日経クロストレンド「トレンドマップ 2020冬」を公開 注目のトレンドワードはD2C、XR、MaaS、AI、5G、キャッシュレスなど

日経BPは、マーケティング専門メディア「日経クロストレンド」が作成した「技術」「マーケティング」「消費」の潮流を見極める「トレンドマップ 2020冬」を2020年3月23日に発表した。前回調査(2019年夏)から将来性スコアが最も伸びたのは、技術では「AR(拡張現実)/VR(仮想現実)/MR(複合現実)」、マーケティングでは「D2C」、消費では「MaaS」となった。(上の画像は日経クロストレンドから引用)

■「トレンドマップ2020冬」の分析手法
調査は2020年2月に実施。編集部が選定した技術24キーワード、マーケティング25キーワード、消費25キーワードそれぞれを認知する人に、そのキーワードの現時点での「経済インパクト」と「将来性」を5段階で尋ねてスコアリングした。質問の選択肢は下記の通り。

「経済インパクト」
1.どの企業も収益を得られていない/2.一握りの企業(1~2割程度)の収益に影響している/3.一部の企業(3~5割程度)の収益に影響している/4.大半の企業(6~8割程度)の収益に影響している/5.社会全体になくてはならない存在

「将来性(=企業の収益貢献や社会変革へのインパクト)」
1.将来性は低い/2.将来性はやや低い/3.どちらとも言えない/4.将来性はやや高い/5.将来性は高い]


変化が激しい技術、マーケティング、消費から有望なトレンドを選定

技術、マーケティング、消費の3分野は変化が激しく、様々なバズワードが飛び交っている。この中から、中長期的に注目すべきトレンド(潮流)の見極めを目的とし、日経クロストレンドの活動に助言する外部アドバイザリーボード約50人と、編集部の記者など各分野の専門家にアンケートを実施し、その知見を集約した。分析結果は、「現時点での経済インパクト」と「将来性」の2つのスコアでマッピングしている。


各分野でスコアを伸ばしたキーワード(2019年夏調査との比較)

前回の19年夏調査と比較し、将来性スコアが最も伸びたのが、技術は「AR/VR/MR」、マーケティングは「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」、消費は「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」。また、経済インパクトでは、技術は「スマートフォン」、マーケティングは「DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)」、消費は「ジェンダーフリー」がスコアを伸ばした。

今回発表されたトレンドマップ2020冬で、経済インパクト、将来性スコアの上位3位に入ったのは、以下の通り。なお、最新トレンドマップの全キーワードは日経クロストレンドのWebサイトで公開されている。


技術分野は、新キーワード「都市OS」が急浮上

経済インパクトの1位は「スマートフォン」、スコアは5点満点中の4.75となった。これは、18年夏、19年冬、19年夏の調査でも同じ結果。一方、将来性の1位は「AI(人工知能)」で、スコアは4.64。引き続き重要キーワードとしての認識が強く、経済インパクトも3.86と高く評価されている。また、AIに続いたのが「自動運転」で、将来性スコアは4.54。そして、モノのインターネット「IoT」(4.39)と、新たな通信規格「5G(第5世代移動通信システム)」(4.39)が、上位に挙がっている。




また、技術分野では、今回の調査から「都市OS」「遠隔医療」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「バーチャル・ヒューマン・エージェント」という4つのキーワードを追加。このうち、将来性スコアで上位につけたのは、「都市OS(4.29)」、「遠隔医療(4.29)」、「DX(4.19)」の3つ。

■技術分野のトレンドマップ



都市OSとは、交通や医療、エネルギー、流通、観光など、様々なデータを分野横断的に収集・整理したデータ連携基盤のこと。デジタル化された都市、スマートシティを形づくる重要なベース技術となる。世界最大のデジタル技術見本市「CES 2020」で、トヨタ自動車が発表した未来都市構想「Woven City(ウーブン・シティ)」が象徴するように、未来のまちづくりに対する関心が高まっている。


マーケティング分野は「D2C」に注目

マーケティングの経済インパクト、将来性スコアの1位はいずれも「EC(ネット通販)」となった。一方、前回の19年夏調査から大きく将来性スコアを伸ばしたのが、「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」(4.07)。D2Cとは顧客に直接商品を販売するモデルのこと。従来のSPA(製造小売り)との違いは、多くのD2Cブランドがオンライン発である点。米国ではユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場企業)が相次いで生まれており、日本でも丸井グループがD2Cの支援に特化した子会社を設置し、D2Cを丸井が目指す次世代店舗の戦略の要に据えるなど、期待感が高まっている。



また、マーケティング分野では今回の調査から「SDGs(持続可能な開発目標)」「ファンベース」「アドベリフィケーション」「信用スコア」という4つのキーワードを追加した。このうち、「SDGs」は将来性スコア4.17で2位につけており、関心の高さを物語っている。


消費分野は「キャッシュレス決済」と「MaaS」に注目

消費分野の経済インパクト1位は「コト(体験)消費」でスコアは3.71。2位の「キャッシュレス決済」(3.66)は、将来性スコアでも2位(4.40)にランクイン。「100億円キャンペーン」などで注目を集めたPayPayを筆頭に積極的なマーケティング投資が行われているうえ、19年10月の消費税率引き上げに伴う「キャッシュレス・消費者還元事業」を受けて利用者が急増していることが要因だという。

将来性スコアの1位は「MaaS」で4.53。MaaSとはあらゆる交通サービスを統合し、1つのスマートフォンアプリを通じてルート検索、予約、決済機能にアクセスできるようにするサービスのこと。日本ではトヨタ自動車の「my route(マイルート)」や小田急電鉄の「EMot(エモット)」など、各地でサービス展開がスタートしている。

その中で生まれている新潮流が、MaaSと異業種の連携モデル。MaaSアプリに飲食店のサブスクリプションサービスを取り入れたり、マンション住民向けにオンデマンドの乗り合いバスを提供したりと、他産業を巻き込んだ取り組みが進んでいる。人々の移動の先には「目的」があり、そこには消費を捉えるチャンスがあるため、消費キーワードとしてMaaSへの期待が高まっていると考えられる。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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