工場内搬送や自動仕分け、ピッキングまでロボットで自動化へ 「国際物流総合展2020」レポート
いま、ロボットをはじめとした新たな自動化・省人化ソリューションが、もっとも導入され、役立てられているのは物流現場だ。しばらく前に行われたイベントだが、2月19日(水)~21日(金)に東京ビッグサイトで行われた物流・ロジスティクスの展示会「国際物流総合展2020 -INNOVATION EXPO-」のレポートをしておきたい。
工場内・倉庫内物流の自動化
株式会社ZMPは、台車型物流支援ロボット「CarriRo」シリーズを出展。無人フォークリフト「CarriRo Fork」、物流支援ロボット「CarriRo AD+パレットタイプ」などのデモを行った。「CarriRo」は5年リース月額28,000円から。床面のマーカーを使って移動する「CarriRo AD+パレットタイプ」は積載荷重200kgで、5年リース料金は月額82,000円(税別)から。アタッチメントをつけることで、300kgまでのカゴ車等の牽引も可能だ。
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「CarriRo Fork」はLinde Material Handling社の機体をベースにした無人フォークリフト。2DLiDARと環境側に置く反射ポールマーカーを用いたレーザー融合型方式で、±10㎜〜20㎜の動作精度を実現しているという。可搬重量は1000kg〜1600kg、5年リース料金が月額28.2万円からとされている。ZMPでは、ラックや棚移動を「CarriRo Fork」が行い、その後の荷物搬送を「CarriRo AD+」が行うという運用形態を提案している。
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トピー工業株式会社は、クローラー式搬送支援AGVリモート「セキシュウ・クローラー」を出展。物流現場で使われるカゴ車の下に入り込んで前後左右に搬送することができる低床クローラーロボットだ。積載量は最大500kg。ランドマークによる自動走行のほか、手動操作も可能だ。日本通運の現場などのほか、工場内、工場間の物流で用いられている。
日本通運株式会社のブースではDoog社の台車型ロボット「サウザー」も出展されていた。「サウザー」は最大荷重120kgで、追従によって運搬力を増大させることができる。詳細については本連載の第一回(2016年4月掲載)で取り上げているので、こちらを読んでほしい。現在は、最大可搬質量900kgの大型「サウザージャイアント」などもラインナップされている。
「ビシャモン」ブランドで物流製品を展開する株式会社スギヤスは、可搬重量1.5tのAGVを参考出品していた。現在のハンドパレットと同等の荷物を扱えるようにしたとのこと。
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ピッキングする人を助ける「自律モバイルロボット(AMR)」
物流分野で最近増えはじめたのが自律モバイルロボット(AMR)と呼ばれるタイプの協働ロボットだ。完全に機械が品物を動かす「自動倉庫」ではなく、人が棚の間を動き回って必要な物品をピックアップする従来型の倉庫で、人と一緒に活動するタイプの移動ロボットである。ロボットがピックアップするべき品物を示し、ピッキング作業終了後には集荷場など所定の場所まで運ぶことで、ピックアップする人の移動範囲・歩行距離が少なくなる。
トヨタL&FカンパニーはSLAM移動するAGVのほか、「AiR-T (エアー・ティー)」というAMRを参考出展していた。自律移動のほか、人に追従する機能があり、ピッキング負荷を提言する。2019年のグッドデザイン賞を受賞したロボットだ。
株式会社シーネットIoTソリューションズは同社の見える化ソリューション、倉庫内マネージメントシステム(WMS)と連携するAMRをピッキングサポートロボットとして出展していた。データロガー、IoTシステムなどとも連携して倉庫内の効率化を狙う。ロボット自体はSyrius炬星の「FlexComet AMR」だ。このロボットは他にも三菱商事や三井不動産ブースでも出展されていた。
フィブ イントラロジスティクス株式会社は、AMRとベルトコンベアを組み合わせたような、自動仕分けロボット「GENI-Ant」(ジェニアント)を国内初出展した。宅配便や郵便、アパレルECなどで活躍するタイプのロボットで、ベルトコンベアがロボットの上についている「AMR型ソーター」だ。コンベア部分に荷物を載せると、ロボットは自動でルートを見つけて自動走行して運搬・移動、そして所定の場所でコンベアで荷物を移動させるというシステムだ。一台あたり80個から100個程度の荷物を仕分けることができるという。デバレタイズ(パレットからの荷下ろし)などのロボットと組み合わせて用いることが想定されている。
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ピースピッキングの自動化
小物をピックする、ピッキング自体の自動化も進められている。ファナック株式会社は「袋物ワーク搬送システム」や、「小物ワーク取出しシステム」を出展していた。「小物ワーク取出しシステム」は高速検出が可能な3次元ビジョンセンサーと吸着するロボットアームを組み合わせたバラ積みピッキングシステムで、吸い付けやすい面をビジョンで見つけることで、対象ワークの形や種類などを事前教示する必要がなく、新しいワークを追加しても問題なく使える。
また、アメリカのスタートアップRightHand Roboticsは、ロボットピースピッキングシステムのデモを提携先のオカムラのブースで行なっていた。RightHand Roboticsのロボットは3次元ビジョンと、クリッパーと吸引を組み合わせた独自のロボットハンドの組み合わせたシステムで、マスター登録することなく、任意の商品をピックアップすることができる。
面白いのはパレットの隅など、通常の方法では取れない場所に商品が残ってしまった場合、指でかき出すような動きをして、取れるようにしてからピックアップすることができるところ。同社のロボットは、日本国内でも、日用品卸最大手のPALTAC倉庫などで使われている。
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このほか、東芝インフラシステムズ株式会社は独自の2面把持機構でコンテナ内の荷物を把持して荷下ろしする「直交型バン・デバンニングロボット」を出展していた。上面と側面を同時に把持することで、最近増えてきたミシン目が入った飲料ダンボールなどでも、30kgまでなら扱えるという。またコンテナ隅までアームが届くので移動回数も抑制されており、作業速度も最大600ケース/hまで高速化しているとのこと。
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森山 和道フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!