【着るロボットの未来像】パワードウェアは技能やスキルを「ダウンロードして着るもの」に 仮説をSci-Fiとして表現 ATOUNが発表

ATOUNは2030年以降の未来、生来の身体的能力を自由に拡張して動きまわれる「フリーアビリティ社会」を目指している。「フリーアビリティ社会」とは性差・年齢差・個体差が人の活躍の障壁とならない真にフラットな社会の未来像。

これまで株式会社ATOUN(アトウン)、身体に装着することで「力作業」を支援する着るロボット、パワードウェアを提供してきた。これは、性別・年齢にともなう「力差」から生まれる不平等や制約の解消につながる。今後、同社は次にソフト面のアシストにも取り組んでいくという、これからのビジョンを発表した。

株式会社ATOUNの代表取締役社長 藤本弘道氏

ATOUNは、世界的なクリエイティブ集団「PARTY」の協力のもと、Sci-Fi(サイファイ)プロトタイピングという手法を生かして、実現すべき「パワードウェアのある10年後のライフスタイル」を描き、そこに到る道筋を示した「ATOUN Vision 2030」を策定したことを発表した。「ATOUN Vision 2030」では、この先の「ロボットと人間の関係」をさらに具体的に描きだし、ビジョンとして提起している。

「Sci-Fiプロトタイピング」とは、、、
未来に対する仮説をサイエンスフィクション(Sci-Fi)として表現し、そこからバックキャスティングによって、プロダクトのいまあるべき姿を描きだす手法。未来を予測するのではなく、未来から逆算していまをつくることで、非連続性の高い発想が可能となり、イノベーションが起こしやすくなるという。
ATOUNは創業当初から、スタッフ同士もしくはSF作家などを交えつつこの手法を進めてきた。今回、PARTYの協力でそれを体系化。今後はメソッドとして意識的に活用し、事業を加速させていくとしている。


ソフト面のアシストで「技能の引用」が可能になる

ソフト面のアシストとはパワードウェアを通じて、動作を読み取って技能をデータ化し、他人でも再現できるようにすることで、シンプルなものであれば日常での“技能の引用”が可能。また、高度なものでも直接体験をともなうことから技能の習得が容易になる。



例えば、一流の職人の技やトップアスリートの走法などをデータとしてダウンロードし、パワードウェアによって動きを再現するだけでなく、体験を通じて身につけていく。そして時空をも超えてすぐれた技能を社会の財産とし、人びとがさらに自由に動きまわれる世界をめざす。

「フリーアビリティ社会」イメージストーリー episode1「REFREST MYSELF」
私はバレリーナです。今年で50歳。ここ数年怪我の治りが悪くなって何度も引退を考えました。
英国一のプリマが現役を去る。それをカンパニーは喜ばない。もちろん観客も。
けれどみんなはいつだって理想的な私を期待している。それがジレンマで引退公演をを行う勇気すらありません。
そんな時、この透明で美しいパワードウェアと出会いました。

今私は足首を痛めてます。背中とそして首も。けれどこれを着ると「魔法」がかかる。
私の過去の動きを記録しアクティビティデータが体の不調を察し、必要なタイミングで不足した筋力だけをサポートしてくれる。
しかも能動的な動きを邪魔したりは一切しない。

操り人形にならず、こうだ、こっちだと思うままに全力で踊りきることができる。
バレエ本来の「喜び」が少しも失われない。
過去の私と現在の私が溶けて、混ざり合って一つになれるのです。

そのために必要なのが「中動態」の実現だとする。中動態とは自力で動く「能動」であり、かつ他力で動かされる「受動」でもあるという「能受」が融合した状態のこと。ATOUNはこれこそがロボットと人間の究極の関係性だと考える。(例、ロボットによって無意識のレベルでサポートを受けながら、人間が主体的に仕事やスポーツ、趣味などを楽しむことができる。)


加えて、フリーアビリティ社会づくりに欠かせないのが「パワードウェアのIoT化」だという。人の技能を記録した「アクティビティデータ」を共有して、さまざまなシーンに応じて必要なデータをダウンロードし、誰もが自在にパワードウェアを活用するには、クラウドとの連携が不可欠。




ATOUNはこれまでアクティビティデータの収集・活用に不可欠な「身体のさまざまな部位へのサポート」を視野に、腰用パワードウェア「ATOUN MODEL Y」に加えて、オプションとして追加できる腕用の「kote」や歩行支援用の「HIMICO」を開発。「クラウドによる連携」を見据えて、遠隔でデータを精査し、コントロールできるシステムを構築とさまざまな取り組みを行っている。


人とロボットのあうんの関係を追い求めてきた「ATOUN」

AIが注目され、さまざまなテクノロジーが私たちの生活のなかに本格的に取り入れられはじめた昨今、社会では「ロボットと人間」「テクノロジーと人間」のあり方が問われている。ATOUNは創業以来、その手がかりが「あうんの呼吸」にあるとしてパワードウェアの開発に取り組み、ロボットと人間の理想的な関係を追い求めてきた。


「ATOUN Vision 2030」

「ロボットを着て、人間がもっと自由に動きまわれる世界をつくる──」。ATOUNは、今後も旗印を変えることなく、「もっと自由」を追求し、人間の未知なる可能性をひらくために努力していくとしている。

関連サイト
ATOUN

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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