三井不動産株式会社は、同社が運営する大型複合施設EXPOCITY (大阪府吹田市)において、国立大学法人大阪大学と、『学ぶ』楽しさを感じられる空間を創出し、地域社会に貢献することを目的とした連携協定を2018年3月に締結している。
同協定を基にEXPOCITY内において、大阪大学大学院基礎工学研究科の石黒浩教授が代表者を務める研究プロジェクト「人間機械共生社会を目指した対話知能システム学」(「対話知能学」)を活用し、人間に酷似したアンドロイドや小型の人間型ロボットによる対話サービス実現を目指した実証実験を2019年12月より5年間、順次開始予定であることを2019年11月29日に発表した。
実証実験の内容は対話ロボットを使ったショップ案内や販売員の業務支援などで、同サービスが実現すれば、ロボットによる対話を介したホスピタリティの高いサービスを提供することが可能になる。
EXPOCITYにおける実証実験について
人間と対話し、人間にサービスを提供するロボットにおいては、実際の社会の中でその性能を評価する必要があるため、EXPOCITYを実験の場として研究開発に取り組み、解決すべき新たな研究課題を発見することを目的としている。また、対話ロボットの利用に関する問題を市民と共に議論するワークショップ等を開催し、ロボットと人が共生する社会に向けて、ロボット利用の社会規範を提案していく。
なお、今回の実証実験ではJST ERATO石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクトにおいて開発してきたロボットを利用する予定だ。
期待される成果と意義
同領域の研究により、機械や情報メディアの自律化が進むとともに、言語を通して人間と機械や情報メディアが、互いの意図や欲求を推定し合いながら関わり合うという、新たな人間との関係を築くことができるようになる。人間が機械や情報メディアに命令を伝えるという一方的な道具的関係から、人間と機械が互いに共生する関係に発展させられるということだ。また、ロボットによる対話支援や健康支援を通して、「Society 5.0」の実現にも貢献する。
大阪大学と三井不動産は、今後も同研究プロジェクトを通してさらに連携協定の取り組みを加速させ、EXPOCITYに『学ぶ』楽しさを感じられる空間を創出し、地域社会の発展・活性化を図っていくと述べている。
新学術領域研究「対話知能学」について
近い将来、ロボットと人間は言語を用いながら互いの意図や欲求を理解し合い、共生していく関係を築いていくと考えられ、情報社会に続く「人間と知能ロボットや情報メディアが共生する人間ロボット共生社会」の到来のため、同新学術領域研究では、ロボットが意図や欲求を持ち、自律的に人間を支援するシステムの研究開発に取り組んでいる。具体的な内容は以下の通りだ。
対話継続関係維持研究
対話内容を完全に理解できない場合も、違和感なく対話を継続できる能力を実現する。
対話理解生成研究
特定の状況において、特定の目的に関して対話理解と対話生成を組み合わせた対話能力を実現する。
行動決定モデル推定研究
ロボットが自らの行動決定モデルを構築したり、また、相手の行動決定モデルを推定する機能を可能にする。
人間機械社会規範研究
実証実験とともに開催するシティミーティングを通して、意図や欲求を持つロボットの人々への影響を研究するだけでなく、ロボット共生社会における社会規範を提案していく。