ボッシュは、2020年6月8日、2020年 ボッシュ・グループ年次記者会見をオンライン方式にて行った。
同会見によると、2019年度の日本国内における第三者連結売上高は、前年比1%増の約3,300億円(約27億ユーロ)。2019年は世界の自家用車および商用車の総生産台数が前年比5.5%減の9,210万台と、グローバルの自動車市場が縮小して厳しい環境となったが、同社は日本において堅調な業績を維持したといえる。
また、今後の展開として、自動化・電動化・ネットワーク化ソリューションの推進や、世界有数のAIを駆使したIoT企業への成長を目指すことを発表。製造業、ロジスティクス、スマートホーム、農業に至るまでの多岐にわたる分野において革新的なプロジェクトを推進し、デジタルサービスにおける新たなビジネスチャンスを切り開いていくとのことだ。ボッシュは自身が持つセンシング技術を活用したスマート農業やスマートホーム向けIoT製品も多数ラインアップしている。
なお、2020年度の業績見通しに関しては、自動車市場にとって厳しい1年となること、また状況が大変流動的であることから、公表を控えた。
ボッシュ株式会社 代表取締役社長 クラウス・メーダー氏
現在の厳しい状況下においても、我々は日本のお客様、日本市場そして長期的な可能性への取り組みに注力します。今後もより良い社会と環境のために、様々なイノベーションを提供してまいります。
▶ 新型コロナウイルスの影響により本年度の業績見通しの公表は控える
▶ 自動化、電動化、ネットワーク化ソリューションを推進
▶ 世界有数のAIを駆使したIoT企業への成長を目指す
会見内容:事業別の業績推移
事業別での売上高では、日本の主力ビジネスであるモビリティ ソリューションズ事業が前年比約1.5%増だった。主に、横滑り防止装置(ESC)や先進安全運転支援分野を含むセーフティシステム向け製品、インフォテインメント製品などの取引拡大が売上に貢献している。また、産業機器テクノロジーは前年比同レベルに届かなかったものの、消費財およびエネルギー・ビルディングテクノロジーは前年比同レベルを維持した。
全世界における日系自動車メーカー向け売上が10.2%増加
日系自動車メーカーは、世界で生産される自動車の約30%を担っており、自動車市場において重要な役割を果たしている。
世界60か国に広がるボッシュのネットワークを生かし、国内外で日系企業が販売する車両の開発と生産をサポート。2019年は日系自動車メーカーの世界自動車生産台数が前年比でやや減少したなか、ボッシュの全世界における日系自動車メーカーへの売上は前年比10.2%増と、取引を拡大した。なお、この数値には、二輪車メーカーや農建機メーカー、ティアサプライヤーに対する売上を含んでいる。
自動化:側方レーダーを使った運転支援システム
交通事故を限りなくゼロに近づけることを目的として自動化を進めている同社の試算によると、現在ドイツ国内の交差点で起きている、乗員のけがを伴う乗用車による交通事故の最大41%が、側方レーダーを使った衝突被害軽減ブレーキと発進防止機能により防ぐ、もしくは被害を軽減できる可能性があることが分かった。(同数値は、両へのシステム搭載が浸透していると仮定した場合の数値(搭載率100%)より算出。)
同社では、新世代の側方レーダーの量産を2020年に開始予定であり、2019年、ADAS部門の売上高が昨年比12%増の約20億ユーロに達するなど、自動化分野におけるマーケットリーダーとなっている。また、二輪車向けのレーダー(前方・後方)を用いた安全運転支援システム「アドバンスト ライダー アシスタンス システム(ARAS)」も、2020年の量産開始に向けて開発を進めている。その一環として、2019年3月に東京都、神奈川県、栃木県の高速道路で開始した公道試験を2020年には埼玉県まで拡大し、複雑な日本の道路環境により正確に対応したシステム開発を進めている。
電動化:電動化ソリューションを搭載したローリングシャシーの提案を開始
地球の気候変動や都市の大気環境に配慮した持続可能なモビリティの提供に向け、高効率の内燃機関からeモビリティ、燃料電池に至るまでの様々なパワートレインの開発を進めている。日系自動車メーカー向けにも同社の48Vマイルドハイブリッドのコンポーネントの量産を開始し、2020年春に欧州で販売が開始されたモデルに搭載されてる。また近年、電気自動車を活用した新たなモビリティサービスの提供に取り組む新規プレイヤーの参入が相次いでいることから、電動パワートレイン、電動ブレーキシステムや電動ステアリングなどを搭載した、電気自動車向けプラットフォーム「ローリングシャシー」の提案も国内外で開始した。
ネットワーク化:コネクテッド モビリティ ソリューションズ事業部を設立
日本では2020年1月、コネクテッド モビリティ ソリューションズ事業部を設立し、インターネットを介して新しいソフトウェア・ファームウェアを配布・アップデートする仕組みを車両にも適用する「OTA(Over the Air)」をはじめとした、ネットワーク化関連ソリューションの包括的な提供を開始している。
また、駐車場のネットワーク化も進めており、2020年2月には、株式会社ミライト、Kerlink社およびSynox社と連携し、駐車可能なスペースを通信経由で通知するパーキングロットセンサー(PLS)の提案を開始しました。PLSによりドライバーはオンラインで駐車スペースの空き状況を確認できるようになり、ドライバーの駐車スペース探しにかかる負担、駐車場を探す間に排出されるCO2を削減し、環境保全に寄与します。また、PLSは特殊な接着剤で地面に装着するだけで設置でき、駐車場管理者にかかる駐車場構築およびメンテナンス費用の軽減にも貢献する。
世界有数のAIを駆使したIoT企業に成長
2025年までにボッシュのすべての製品に人工知能(AI)を搭載、または開発もしくは製造段階でAIを活用することと同時に、世界有数のAIを駆使したIoT企業に成長することを目指し、モビリティのみならず、製造業やロジスティクス、スマートホーム、農業に至るまでの多岐にわたる分野において革新的なプロジェクトを推進し、デジタルサービスにおける新たなビジネスチャンスを切り開いていくとしている。
2020年1月には、IoTを中核とした活動を推進するBosch.IOを設立し、約900名の従業員がボッシュの擁する約3万人のソフトウェアエンジニアおよびAIエキスパートと共同でプロジェクトを展開。日本においてBosch.IOは事業部としてビジネスを展開し、AIを活用したスマート農業ソリューション「Plantect」をソリューションの一つとして提供している。
同グループ、2020年の展望と長期的な戦略の方向性
コロナウイルスのパンデミックを考慮し、今年度は世界経済にとって大きな挑戦の年になると予測。ボッシュ・グループの取締役は、ドイツにて実施した年次報告記者会見において、少なくともバランスの取れた結果を得るために最大限の努力をしなければならないと発表。2020年の世界的なクライメートアクション(気候変動対策)の目標を達成し、世界の400拠点すべてをカーボンニュートラル(炭素中立)にする予定だ。加えて、バリューチェーンに沿った上流と下流の活動を可能な限りクライメートニュートラル(気候中立)なものにするという目標を設定しており、2030年までに、自社排出量以外の関連内容から出る温室効果ガスの排出量(スコープ3)は15%減るとの予測となっている。さらに、新しいアドバイザリー会社「ボッシュ・クライメートソリューションズ」に、1,000を超えるエネルギー効率プロジェクトからの経験を結集させることを計画している。
これらの流れを受け、「水素」は自動車産業においてもビルディングテクノロジーにおいても、ますます重要となってきている。そのため同社は、パートナーとともに自動車向け燃料電池と定置用燃料電池の両方に取り組んでおり、デナー氏によれば「重要なのは持続可能なモビリティに向けて電気自動車向けソリューションの開発を進めるだけでなく、効率的な内燃機関、特に再生可能な合成燃料や燃料電池を考慮に入れる、幅広い技術開発の姿勢」とのことだ。
ロバート・ボッシュGmbH 取締役会会長 フォルクマル・デナー氏
現在は他の問題が注目されていますが、私たちは地球の未来を見失ってはならないのです。
2020年3月に発表した新型コロナウイルス感染症(Covid-19)向け迅速検査システムやVivalytic分析装置などを通じて、パンデミックの食い止めに可能な限り貢献したいと考えており、検査結果が出るまでに要する時間を、現在の2時間半から45分以下にまで短縮させる計画も進めている。今後は2020年に100万台を超える迅速検査システムを生産し、翌年には300万台まで増やす予定だ。
ボッシュ・グループ(日本)