バイオジェン・ジャパンは、8月29日に「OriHime スポーツ大会・バイオジェン杯」を開催した。2020年の「SMA Month」(啓発月間)の一環として行なわれたもので、脊髄性筋萎縮症(Spinal Muscular Atrophy/SMA)当事者の人たちがリモートで参加し、分身ロボット「OriHime」を操作して、チームプレーで楽しめる「オリィ迷宮からの脱出」ゲームで競い合った。ゲームの様子は、プロのMCが実況してライブ中継でYouTube配信された。
SMAとは遺伝性の神経筋疾患
SMAは、運動のために使用する筋力をコントロールする神経に影響が及ぶ遺伝性の神経筋疾患で、重症度や症状はケースによって異なるが、日常生活での支障はもとより就労の妨げになってしまう患者も多くいる、という。
一般的に、重症度が高いI型からIV型までタイプが分かれ、今回はII型の方の参加が中心となる。II型の方は歩くことができないが、手を動かして操作することができる。この日は、I型に近い重症度の方、III型の方も一人ずつ競技に参加した。
スポーツをする経験はない方がほとんどだが、今回は走れるOriHimeを使ってリモートでスポーツを体験。また3人1チームで行うことでチームプレーをするという経験をしたが、10万人にひとりという希少疾患のため、SMAの方々が12名も集まる大会自体が希少なものとなった。
バイオジェンでは、SMAについての認知向上・理解促進を目的に、毎年8月にSMA患者と、その周囲の方々を応援する啓発活動「SMA Month」を実施している。このイベントはその一環で実施するフィナーレのプログラムとして、SMA当事者に OriHimeで体験するスポーツ大会を初めて企画した。
同社は「SMA当事者の皆さんは走ったり、チームで何かを行う経験がない方が多いため、本イベントが、参加する皆さんに新たな経験を提供できることを願っています。OriHimeパイロット経験者が4名、初めてパイロットとして参加する方が8名の計12名のSMA当事者の方々がチームを組んで、迷路を脱出するスポーツ(ゲーム)です。是非、ご視聴、応援いただきますようお願いいたします」とコメントした。
走れるOriHimeを起用
「OriHime」は通常、据え置き型の分身ロボットと知られている。企業でテレワークに活用されたり、モスバーガーの店員を務めたり、障がい者や外出できない人の就労支援などにも活躍している。
今回はスポーツ大会、迷宮からの脱出ということで、OriHimeにカート状のモビリティ「OriHimeカート」(三輪がついたのカート型のユニット)を搭載した。
操作はパソコンやタブレットを通じて、OriHimeの操作アプリから前・後・回転の動きが操作できる。
チームワークでオリィ迷宮を駆け抜けろ
オリィ迷宮は「OriHimeカートを使って、何か遠隔でも楽しめるゲームができないか」と考案されたプレイフィールド。
今回のゲーム(競技)では、3名が1チームとなり、捕まった1名を迷宮の中を移動して探索。同じく迷宮内に落ちているアイテム「牢の鍵」をみつけ、捉えられた仲間を探し出して休出する。迷宮の壁はOriHimeの目線より高いので、自分が移動している位置を正確に把握することが大切だ。
3人揃ってスタート地点に戻ればステージ1のクリアとなるが、その際にサッカーボールを押してゴールできれば高得点となる。
ステージ2は多脚型ロボットのモンスターが登場する。5分間の夜ステージから始まり、モンスターの脅威が迫る。チームメンバーは迷宮内にあるアイテム「剣」をゲットすればモンスターを倒すことができる。
また、アイテム「ドローン」をゲットすると1度だけ、迷宮の空に上がって全体を俯瞰することができる。
各チーム、アイテムとチームワークを駆使して迷宮のどこかにあるゴールを目指した。
参加したプレイヤーの方は、モスバーガーで「OriHime」で接客している人、サッカー経験者、ドラクエが大好きという人など様々。「みんなでコミュニケーションしながらプレイできるのが楽しかった」「自分がどの位置にいるのかを把握するのが難しかった」などの感想が聞かれた。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。