パイオニア株式会社と総合自動車部品メーカーであるコンチネンタル(本社:ドイツ)は、今後車両への搭載増加が見込まれている「統合コックピット」の開発において、戦略的な提携を行うことに合意した。
この協業は、両社のインフォテインメント(インフォメーション+エンターテインメントの造語)に関する技術を組み合わせ、車室内における新しいユーザーエクスペリエンスを用いたインフォテインメントシステムを開発し、アジア市場を中心に提供していくことを目的としている。
コネクテッドカーを前提とした自動運転社会へのステップを見込んだ戦略とみられる。
▼【戦略的パートナーシップの主な内容】
・パイオニアは、マルチメディアやナビゲーションのアプリケーションを始めとする、インフォテインメントソリューションをコンチネンタルに提供
・コンチネンタルは、将来のコックピットにおいて新しいユーザーエクスペリエンスを提供するためのプラットフォームとして、コックピット・ハイパフォーマンス・コンピュータ(HPC)を採用
コックピット・ハイパフォーマンス・コンピュータとは
コックピット・ハイパフォーマンス・コンピュータ(HPC)とは、モジュールプラットフォームによる新しいユーザーエクスペリエンスの技術的基盤であり、同協業を通じて、パイオニアのインフォテインメントソリューションがコンチネンタルの車両向けコックピットHPCに統合される。
この統合により、車両アーキテクチャの統合のトレンドとコックピットにおける機能範囲の急速な拡大にともなうソフトウェアの複雑化へ対応でき、ドライバーや搭乗者へ最適な手法で幅広い情報を伝える統合コックピットの開発が可能となる。また、車両メーカーは、インフォテインメントの幅広いソフトウェアパッケージを活用したコックピットシステムを柔軟に開発できるようになる。
今後の展開について
今後、複数のスペシャリストパートナー間の戦略的な協業の強化が必要となる中、幅広い統合専門知識・ノウハウを持つコンチネンタルと、カーエンタテインメントにおけるインフォテインメントソリューションの知見を有するパイオニアによる同協業は、コックピットシステムの分野において、柔軟で包括的なコラボレーションモデルとなるだろう。
パイオニアのモビリティプロダクトカンパニーの責任者である髙島直人氏と、コンチネンタルのヒューマン・マシン・インターフェースビジネスユニット責任者であるフランク・ラーベ博士(Dr. Frank Rabe)は、それぞれ次のように述べている。
パイオニア モビリティプロダクトカンパニー 責任者 高島直人氏
コンチネンタルは集合計器と車両安全システムに関する優れた知見を持っており、当社は、OEMとアフターマーケットの両方で40年以上に渡るグローバルでのマーケティング経験を通じて得られたカーエンタテインメントの知見を持っています。両社の知見は、ますます高機能化が進む中、安全で直感的な操作が可能な次世代HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)の提供において欠かすことができません。両社は、究極のユーザーエクスペリエンスを提供することを目的として、互いの知見を持ち寄り、コンセプト実証を通じて新しいアイディアを生み出し、具現化する取り組みを始めています。
コンチネンタル ヒューマン・マシン・インターフェースビジネスユニット責任者 フランク・ラーベ博士
ユーザーエクスペリエンスは、車両の知覚領域の開発において、ますます重要な役割を果たしています。特に、操作の安全性、快適なデザイン、高機能性が最も重要です。当社のコックピットHPCは、さまざまなソースからのサブドメイン全体のシームレスな統合などを含む要件を完全に満たしています。パイオニアは、当社の完璧で最適な協業パートナーであると考えています。
特にアジア市場は自動車のデジタル化分野に高い関心があり、ダイナミックです。このたびの戦略的協業を通じて、双方にとって強みと知見を理想的に組み合わせることができると信じています。このプラットフォームは、ソフトウェアを柔軟に実装でき、コックピットHPCは協業を促進する技術的基盤となります。
コンチネンタルの柔軟なプラットフォームの優位性について
これまで車両のHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)は、基本的に2つのディスプレイに実装された、2つの独立した領域、すなわち「ドライバーへ情報を表示するメーターパネル」と「ドライバーと助手席用のセンタースタックディスプレイ」で構成されていた。
インフォテインメント関連は、センタースタックディスプレイに集中していたが、情報、サービス、機能の相互コネクティビティに対する高まりにより、この構造はもはや理想的ではなくなっている。
それに対し、コンチネンタルのコックピットHPCを搭載した統合コックピットは、車両内のすべてのディスプレイと操作要素を統合したユーザーインターフェースを実現を重視している。この統合コックピットでは、コンテンツを表示制限に関係なく表示でき、ユーザーが個別に配置することも可能で、予想される重大な場面毎に本当に必要な情報のみ優先して表示。これにより、ドライバーが受け取る情報が多すぎたり、気が散ったりすることがなくなるという。
一方、自動運転モードでは、すべてのサービスとアプリがドライバーへ提供される。継続的に更新または修正できる単一のハードウェア上で、操作システムと異系統な全てのシステムを分離する構造により、これらの快適性と安全性の向上が図られている。その実現のためには、ハードウェアに関係なく、単一の高性能コンピュータで多くのソースに付随するソフトウェアを提供する必要があり、同協業を通じて、両社は、コンチネンタルの高性能なプラットフォームを柔軟に活用することができる。