機械人間オルタ「傀儡神楽」をALIFEでライブ配信 攻殻機動隊/イノセンス「傀儡謡 怨恨みて散る」など全三幕を披露

2020年3月27日。「TOKYO ALIFE 2020 Ver.0 傀儡神楽」(くぐつかぐら)と題して、渋谷スクランブルスクエアから機械人間オルタが参加したパフォーマンスがライブ配信された。「傀儡」(くぐつ)とは人形、「神楽」(かぐら)は招魂と鎮魂のために神に捧げられる歌舞のこと。


アンドロイド「オルタ3」、能楽師の安田登氏、民謡ユニットの西田社中のコラボレーションが実現した。西田社中は「攻殻機動隊」やその続編「イノセンス」等で印象的な歌声を提供してきた。そこに新作能「イナンナの冥界下り」チームが加わり、ライブ映像には妖艶で独特の世界観が拡がった。

能楽師の安田登氏

披露された曲目(演目)は下記の3曲(三幕)。

奉拝節 (民謡)
傀儡謡 怨恨みて散る(「イノセンス」より)」
夜神楽せり歌


このアーカイブ動画はいずれ公開予定なので、続報があればロボスタでもご案内する予定。


全三幕に込められたテーマ

オルタに生命性や自律性を降ろすことを「神降ろし」に例えた(祭りの場所に神霊を招請すること)。パフォーマンスの第一幕はこの「神降ろし」を示している。


第二幕は「イノセンス」の「傀儡謡 怨恨みて散る」。攻殻機動隊のファンなら特に、鳥肌が立つ思いだったろう。自律性を持ったオルタが行動で表現をはじめる。

海外を含めて多くの舞台で指揮をしてきたオルタ。奥に西田社中のメンバーが見える

オルタはロンドンやドイツを含めて、今まで経験してきた自分の動きの記憶を蓄積。蓄積したその記憶を元に動き、それによって自律性が生まれる。自律性や意識は記憶に基づくもの、という考えが根本にある。


第三幕は「模倣」(真似)。クライマックスへと誘う。安田氏や傀儡師が加わり、オルタはその動きを模倣しつつ、自律性を失い、天に帰っていく。





池上教授は「ALIFEで研究されているのは自律性であり、自律性は自分の意思で行為を決定すること。それを「傀儡神楽」を通して表現した」とコメントしている。


TOKYO ALIFE 2020 (9月開催予定)へとつづく

同日はもともと「TOKYO ALIFE 2020」が開催される予定だった。同イベントは新型コロナ感染症への対策から9月に延期することが決まった。
「ALIFE」は生命や進化、情報を、人間の尺度を超えて問おうとする学問。これまでも「ALIFE」の象徴のひとつとして「オルタ」は登場してきた。東京大学の池上高志教授とそのチーム、大阪大学の石黒浩教授とそのチームらが、「いかにオルタに生命感や生命性を付与するか」をコンセプトに研究をおこなってきた。

観客で賑わうはずだったイベントの同じ日、誰もいない同じ会場から、あえてパフォーマンスをライブ配信することで「何かが生まれるかもしれない」「人々が不安に疲れるなか、この芸術が一抹の助けになるかもしれない」と判断した。ライブ配信は「DOMMUNE」で行なわれた。


ALIFE 2020 のホームページより引用
「傀儡」とは人形、「神楽」は、招魂と鎮魂のために神に捧げられる歌舞のことです。世界中でウィルスが甚大な影響を及ぼし、人々が不安に疲れるなか、この芸術が一抹の助けになることを願います。そして、1万倍という突然変異率で変化を続けながら、人類より遥かに長い歴史をもつウィルスたちが漂う世界で、悠久の時間と複雑な自然界における「人間」や「生命」を、改めて考え直すきっかけになればとも思います。ALIFEは、生命や進化、情報を、人間の尺度を超えて問おうとする学問です。9月の会議では、この状況を経たからこそ可能なディスカッションができることを祈りつつ。


関連サイト
TOKYO ALIFE 2020
DOMMUNE

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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