ZMPが物流支援ロボットCarriRo 最新の自律移動機能「Hybrid SLAM」のデモを公開 3つの自動運転方式のしくみと違い

株式会社ZMPは、物流支援ロボット「CarriRo」(キャリロ)の新機能として「Hybrid SLAM」を搭載したことを発表、開催中の「ZMP World 2020」でデモを公開した。

メディア発表会に登壇した株式会社ZMP CarriRo事業部長 笠置 泰孝氏

「CarriRo」は物流倉庫や工場などに導入されている自律移動が可能な台車(AGV)。「CarriRo」シリーズは手押し台車を支援するものとして、追従型、自律移動型に進化してきた。既に200社以上に導入されている。


「CarriRo」シリーズのAGVは左から手押し台車型で自動追従(カルガモ)方式、手押し台車型の自律走行、パレットに潜り込んで搬送する自律走行型に進化してきた


自律走行を実現する3つの方式


Visual Tracking(ランドマーク)方式

「CarriRo」は倉庫内の指示した地点まで、荷物を自動で輸送することができる。従来のAGVの多くは導入する際に倉庫や工場など、設備の変更が必要だったが、「CarriRo」はランドマークと呼ばれるシールを床面に貼付け、印刷されている二次元コード上の走行指示情報を認識することで自律走行を実現する「Visual Tracking」という方式を採用。

物流支援ロボット「CarriRo(キャリロ)」とランドマーク・シール

Visual Trackingは、簡単にいうと、ランドマーク地点のシールを読むと次のランドマークまでの道順が書かれていて、それに沿って順次移動していく方式だ。そのため、床にシールを貼るだけで稼働させることができ、従来より倉庫や工場の設備を大きく変更することなく導入できて、ルートの変更も簡単に行うことができる。

■物流支援ロボット『CarriRo(キャリロ)』 導入事例 ~LIXILビバ~

しかし、Visual Tracking(ランドマーク)方式にも欠点(課題)がある。それは自律的に障害物を避けるような機能がないため、AGVやフォークリフトが混雑している場所では安全に走行するためのそれぞれの走路を確保しなければならない。また、そのような場所では床に貼ったシールが剥がれたり破損したりしてしまう可能性も高い。アスファルト面など、シールを貼るのに適さない場所もある。


ライントレース方式

一般には、シンプルで確実性の高い方式としてライントレースが知られている。走行ラインをあらかじめ決めておき、ラインに沿ってAGVが走行する方式だ。確実な反面、コースの変更時はラインを引き直さないといけない等、柔軟性には欠ける。


SLAM方式

もうひとつがSLAM(スラム)方式だ。自動運転車や自律ロボット、ドローンなどに利用されている方式で、決められたコースではなく、比較的自由にシステムが安全を判断しながら走行する方式だ。シールを貼ったり、LINEを引くことができない屋外でも活用されている。ZMPは自動運転車の開発を行っているため、この技術はもともと研究・開発をこれまで十分に行ってきている。そのノウハウをAGVにも投入した。

3つの方式にはそれぞれ得意(適正)と不得手(不適正)のシーンがある。ただ、すべてに対応し、使い分けたり混合して活用すれば対応の幅が拡がる、これがハイブリッドの利点だ

そして今回、「Hybrid SLAM」という新しい自律走行の方式を確立し、同製品に機能追加することになった。SLAMでは90cmといった狭い幅の通路も走行できる。

現場においては、フォークリフトが頻繁に行き交う場所や、アスファルト(屋外)など特殊な路面環境などがあり、中にはランドマークの設置すら困難なケースがある。また極端に狭い通路や高精度での位置決めが求められるケースもあり、それらの環境においては、新しい「Hybrid SLAM」方式が有効だとしている。Hybridの意味は、従来の「Visual Tracking」(ランドマーク)、ライントレース、SLAMを組み合わせていることを意味する。

ハイブリッドを活用したユースケースの例。ピンクの通路など狭いところはSLAMで走行、青の組み立てラインなど正確性が必要な場所はライントレース、緑の長距離走行は従来のランドマーク式で一気に走り、半屋外のアスファルト路面はSLAM、といったように、重視するポイントや路面に合わせて3つの方式を使い分ける

この機能の搭載により、工場や倉庫などの屋内環境において、環境上の制約を受けずにあらゆる搬送シーンで活用が可能となる、とした。

「ZMP World 2020」で公開された「Hybrid SLAM」のデモ
■ZMP unveiled a new autonomous driving feature, “Hybrid SLAM”


物流応援キャンペーン、「Hybrid SLAM」機能を1/6の価格で

この「Hybrid SLAM」はオプション機能として追加され、価格は買取の場合で60万円(本体とは別)。ただし、2020年12月までは「物流応援キャンペーン」として特別価格10万円で販売される。すべての機能が供給されるのは2021年3月を予定している。



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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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