米国・欧州・中国に負けそうな日本、ロボット社会実装に重要な5つの視点「RobiZy設立2周年記念 シンポジウム&交流会」

ロボットビジネス支援機構(RobiZy)は12月2日、「RobiZy設立2周年記念 シンポジウム&交流会」東京大学弥生キャンパス 弥生講堂一条ホールで開催した。


RobiZy(ロビジー)は特定非営利活動法人ロボットビジネス支援機構、ロボット業界の活性化を目指すプロジェクトとして2016年に設立され、2017年10月に特定非営利活動法人(NPO法人)になった。企業、団体、大学、行政機関等と連携し、ロボットビジネスに関する調査研究・事業活動の支援を展開、IoTやAIを含むロボット分野の活性化と高度化を促し、安全・安心で円滑・継続的なロボットビジネスの実現を図ることを目的として活動している。
この日は講演と技術展示、懇親会などが行われた。また設立から2周年、新たな「RobiZy2.0」が提唱された。

SEED Solutionsのスマートアクチュエータ搭載のヒューマノイド

『しおりん』はテレプレゼンスロボットとしてMCを担当

おなじみ、ハタプロのZUKKUも展示

■動画 メカナムホイールの動きがおもしろい


組み合わせ価値の時代

挨拶講演としてRobiZy理事長/東京大学名誉教授の佐藤知正氏が登壇した。佐藤理事長は冒頭「組み合わせ価値の時代」と指摘した。組み合わせとは様々な技術の融合で一気に可能性が広がることを示唆していると思われる。


例えば、ロボッはアクチュエータやCPUの進化によって精度やスピードは上がってきたが、単体での進化はその程度だっただろう。しかし、AIの登場によってロボットの視覚/聴力が飛躍的に向上、判断力や予測する能力も追加することができ、組み合わせることによってロボットができること、用途やユースケースが拡大しようとしている。また、今後もIoTの進歩によってセンシング(感覚)が、来年には5Gの登場によって、通信のレスポンスが向上すれば、更にロボットの可能性は広がっていく。これら要素技術やコア技術の組み合わせによって、ロボットの進化や実用化が一層進むことが期待できるだろう。




米国、欧州、中国に負けそうな日本

佐藤理事長は次に、1人がやるより多くの人で取り組む「衆知の時代」になってきているとして、「RobiZy 2.0」を提唱した。米国、欧州、中国、日本で分けて比較して見た場合、米国は「戦略的優位性で群を抜く」とし、若い世代のスタートアップ活動が旺盛、それを支える潤沢なベンチャーキャピタルの存在を上げた。
欧州の特徴は「標準化戦略で優位」と科学技術を信頼する土壌、北欧では高福祉社会が実現できている実績をあげた。
そして中国は「国家資本主義と市場の大きさで圧倒」しているとし、13.5億人市場と国家資本主義の優位性に触れた。


一方、日本はどうだろうか。
産業用ロボットの分野において、かつて「ロボット大国」と呼ばれた日本だが、産業用ロボットの特許の多くは米国がとったもの。これらを背景に佐藤氏は「日本は技術で勝って産業化で後塵を拝している」としつつも「きめ細かな改善を積み重ね、モノ、サービスの質を変える活動を通じて「技術熟成価値社会実装力」に強みがある、失われた20年はサイバーで負けたが、フィジカルが伴うロボットの世界、すなわちサイバーフィジカルでは勝てる可能性が十分ある、と語った。

佐藤氏は2周年にあたって、これからのRobiZy「RobiZy2.0」を提唱した。

【RobiZy2.0】
1.技術熟成価値社会実装マトリクス活動
2.協働ロボット
3.新しいSIer (SIerが主導するロボットの社会実装)
4.地域へのロボット導入 (スーパーシティ地方創生)
5.世界の成長点をめざすロボット社会実装



佐藤氏は「協働ロボット」をうたうユニバーサルロボットの戦略を引用。同社がこれまでロボットを使ったことがない外食産業などサービス業にも市場を拡げていること、初めてのロボットでもユーザーが使えるようにパートナー(ロボットハンド、画像センサー、ソフトなど)を取り込んだ「UR+」の発想とエコシステムを導入していることを評価した。


少子高齢化と人手不足を解決するため、ロボットによる自動化は社会的に期待されている。一方で、その流れが国内で飛躍的に進んでいるとはいいがたい現状だ。RobiZyのような実装化を推進する団体が声を上げ、政府や産業界を含めて産官学で一体となり、世界で戦える体制を作っていくには具体的に何が必要か、繰り返し議論して、それを実践していくことが重要だ。


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ロボスタ編集部

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