ユニバーサルロボットがバッテリー駆動の協働ロボットを発表 AGVや自律型モバイルロボット向け
ユニバーサルロボットはDCバッテリーで駆動する協働ロボット(マニュピレータ:ロボットアーム)の新製品「OEM DC Model UR3e/UR5e/UR10e/UR16e」を正式発表した。都内で報道関係社向け発表会を行った。
OEMシリーズはロボットアームの仕様はサイズを含めて従来と同様(UR3e/UR5e/UR10e/UR16e)で、ティーチペンダントがなくなり、コントローラ内蔵ボックスからコントローラへと変更される(小型・5kg以下に軽量化)
最大の特長はDCバッテリーで動作する点だが、AC仕様のものも用意されるという。国内では11月26日より販売を開始する。
協働ロボットとは?
従来、産業用ロボットと呼ばれてきたロボットアームの分野では「人と協働した作業する」ことが最近になって特に重視され、協働ロボットと呼ばれる製品が注目されるようになった。ユニバーサルロボットは協働ロボットの先駆者として、小型・軽量で安全柵が要らないロボットの開発・販売を展開してきた。
また、一方で従来の産業用ロボットは比較的大容量の電力を必要とし、電源コードが必須の状況で、取り回したいモバイルロボットや自動運搬車(AGV)や自律型モバイルロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)での利用には向いていなかった。その点で今回発表されたロボットがバッテリーで駆動できる機能を持ち、小型化されたことは画期的な進歩と言えるだろう。
世界中では3万9千台が稼働
発表会ではユニバーサルロボットのゼネラルマネージャ、北東アジアの山根剛氏が登壇した。
ユニバーサルロボットはデンマークを本社に置き、ワールドワイドで展開する企業で、20ヶ国、29拠点、670名の従業員がいる。世界中では3万9千台が販売され、稼働しているという。
ユニバーサルロボット日本支社は「UR+」の認定製品やデベロッパーの育成なども行っている。「UR+」はユニバーサルロボット製品に準拠したり、プラグイン可能な機器は200製品以上、400社以上あり、オープンビジネスを掲げるエコシステムの構築を目指して、代理店、システムインテグレータ、ハンド(グリッパー)、ビジョンなど様々なパートナー企業との協業を展開している。日本ではキヤノンやシナノケンシが参画と製品を発表している。
その他、ユニバーサルロボット・アカデミー、アプリケーションビルダー、Sier育成プログラム、UR+のデベロッパープログラムなどを実践している。
新製品の「OEM DC Model UR3e/UR16e」に話を戻そう。
この製品はロボットアーム部分が役割としては主となる。従来のロボットアームは固定式だったが、ここまで解説してきた通り、OEMシリーズの最大のメリットはバッテリー駆動、つまり可搬システムとの連携ができることだ。例えば、自律移動させて稼働させたい場合は、AGVやAMRとの組み合わせが想定される。そこでどんなものと組み合わせるか、ということになる。
ユニバーサルロボットが属する同グルーブ傘下には、MiR社というAMR等に特化したロボットメーカーがあり、そのMiRとのコラボレーションが期待できる(OEシリーズ自体はどこの企業のAGVやAMRにでも搭載することは技術的に可能)。
ユニバーサルロボットとMiRの両社の国内販売店であるカンタム・ウシタカ社が登壇し、AMRの解説と、OEM DCシリーズを搭載したAMRのデモを行った。
OEM DCシリーズとAMRのデモ
MiRはユニバーサルロボットとは言わば兄弟会社。MiRもデンマークに本社を置き、世界48ヶ国に169の代理店を持つ。全世界で約2000台を販売しているという。
屋内搬送ではフォークリフト、コンベア、AGV、トロリー&ラックなどがあるが、MiR社は屋内搬送用にAMRを開発・販売している。
AGVとAMRの違いとして、カンタム・ウシタカ社は「AGVはガイドが必要で、ガイドの通りに移動する必要があるが、AMRはガイドなしで自律移動できるロボット」として定義しているという。AMRは搬送台車なので、そこに何を載せるかによって専用の用途に活用できるとし、その選択肢としてユニバーサルロボットのOEMシリーズに期待を寄せる。
デモではOEM DC UR16eを搭載したAMRが自律移動する様子が披露された。ルートの設定と移動マップもスクリーンに写し出され、ルート上に人がいる場合はAMRが検知して迂回する。AMRの操作パネルからOEMシリーズも制御(操作)できるのは同じグループ傘下の製品同士の利点だろう。
この組み合わせの場合、OEMシリーズはAMRのバッテリーから電力を得ることになる。MiRは単体ではバッテリー・フルから約12時間程度実働できるが、ロボットに電源供給すればその分、稼働時間は短くなる。OEMシリーズとの組み合わせた場合、OEMシリーズが行う作業内容によって十手リー消費は大きく変わってくるものの、目安としては午前と午後作業して稼働する場合、昼休みに充電するイメージで就業時間の稼働は可能ではないかと見積もっている。なお、長時間の稼働が必要な場合は、ユニバーサルロボット部にもバッテリーを接続し、AMRとのダブルバッテリーの構成も可能だとした。
なお、AMRとロボットの動作は完全に分割されていて、一方が動いているときは、もう一方は必ず停止した状態に制御されるという。
■動画
今後、このようにバッテリーで駆動したり、バッテリーを搭載して可搬できる協働ロボットは増えていくだろうと予想する。ユニバーサルロボットは可搬協働ロボットでも先陣を切った。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。