物流向け知能化ロボットアームコントローラーの「MUJIN」が大和ハウス系物流センター向けシステム開発の「フレームワークス」と業務提携

大和ハウスグループの株式会社フレームワークスと株式会社MUJIN(以下MUJIN)が産業用ロボットを用いた倉庫自動化ソリューション事業の協業を目的として業務提携契約を締結したことを発表した。
フレームワークスは物流センター向けの様々なシステムを開発し、ロボットの運用に深い知見を持つ。また、MUJINは柔軟性の高いハンドリングを行う物流用アームロボット向け制御ソフトウェア等を開発していることで知られている。

今回の提携を受けて、フレームワークスは、MUJINが企画・販売を推進する小売業向け「知能パレタイズ(積み付け)ロボット+AGV自動化ソリューションパッケージ」に組み込まれる倉庫制御システム(WCS : WarehouseControlSystem)部をOEM供給するという。
※「Warehouse Control System(倉庫制御システム)」。倉庫内設備を制御することに特化したITシステムで、搬送、保管などに関わるマテハン(マテリアルハンドリング)機器やIoT機器をリアルタイムに遠隔制御し、最適なスケジュールでの入出庫を可能にする。

なお、今回の提携の内容については、2020年9月3日に配信される大和ハウス工業株式会社主催のWebセミナーでも紹介されるので興味のある読者は申込みをしてみると良いだろう。(この記事の下部)


知能パレタイズ+AGV自動化ソリューションパッケージとは


これまでに何度かロボスタで取り上げてきたように、MUJINは産業用ロボット向けに3Dビジョンや高度なモーションプランニングAI技術を応用して非常に柔軟なパレタイズを行うソリューションをさまざま提供してきた。異なるロボットや環境、積み荷の状態などでもその時時で最適なパレタイズを行うことで人力での作業を大きく削減している。また、それに加えて、最大800kgの荷物を運搬でき、最大500台の軍制御も可能な自動搬送車(AGV)を使ったソリューションも開発している。
この2つの技術と、フレームワークスのWCSを組み合わせることで次のような流れで庫内から出荷するシステムを構築したのが今回のパッケージだ。

①出荷のオーダーデータから、最適な積付けパターンを出荷什器(パレット・かご車・カートラック)単位に生成する。
トラックや、生産現場などに移送する際の出荷什器は、それぞれの現場で必要とされている物資が混載されることになるが、その際に最適な什器や積み方を選択できないと無駄なスペースが生まれたり、荷崩れなどの危険なども発生するため、この時点での積付けパターンが作業効率や安全性を大きく左右する。

左からカートラック、パレット、かご車。積載する商材や荷姿、輸送手段によって最適な出荷什器が変わるため、それぞれに対応できる必要性がある。

②AGVによる保管エリアからの出荷ケースが載ったパレットを搬送
物流センター内保管エリアの棚やパレットなどに集積されている物資をAGVでパレタイズするエリアまで搬送する。
AGVの最適な動きを群制御するソリューションが必要になる。

800kgまで輸送可能なMUJINのAGV(左)。保管エリアのパレットはAGVが潜り込めるように下部にスペースを設けてある。

③知能ロボットによるケースのパレット・かご車・カートラックへの積み付け
MUJINのデモでおなじみの光景であるパレタイズ工程。異種物資が混載されたパレタイズでもティーチング工数が大幅に削減されているのが特徴。
従来は人手で行う必要があった異種混載の工数が大きく削減される。

MUJINのデモでおなじみのティーチングレスでのパレタイズ

これらに加えて
・積み付け完了後の自動排出
・空荷のパレット・かご車・カートラックの自動セット
などもオプションとして組み込むことができる。



導入時や設備追加時にも柔軟さが光るフレームワークスの倉庫制御システム

では、この中の工程でフレームワークスの技術はどのように活きているのだろうか。
フレームワークスはこのシステムの中でWCS(倉庫制御システム:Warehouse Control System)部を担っている。
WCSは倉庫内設備、コンベアや自動搬送機器、ロボットアームなどをリアルタイムで監視し、指示を出すことで、最適なスケジュールでの入出庫を可能にするシステムを指す。

フレームワークスが提供するWCSは、“Connected Warehouse”と呼ばれる次世代ロジスティクスプラットフォームをベースに開発されているのが特徴だ。
Connected Warehouseは物流におけるモノ(マテリアル)に焦点をあて、その状態とそれに応じたタスク(作業)を整理することで機能実装していく業界初のソリューションだ。従来の作業を前提に機能を作りこむソフトウェアと比較し、自動化設備導入時の流れをシンプルに構築でき、新規のロボット、設備などの追加導入、ライン数の変更などに伴う業務プロセスの変更が容易に実現できるのだという。

Connected Warehouseのソリューションイメージ。出入庫なども管理するWMS(WarehouseManagementSystem)もWCSを一部内包する形で存在する概念のようだ。

今春より続く新型コロナウイルスの感染拡大に伴う構造的な物流の変化により、物流センターには大きな変化が求められている。
物流センター内で動く商品のSKU(最小管理単位)や個数に大きな変動が発生し、一部の物流センターでは、深刻な人手不足と急変・急増した業務により、センター運用がままならない状況に陥っているためだ。

そういった場面で、急務となっているロボットやAGVの導入場面で、既存のマテハン機器を活かし切り、スムーズなスタートをきるためにも、柔軟性の高いフレームワークスのWCSが必要となってくるのだろう。




withコロナ、Postコロナでの物流センターではロボット、AGVが標準に?

物流センター内の工程の多くは未だ人手によるオペレーションによって支えられており、労働人口の減少・人手不足の深刻化が進んでいく中で、以前より省人化・自動化のニーズが叫ばれていた。
しかし、そういった「緩やかな需要増加」にくらべて遥かに急峻な変化だったのが今春からのコロナ対策だ。
巣籠ごもり需要によるeコマースの急拡大、生活必需品への需要急増は物流に大きな混乱を起こした。
物流需要の大変動へのキャッチアップできる体制の構築や、商品からの感染や仕事環境での感染を恐れる心理は、単なる人手不足の解消という面以外でも物流現場へのロボット、AGVの導入に拍車をかけるだろう。
そういった環境の変化に対応できるソリューションとして、ティーチング工数の少ないMUJINのロボットコントローラーや、フレームワークスのConnected Warehouseがどのように物流の現場に浸透していくのか、情報があり次第お伝えしてきたい。

Webセミナー情報
「2020物流ロボット最新事例とマルチテナント型物流センターにおけるこれからの自動化戦略」
開催日:2020年9月3日(木)16:00~17:00
講師:
大和ハウス工業株式会社 取締役常務執行役員建築事業担当 浦川竜哉氏
株式会社フレームワークス 代表取締役社長CEO 秋葉淳一氏
株式会社MUJIN 最高経営責任者(CEO) 兼 共同創業者 滝野一征氏
申込みサイト:https://www.daiwahouse.co.jp/business/seminar/200903.html
申込み締め切り:2020年9月1日(火)

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梅田 正人

大手電機メーカーで生産技術系エンジニアとして勤務後、メディアアーティストのもとでアシスタントワークを続け、プロダクトデザイナーとして独立。その後、アビダルマ株式会社にてデザイナー、コミュニティマネージャー、コンサルタントとして勤務。 ソフトバンクロボティクスでのPepper事業立ち上げ時からコミュニティマネジメント業務のサポートに携わる。今後は活動の範囲をIoT分野にも広げていくにあたりロボットスタートの業務にも合流する。

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