株式会社JTBおよび株式会社JTB総合研究所は「新型コロナウイルス感染拡大による、暮らしや心の変化および旅行再開に向けての意識調査(2020)」の調査結果を共同でまとめ、2020年5月28日に発表した。 同レポートは、両社の2つの調査に基づき、2月の新型コロナウイルス感染拡大から緊急事態宣言の発令、解除の見通しが立つまでの間の人々の意識や行動の変化、旅行意向を追ったものだ。
なお「AIやロボットより、人からサービスを受けたい」という意識は微減傾向にあり、対面を避けたいという意識が強くなっているようだ。
● 旅行意向は高いものの、旅行再開は慎重に。国内は夏休みと9月の連休時期、海外は秋以降に行きたい
● 旅行の再開には、新型コロナ自体の解決を待つ気持ちが強い。「治療薬やワクチンが完成し効果が出る(45.6%)」「全国の緊急事態宣言の解除(43.8%)」「WHOの終息宣言(33.9%)」
● 旅行の計画を阻む理由は感染症への不安以外に、「世間体が悪い」、「旅行先の情報が少ない」が増加
● 外出自粛で考え方が変化したと感じた1位は「対面や直接のコミュニケーションは大切だ(29.8%)」
● 自粛期間に多く利用されたサービスは「月額制の動画、漫画、書籍等の見放題・読み放題(53.3%)」や「デリバリーサービス(38.9%)」
調査結果の詳細について
2社の調査結果のうち、概要に準じた内容についての結果詳細は以下の通り。
自粛や制限が解除されたら何がしたい?
外出自粛や店舗の営業自粛が続いた状況下での、人々の暮らしや意識全般について、全国2万人の15才~79才の人(性年齢は人口構成比に合わせて抽出)に対し、外出自粛要請や渡航制限が解除され自由に外出や旅行ができるようになったら何をまずやりたいか、上位3つを選んでもらった。
その結果、「国内旅行(40.9%)」「外食(40.5%)」「友人知人に会う(39.1%)」の順でいずれも小差だった。これを過去1年間に1回以上、国内外の旅行を経験した人、しない人とで比較したところ、「国内旅行」は経験者が53.3%、未経験者は20.8%と大きな差がでた。全体的には、過去1年間の旅行経験者の方が、「旅行」「友人知人に会う」「離れている家族に会う(帰省含む)」「パーティーや飲み会など集まりに参加する」など、交流が期待できる「コト」への意向が高い傾向があり、過去1年間の旅行未経験者は、「デパートや店舗での買い物」や「特にない」が経験者より高い結果となった。
新型コロナの前後で、考え方が変化したことは
また、新型コロナ感染拡大の前後で、考え方が変化したと感じることは、「対面や直接のコミュニケーションは大切だ(29.8%)」が最も高く、若い年代の割合がより高い。「働く場所にはこだわらなくてよい(18.0%)」は、男性30代は27.9%、男性29才以下は26.5%となっており、「自分の考え方に変化はない(29.9%)」は、上の年代かつ男性の方が高く、男性60才以上で39.4%との結果がでた。
過去1年間の旅行経験者の旅行再開の考え方について(JTB調査)
前項までのアンケート対象者2万人のうち、過去1年間に国内外の旅行(出張は除き、帰省は含む)を1回以上経験した人を2,060人抽出し、今後の旅行について聞いた結果、旅行を再開するきっかけは、「治療薬やワクチンが完成し効果が出る(45.6%)」「全国の緊急事態宣言が解除になる(43.8%)」「周囲からとがめられなくなったら(26.8%)」「自治体が来訪自粛要請をやめたら(23.0%)」との回答であった。
解除後「すぐ行きたい」ところは
次に、外出自粛や渡航制限の解除後「すぐ行きたい」と考える旅行や外出とは何か、旅行の種別ごとに心境を聞くと、「すぐ行きたい」の割合が高いのは「知人訪問」「自然が多い」「帰省」「居住都道府県内の旅行」であり、「しばらく行きたくない」は「大都市圏への旅行」が55.5%、「海外旅行」は48.1%となった。
旅行に対する意識の変化と年内の旅行について(JTB総合研究所調査)
新型コロナの感染が広がり、緊急事態宣言が発令されてから解除の見通しが立つまでの約4か月間の旅行に対する意識の変化や2020年中の旅行意向の変化について、JTB総合研究所による2月から5月までの毎月の定点調査結果がある。
アンケート対象者6,500人前後のうち「2020 年中に国内・海外旅行のいずれか、または両方を予定・検討している」と回答した1,000人前後に、予定する旅行の具体的な内容などについて聞きた結果、国内旅行の時期については、2 月・3月調査では「4~5月(GWなど)」が最も高く(2月:35.5%、3月:34.4%)、4月調査は「7~8月(夏休みなど)(32.1%)」、5月調査では「9~10月(シルバーウィークなど)(34.4%)」が最も高くなった。新型コロナの影響が長引くことで、旅行の時期も夏以降に後ろ倒しになっていく様子がわかる。
同調査より、年内に旅行予定があるものの、まだ予約をしていない、あるいは予約した旅行の変更・キャンセルを検討している理由はをみると「新型コロナの不安がある」が際立って高い時間の経過とともに「世間体が悪い」「旅行先の正確な情報が足りない」が増加傾向にある。
消費者の意識や行動変容(JTB総合研究所調査)
気持ちや行動の変化について項目別に聞いたところ、3月から5月にかけて大きく増加したのは、「スマートフォンをみる時間が増えた(3月:28.0%→5月:35.3%)」「テレビを見る時間が増えた(同21.6%→同:33.3%)」「時間をもてあましている(同:9.9%→同:18.1%)」であったが、「時間が出来たので何か新しいことをはじめたい」は、3月から4月にかけて伸長したものの(3月:10.8%→4月14.2%)その後は伸びていない(5月:14.2%)。新しいことへのチャレンジに時間を使うより、自粛疲れからか漠然と時間を過ごしてしまう人も多い様子が伺える。
一方、「AIやロボットより、人からサービスを受けたい」は、3月から5月まで、微減傾向だ(3月:11.7%→4月:8.5%→5月:6.5%)。対面でサービスを受けることは感染リスクを伴うという意識が高まったと同時に、AI内蔵のチャットなど、デジタルツールを活用したサービスも高度になり、デジタルで済めば合理的でよいという意識が広がってきた背景があると考えられる。
今後の日常生活でも継続したいこと
今後の意向について、日常生活における様々な体験と、より具体的なサービスとに分けて聞いた(5月調査のみ)結果、今後の日常生活でも継続したいことは「キャッシュレス決済(83.8%)」「社会貢献をしている企業の商品やサービスを意識して選ぶ(82.3%)」「オンラインショッピング(82.2%)」「マスク着用、消毒など衛生管理(81.8%)」「3密回避・ソーシャルディスタンス確保(80.7%)」がいずれも僅差で8 割以上となった。キャッシュレス決済やオンラインショッピングは便利なうえに、感染防止にもなることが改めて評価されたと考えられる。
他と比べて継続意向が低かったことは「自宅から離れた場所にも住まいや仕事場を持つこと(63.0%)」「オンラインでの集まり(飲み会、会合など)(64.3%)」でしたが、それでも半数以上が継続したいという結果となった。
外出自粛生活中に話題となったサービスとその利用率
外出自粛生活の中で話題となった具体的なサービスやしくみの利用率をみると「月額制の動画、漫画、書籍等の見放題・読み放題(53.3%)」や「デリバリーサービス(38.9%)」が上位になり、その中で継続利用が高かったのは「動画や書籍の見放題・読み放題(75.2%)」や「通販の定期便(69.1%)」など、サブスクリプションモデルであった。
その一方で、これまで利用したことはないが今後利用してみたいとの回答には「ちょっと贅沢なお取り寄せ(56.5%)」「宿泊施設や飲食店などの前売り券を購入(52.9%)」などが多く挙げられた。
なお、上記調査内容は抜粋となり、調査の詳細については下記サイトにて確認できる。
https://press.jtbcorp.jp/jp/2020/05/2020-4.html
▼ 調査概要
実施期間 | JTB調査・4月27~29日、JTB総合研究所調査・2月21日~5月16日 |
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調査方法 | JTB調査、JTB総合研究所の定点調査 |