12月からスマホの「ながら運転」厳罰化へ 自動車メーカー10社が参画、スマホとクルマを連携する「SDLアプリ」とは? SDLアプリコンテスト2019開催レポート

「スマートフォンとクルマをなかよくする」をキャッチフレーズに「SDLアプリコンテスト2019」の最終審査会が11月22日に開催され、決勝に残った10組によるプレゼンテーションの結果、グランプリは「優良ドライバーチェッカー」を開発したチーム名「開発わかばマーク」が受賞しました。賞金50万円と電動スクーター「ヤマハ E-Vino」が贈呈されました。

最終審査に参加したチームや審査員の皆さん。MCは自身がプログラマーでもあるタレントの池澤あやかさん

グランプリに輝いた「優良ドライバーチェッカー」、チーム名「開発わかばマーク」さん


安全運転のレベルを判定「優良ドライバーチェッカー」

「優良ドライバーチェッカー」は、SDLから得られる車両の情報とIoTデバイスからの情報から安全運転のレベルを判定、教官のような複数のキャラクターがアドバイスや指導してくれるほか、今見えた路上標識などについてクイズを出題し、標識や道路指示をきちんと見たり確認しているかも診断します(開発予定のものも含む)。



ドライバーは、メガネ型IoTデバイス「JINS MEME」を装着して運転をスタート。
例えば、左折の際には、SDLからブレーキやハンドル操作、ウインカーなどの情報を取得し、JINS MEMEからは運転者が左のサイドミラーや後方を目視で確認しているか等の情報を取得し、システムが運転レベルを判定します。「もう少し早めにウインカーを出した方がいいよ」「(運転手が)サイドミラーの確認OK」といった評価を音声で通知することもできます。

SDLからはアクセル、ブレーキ、ウインカー、車間距離、シートベルト装着の有無などの情報が取得できる。IoTはカメラ、距離、温度・湿度等のセンサーに加え、「JINS MEME」から視線、顔の動き、姿勢、眠気(まばたき)等を取得する

コネクテッドカー時代に求められる各種情報(自動車の情報(SDL)、カメラ、IoT、ドライバーの運転状況)の融合と分析を行い、安全運転を支援するという、いわば直球ど真ん中ともいえるコンセプトが評価されたのでしょう。

■グランプリ作品「優良ドライバーチェッカー」プレゼン


そもそもSDLとは

「SDL」(Smart Device Link:スマートデバイスリンク)は、クルマやバイク、カーナビや車載器等とスマホを連携させるための国際標準規格です。自動車の情報をスマホアプリに反映させたり、車載機からスマホアプリを安全に操作できるようにするものです。

自動車運転中のスマホ操作は社会問題として注目されています。2019年12月1日からは道路交通法の改正により、運転中のスマートフォン保持の罰金が普通車で1万8,000円に、また“交通の危険”を生じさせた場合は6点減点(免許停止)、さらには「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」と大幅に厳罰化されます。
こうした背景もあって、SDLを活用することで運転中にアプリ操作をしなくても、スマホや車載器の持つ様々な機能を活用して、より快適なドライブにつなげられる可能性により一層の期待が集まっています。クルマの中でもSNSを使ったり、スマホアプリを活用したいというニーズに対して、安全に、かつ適法にアプリを利用できるようにする方法のひとつとしてSDLが注目されているのです。
こうした可能性を追求し、より多くの開発者にSDL対応アプリを開発してもらうことを目的に、コンテスト形式で開催されるのが「SDLアプリコンテスト」です。今回で2回目となります。



自動車メーカー10社が参画

SDLの仕様を策定管理しているのは「SDLコンソーシアム日本分科会」です。このコンテストにも協力しています。この分科会は米のFordとトヨタ自動車が設立し、自動車メーカー10社(トヨタ自動車、日産自動車、マツダ、SUBARU、ダイハツ工業、三菱自動車工業、スズキ、ヤマハ発動機、川崎重工業、いすゞ自動車)などで構成されています。




カローラがSDLに対応

課題となるのはSDLが実車側に普及していくのかという点です。そこはトヨタ自動車が先陣を切って、新型カローラの全グレードに標準対応がはじまりました。ダイハツをはじめ他の自動車メーカーも、今後続々対応する見込みで、実車への展開も急速に進んでいく可能性があります。


SDLアプリコンテスト2019

「SDLアプリコンテスト2019」の冒頭に登壇したSDLコンソーシアム日本分科会の平川健司氏は「SDLはクルマとスマホを仲良くするもの。実社会では、トヨタのカローラをはじめとして、クルマへSDL搭載への動きがようやくはじまった。車の中でスマートフォンを使うのは当たり前になる一方で、12月から運転中のスマートフォン操作が厳罰化されるので、いよいよスマホを操作しないSDLへの流れが必要になってきた」とSDLの重要性を語りました。

SDLコンソーシアム日本分科会の平川健司氏

最終審査に残ったのは10組のチーム。それぞれ5分程度のプレゼンを行い、新規性、UX・デザイン、実装の巧みさといった観点から作品を審査し、前述のグランプリのほか、特別賞が3チームに贈られました。

審査員長 暦本純一氏(東京大学大学院 情報学環教授)、審査員は川田十夢氏(AR三兄弟長男)、鈴木朋子氏(ITジャーナリスト)、山本昭雄氏(トヨタ自動車 ITS・コネクティッド統括部長):順不同




SDLratch(SDLラッチ) (キッズ賞)

ドラッグ&ドロップとブロック型のインタフェースで、子どものプログラミング環境としも大人気の「スクラッチ」で、SDLを制御するSDLブロック・プログラミングを提案。クルマとスマホだけでなく、クルマとキッズも仲良くし、論理的思考を身に着けるきっかけづくりに。将来は子どもによるSDLアプリコンテストの開催や、「父ちゃん、スクラッチで動くカローラ買ってよ」と子供がおねだりする社会を目指す?






シェアレコ (ダンスもよかったで賞)

周囲のクルマが聴いている楽曲、友人が聴いている楽曲情報を交換し合ってシェア、契約しているストリーミングサービスから自動的に選曲して、クルマの中での音楽の楽しみ方が膨らむ新体験。






ミチログ (有給使ってイイネ賞)

料理店を評価する食べログならぬ、道を評価するアプリケーション「ミチログ」。通行している道路に「いいね」や「悪いね」を付与。SDL対応車種は自動で判定する機能も設ける。






■特別賞「ミチログ」プレゼン


SDLの展望

コンテスト最終審査では会場を提供したナビタイムからもプレゼンが行われ、「カーナビタイム」がSDLに対応したことが発表された。




SDL開発キット「SDLBOOTCAMP」

また、トヨタ自動車からはRaspberry Piで動作するSDL開発キット「SDLBOOTCAMP」が紹介された。カローラのようなSDL対応車種がなくてもSDLアプリや連携したシステムの開発が可能になる。

詳細情報は「SDLBOOTCAMP」で検索


SDLアプリコンテストは来年も実施される。コネクテッドカー、MaaS、CASEといったキーワードが注目される中で、自動車の安全と楽しさ、快適さをスマホやクラウドと連携して実現するSDLアプリに注目が高まっていきそうだ。


【SDLアプリコンテスト2019 最終審査会】
2019年11月22日(金)
株式会社ナビタイムジャパン本社1階セミナールーム

主催:SDLアプリコンテスト実行委員会(事務局:角川アスキー総合研究所)
協力:SDLコンソーシアム日本分科会、株式会社ナビタイムジャパン
後援:独立行政法人国立高等専門学校機構、一般社団法人コンピュータソフトウェア協会
審査委員長:暦本純一氏(東京大学情報学環教授)
審査員:川田十夢氏(AR三兄弟長男)、鈴木朋子氏(ITジャーナリスト)、山本昭雄氏(トヨタ自動車)

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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