株式会社JTBとシャープ株式会社が教育旅行で協業する。
シャープ製のモバイル型ロボット「RoBoHoN」(ロボホン)を活用した京都向けの教育旅行プログラム「ロボ旅@教育旅行」を11月5日より販売開始することを発表した。
「ロボ旅@教育旅行」は、修学旅行などで”京都”を訪れる学校向けに、予め観光案内機能を搭載した「ロボホン」を旅行中に貸し出し、事前・事後学習も含めて、観光名所の歴史や文化を学びながら、ICTを活用する楽しさを体験できる。モバイル型ロボットを活用した教育旅行プログラムは旅行業界初の試みだという。
「ロボ旅@教育旅行」の機能を簡単に言うと次のようなプログラムだ。修学旅行で京都を訪れた生徒たちは、グループ行動の際に各グループで1台ずつロボホンを首からぶら下げて携帯して観光する。
ロボホンはGPSと連動していて、観光名所に着くとその場所に合わせた解説をしてくれる。また、解説は名所だけでなく、道路(坂道)や建物、名産品やうんちくなども解説できる。
JTBはロボホン100台を所有し、主に修学旅行を対象に1台6,000円でレンタルする(京都に到着した日より修学旅行最終日まで)。事業目標としては2023年には200校が導入する規模に成長させたい考えだ。
生徒達の行動の把握や連絡にも
先生はすべてのロボホンにおいて個々の現在位置をアプリ上の地図で把握することができる。予定のコースから外れているグループ等を簡単に発見することができる。
また、ロボホンは音声通話ができるバージョンを使用し、緊急時等には生徒と先生が通話して会話できる。更に、先生からロボホンに向けてメッセージを送信できる。受信したロボホンをメッセージを読み上げることができる(返信については現時点では未定)。メッセージは全グループに向けて送信できるほか、特定のロボホン(グループ)だけに送ることもできる。
旅ナカだけでなく前後での活用も視野に
JTBは教育旅行を旅マエ、旅ナカ(旅行中)、旅アトの3段階で捉えている。今回、発表のプログラムでは「旅ナカ」でのロボホン活用のみでスタートする。
「旅ナカ」(班別研修)では、5~6名の班ごとに1台の「ロボホン」を貸し出し、生徒が考えた発話内容も含め、京都市内500ヵ所以上の観光名所で「ロボホン」の自動観光案内を体感することができる、といった使い方を想定している。
将来的には「旅マエ」(事前学習)でロボットが動く仕組みやAIについて学習したり、「ロボホン」に発話させるオリジナルの観光案内文を考えたり、プログラミングができるような環境も整えたいとした。さらに、「旅アト」(事後学習)では「ロボホン」で撮影した写真や行動履歴(ログデータ)を、班ごとの成果発表に活用することができる構想も明らかにした(当初はロボホンで撮影した写真画像等はディスク等で事後配布の予定)。
「ロボ旅@教育旅行」開発の背景
文部科学省は、2020年度より実施する新学習指導要領において、情報活用能力を、「学習の基盤となる資質・能力」と位置付け、ICTを活用した学習活動の充実を提唱している。これに合わせて、小学校ではプログラミング教育が必修化され、中学校や高校でもICT教育が拡充されることから、学校現場ではICT環境整備や学習内容の検討が喫緊の課題となっている。JTBは全国64個所の教育旅行営業拠点を持ち、「ロボホン」を開発するシャープと連携することで、「ロボットによってICTを身近に感じ、楽しみながら修学旅行の学習行動できる教育旅行プログラムを共同開発するに至ったという。
中学生の修学旅行にロボットを活用
ロボホンはこれまでも「京都ロボ旅」「京都ロボ旅タクシー」「堺ロボ旅」といった企画でJTBとコラボレーションしてきた。従来は主に若い女性の旅行客がターゲットだったが、今回は中学生の修学旅行にフォーカスした企画として打ち出した。
それに伴いシャープは「ロボ旅@教育旅行」向けにロボホンのセリフを作成したり、学びの場面を記録(写真に撮る)して旅アトに活用したり、安全管理機能を追加、クラウド管理システムを構築して順次サービスを開始していく予定だ。
JTBとシャープは今回が好評なら、今後は京都以外の修学旅行に展開するなど、事業の拡大も視野に入れている。
ロボホン特集 (ロボスタ)
ロボホン 公式ホームページ
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。