日本市場におけるAlexaスキル数は3000を超え、その中でも課金に対応したマネタイズ可能なスキルも100を超えた。
12月13日、アマゾンジャパンはAlexaスキル開発者向けのイベント「Alexaスキル Learning Day」を都内で開催した。
イベントはアレクサ ビジネス本部 本部長 柳田晃嗣氏の講演で幕を開け、2019年に発表されたAlexaスキル機能の最新情報やAmazon Echoシリーズ、アレクサのビジネス活用「Alexa Everywhere」の展望などが紹介された。
柳田氏はこれまでのパソコンやインターネットの進化、電子デバイスのインタフェースについて解説した。その上で「スマートスピーカーが普及し、タッチパネルでの操作は便利になったものの、朝の忙しい時間、自動車の運転中、赤ちゃんの世話をしていとき、日常の中で使いにくいと感じるシーンもある。そんな時にも簡単にデバイスが操作できる音声インタフェース(VUI)が有効と考えて、AmazonはAlexaを開発した」と語った。
「Alexa Everywhere」は80ヶ国以上、15言語に
更に、「音声ならではのユーザー体験」について、「米国では「Alexa Everywhere」が事業部所名にもなっている。音声インタフェースは人間にとって自然なものであり、Amazonとしては、Alexaをモバイルでもって歩くデバイスに限らず、どこに言ってもそこにAlexa(対応デバイス)があるというコンセプトのもと、「Alexa Everywhere」をコンセプトにしている。現在では80ヶ国以上、15言語に拡がっている」とした。
ますます増えたEchoラインアップ
次に、現在の主なAmazon Echoシリーズが紹介された。
現在、Echoシリーズにはスマートスピーカー製品だけでなく、ディスプレイ付きのマルチモーダル製品もあり、日本では画面付きのものが人気だと言う。Fire TVシリーズにもAlexa対応製品がある。
Echoシリーズはスマートスピーカーの枠を超えたラインアップが豊富に用意されている。例えば、直接コンセントに接続する「Echo flex」。プラグイン付きのAlexaデバイスで、IoTセンサーデバイスを接続して拡張できる。日本では予想以上に反響があるという。
Day 1 Editions
また、米国では「Day 1 Editions」というコンセプトも発表されている。柳田氏によれば「Amazonはいつでもデイ1、すなわちまだまだ未熟、まだまだ第一歩に過ぎないという自らへの戒めをこめて」つけられたコンセプト名称と説明。その中には先進的なデザインのデバイスが並ぶ。
Alexaスキルを簡単に開発できるAPI群
柳田氏は続けて、Alexa向けのAPI群について解説した。
ひとつは「Alexa Voice Service」。「Alexa Voice Service」にはAlexaとの連携対話が中心になる「搭載デバイス」と、掃除機や家電などのように、Alexaを通じて機器の設定や操作を行える「Alexa対応デバイス」がある。どちらも開発できるようにそれぞれのAPIが用意されている。
Alexa Skills Kit
もうひとつが、比較的簡単にAlexaスキルを開発することができる「Alexa Skills Kit」だ。Alexaスキルを開発し、テストし、デプロイ、完成したスキルをユーザーに提供できる一連のしくみが含まれている。
例として、ヤマト運輸の配達を知らせてくれたり、その配達の日時を変更したりするスキルや、出前館で食事の配達を注文できるスキル等が紹介された。
現在のスキル登録数はついに3000を超えた。この先も新しいスキルがリリースされる予定だ。
Alexa Skills Kitにおける、2019年の新しい機能は4つ。
定型アクション、スキルの収益化、パーソナライズ、Web API for Games (Developer Preview)だ。
定型アクション
スキルの収益化
パーソナライズ
Web API for Games (Developer Preview)
定型アクション
何かの発話をトリガーにして、スマホのAlexaアプリで複数のタスクを順番に実行するように設定できる。例えばEchoデバイスに対して「おはよう」と話しかけると、照明がついて、テレビがついて、最新のニュースを読み上げる、といった流れなどだ。
今年の進化では、この定型アクションのタスク中にスキルも追加することができるようになった。
柳田氏は、自宅では玄関に「Echo flex」を設置して、人が出かけるのを検知してAlexaが情報を提供してくれたり、職場で正午前に自動的に出前館スキルが起動するように設定する、といった例を紹介。このように最近では「アレクサ」という呼びかけがなくても、慣習的に接したり、自動的にできることが増えている、とした。
スキルの収益化
スキルのマネタイズが可能になった。ひとつは「Amazon Pay for Alexa」、もうひとつは「スキル内課金」が導入できるようになったことで、ユーザーには無料で使い始めてもらい、気に入ったら拡張機能や拡張のコンテンツを有料で提供する、というしくみが確立された。
既に収益化できるスキルは100を超えた。
パーソナライズ
「音声の識別」機能が追加され、音声を識別して個人を特定、個人に合わせた情報を提供したり、パーソナライズされた返答を行う。
例えば、音声による「星占い」では家族の誰が話しかけたのかを識別して、話しかけた本人用の占い結果を返すことが望ましい。それを実現できるようになった。
Web API for Games (Developer Preview)
日本では要望が多かったゲームスキル開発キットがついにリリース。ウェブゲームを移植することが簡単になった。米国にはない日本独自のユニークな展開ができるようになるのではないか、と、ビジネス効果に期待を寄せる。
Alexaスキルの普及とビジネス展開が加速
柳田氏は最後に米Amazon.comのCEOであるジェフベソス氏の話を引用した。
ジェフベソス氏の邸宅には暖炉がふたつあるという。ひとつの暖炉はドリーマーで、ドリーマーがまずは火を付ける。その炎に感化を受けてビルダーが火を灯す。ビルダーのアイディアを聞いてドリーマーが考える。それが繰り返され、ドリーマーとビルダーが影響を与え合って夢が具現化されていくのだろう」と語った。
Alexaスキルのビジネス市場は日本では本当にまだはじまったばかり。会場は超満員。大きく火が燃え上がる日もきっと近い。
Alexaスキル Learning Day
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。