オムロン、工場を再現して課題解決に挑む「オートメーションセンタ東京」 を開設

オムロン株式会社は2020年1月22日、東京・品川にロボットやIoT、AIを用いたソリューションを体感・検証・実証・トレーニングする新拠点「オートメーションセンタ東京(ATC-TOKYO)」をグランドオープンし、記者会見と内覧会を開催した。

「ATC-TOKYO」はオムロンのFA技術集積拠点「オートメーションセンタ(ATC)」の旗艦施設。ATCはオムロン独自のオートメーションコンセプト「i-Automation!」を体感・共有できる場所として2011年から世界に37拠点設置されている。「ATC-TOKYO」は顧客装置を持ち込んだ実証が可能な「POC-TOKYO」を併設し、実際の使用環境に合わせた開発・検証・実証・技能習得が可能な施設として設立された。

「ATC-TOKYO」と「POC-TOKYO」を併設した拠点

「POC-TOKYO」

「POC-TOKYO」では実際の設備を持ち込んだ検証が可能

年間で、600社、3000名程度のの来所を見込んでおり、2年間、2021年までの制御機器受注金額での受注目標金額は55億円。「ATC-TOKYO」の対象企業の業種は自動車関連だけではなく業界や顧客を限定せず、食品や半導体、物流など様々な領域を対象とする。

テープカットも行われた




経営層、スマート工場への挑戦も視野に入れたセンター

オムロン株式会社 執行役員副社長、インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー社長 宮永裕氏

会見ではまず、オムロン株式会社 執行役員副社長、インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー社長の宮永裕氏が「ATC-TOKYO」の概要とオムロンの事業方向性を解説した。オムロンの制御機器事業は事業部門別売上高構成比でおよそ半分を占め、2020年3月末見通しの売上高は6,700億円。オムロン創業者の立石一真氏による「機械にできることは機械にまかせ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむべきである」という企業理念に則って事業を行なっている。

制御機器事業はオムロンの祖業

昨今のモノづくり現場は変革期を迎えている。モノづくり自体の高度化、多品種少量生産、そして人手不足などの課題やソーシャルニーズの高まりがあり、より良いモノづくりは難しくなっている。いっぽうモノづくりを実現するための、AI、IoT、ロボットなどの先進技術の高度化は追い風となっている。宮永氏は、「シーズとニーズがぶつかりあうことで、世界の製造現場は大きく変化している」と表現した。

モノづくり現場の変化

オムロンは独自のモノづくりオートメーションコンセプト「i-Automation!」を掲げて、3つの「i」、すなわち知能化(intelleigent)・制御進化(integrated)・人と機械の新しい協調(interactive)の融合によるイノベーションを目指している。宮永氏は具体的な例として、アイシン・エィ・ダブリュの事例を紹介した。

オムロンのオートメーションコンセプト「i-Automation!」

オムロン「i-Automation!」の実現を支えるのが、20万点に及ぶ制御機器群をソフトウェアですり合わせた170種以上の制御アプリケーションだ。宮永氏は「機械とソフトウェアモジュールを組み合わせることで様々な制御が可能になる。人しかできなかった検査を自動化し、人の動きを見ながらAIが判断しながら最適コースを決めるといったことができるようになる。これが我々のビジネスを支えている」と述べた。

ソフトウェアモジュールで組み合わされた170種以上の制御アプリケーション

「ATC」では開発・検証・実証・技能習得までを継ぎ目なくつなぎ、アプリケーションを実際の製造現場へ導入することを目指している。宮永氏は「顧客と一緒に制御の課題を解決していくのがATCだ。ATCで現場を再現して検証・実証を行い、顧客の現場を革新できるのが特徴だ」と強調した。

開発・検証・実証・技能習得までを継ぎ目なくつないで現場へ

今回、「ATC-TOKYO」を品川に設立したのは、アジアへの窓口、そして東京に集中している顧客経営層への誘客を考えたため。他のオートメーションセンターも経営層が訪れることが増えてきており、それを踏まえて設立した。特に「いよいよスマート工場にチャレンジしていきたい」という声に応えるための施設だという。

ロボットだけでなく高速撮像技術による目視検査自動機器なども

たるみがないようにロールを一定張力で送り出す最適制御のデモ。電池の品質向上に寄与する

また、世界の各拠点のノウハウを東京でマネージし、170に及ぶアプリケーションを統括する役割で、開発・標準化・展開するような役割を担っていこうというのがもう一つの役割だと述べた。そして「好循環を作るためにはトップから現場までの循環を作らなければならない」と述べ、「i-Automation!」を世界中に広めていきたいと語った。特に中国、台湾、韓国、東南アジアなどアジア諸国からの顧客を招いてソリューションを提供したいという。

アジア各国からの顧客を東京に呼び寄せる




工場を再現、実際のアプリケーションで検証

オムロン株式会社 執行役員、インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 技術開発本部長 福井信二氏

オムロン株式会社 執行役員、インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー技術開発本部長の福井信二氏は、「ATC-TOKYO」について、顧客と一緒にソリューションを開発するための「工場の再現」だと語った。「顧客の設備や課題をじっくり聞いて、すりあわせることで、モノづくりに革新を起こしていきたい。AI、IoT、ロボティクスをアプリケーションとして提供することが狙いだ」と述べた。

「ATC-TOKYO」エントランス

ATC-TOKYOは、エントランスから工場を模している。続けて社会課題の共感・共有するためのビデオを見ることで将来課題を共有し、そのあとに実際のアプリケーションの展示を、製造ラインを工場と同じかたちで並べて示した。「3つのi」がわかるようなかたちで制御アプリケーションを並べているという。「半日から1日程度じっくりとデモを見ながら顧客課題と技術のすり合わせをすることができる」施設だという。

人とロボットが協調するライン

■ 動画

また、併設施設である「POC-TOKYO」では、より長期間、短くても3日から数週間程度の時間をかけて実証・研修などを行うことができる。こちらでは顧客ごとの部屋を用意して、実際の顧客の製品や装置を持ち込んで、オムロンのアプリケーションを試すことができる。機能展示のショールームではなく、「アプリケーションしかない」ところが特徴であり、「アプリケーションによって課題を認識してもらい、POCセンタでどっぷり一緒に解決していく。展示型ではない体験型のFAソリューション拠点だ」という。

「POC-TOKYO」では顧客設備を持ち込んだ検証が可能

オムロンは「i-Automation!」を展開するために「i-BELT」というサービスも展開している。顧客側に出向いて継続改善を行うのが「i-BELT」であり、世界中にいるフィールドエンジニアが顧客を誘客して連れてきて一緒に課題解決するのがATCという住み分けだという。

オムロンが展開中の協働ロボット

検査機器の研修なども可能

■ 動画

また、競合他社との違いについては、「オムロンしかもちえない商品ラインナップ、すなわちセンサー、PLC、サーボモーター、ロボット、セイフティ関連商品、この5つを実現できるFAの会社は他にはない。さらにここにソフトウェアモジュールですりあわせてアプリケーションとして届ける。本当に現場の機械を制御するためにシームレスな品揃えを用意している。
数千人の営業とフィールドエンジニアが泥臭いアプリケーションを解決する。それがi-Automation!だ。泥臭い機械制御を様々な製品をすり合わせて一緒に解決するのがオムロンらしさだ」と答えた。

内覧会の様子

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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