万円かかると想定できる。人は24時間仕事することはできないので、その部分を支援したり、常勤スタッフの業務を補完、支援するロボットとして割安に設定している。例えば、人が5回巡回していたコースをNimboが10回巡回するなどしてセキュリティの質を向上させることが考えられるだろう。更には、シスコの例のように、顔認証システムや様々なAIとの連携で、重要な任務もこなしていける可能性は十分にある。
警備分野の人手不足は、早期解決が求められている火急の課題。質の維持や向上も急務だ。
「Nimbo」はその救世主となり得るか?
動向を注目していきたい。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。