ウシオ電機は、人体に影響がない紫外線による空間殺菌技術を搭載した「Care222 U3ユニット」(Care222)の販売を開始することを発表した。また、この技術を活用した共同開発を業務提携パートナーの東芝ライテックと行っていく。新製品と提携の発表会を、2020年8月26日に実施し、発表会の様子をオンラインにてライブ配信した。
発表会会場には、今回発売開始となる「Care222」を実際に設置し、メディア関係者が体験した他、「Care222」の照射エリアをわかりやすく表した展示が用意された。「Care222」の照射エリアは、1 台あたり 1.5mの高さから照射した場合は約5平米、2.5mの高さからの場合は約13平米で、それぞれ約2.4分、約6.7分間照射し続けると、約99%のウイルスが不活化されるという。(※「殺菌」という言葉は最近に対しての用語であり、厳密にはウイルスに対しては不活化が正しい表現となる)<
新型コロナウイルスの不活効果、実用化に期待
ウシオ電機が開発した、紫外線空間殺菌技術を搭載した「Care222」の最大の特徴は、人体に影響がない紫外線を使っているということ。
新型コロナウイルス感染拡大が進む中、注目を集めているのが紫外線によってウイルスの不活化技術だが、これまで使用されてきた紫外線は人体にも有害なものだった。そのため、誰もいない環境下で、遠隔ロボットなどを使用して殺菌や不活化作業を行う必要があった。
今回、ウシオ電機が開発した「Care222」は米・コロンビア大学と独占実施契約を締結し、世界で唯一、ウイルスを不活化できる紫外線光源で人体には無害なもの。高い殺菌力を持つ222nmの紫外線(UV-C)をピークに持つエキシマランプに、独自技術を用いた特殊フィルタを組み合わせることで、人体に危険な230nm以上の波長をカット。人の皮膚や目に障害を起こさない200~230nm紫外線のみを環境に合わせて任意照射することで、学校やオフィス、商業施設といった生活や経済活動を止めることなく、有人環境下でのウイルス抑制・除菌を可能とした。
8月から国内医療機関を優先してCare222の提供・設置を進めているが、今後は学校やオフィス、商業施設などに向けて提供を開始し、不特定多数が利用する公共交通機関や施設での殺菌効果を実験しながら、感染リスクの低減に貢献する。
紫外線殺菌の問い合わせは半年で2000件超
発表会では、ウシオ電機 代表取締役社長 内藤宏治氏が、現在世界的に猛威を振るうコロナウイルスの現状、そして紫外線殺菌並びに今回の Care222 の特徴について説明した。
ウシオ電機の事業分野のうち、3つ目の柱である「ライフサイエンス」について、今回の新型コロナウイルスによる健康被害、経済的損失の影響の甚大さから、今後、本分野により一層注力し、ウシオ電機のミッションである「あかり・エネルギーとしての光の利用を進め、人々の幸せと社会の発展を支える」の名のもとに、解決に尽力したいと述べた。
現在世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスについて、ワクチン開発や検査体制の強化は進められている一方、感染予防という観点での決定打がない状況の中、紫外線殺菌についての可能性について言及。以前より取り扱っていた紫外線殺菌についての問い合わせ件数は年間100件程度だったが、今年3月の本製品開発発表以降、半年で2,000件を超える問合わせを受けた。
従来の紫外線殺菌の弱点である「有人下で使用できない」点を解決した今回の「Care222」製品は、既存の殺菌方法とは異なる、まったく新しい不活化・殺菌技術。「これまでの殺菌技術や紫外線に対するイメージを払拭し、『Care222』を通して、with コロナ時代に対応する、『安心・安全』な空間や環境の実現に貢献していきたい」と語った。
日本環境感染学会からコメント
また、発表会では、日本環境感染学会副理事 松本哲哉教授がビデオレターで出演。昨今の新型コロナウイルスの現状、紫外線そして製品「Care222」について、以下のようにコメントした、
日本環境感染学会副理事 松本哲哉教授
UV(紫外線)による環境の消毒に興味を持っており、 (コロンビア大学の)デビット・ブレナー教授が発信した技術をどうにか実用化できないかと考えていたところ、ウシオ電機と面談する機会を得、既に製品化されていると知った。試作品を借り、細菌を対象として実際に検証を行ってみたところ、非常に顕著な結果を得ることができた。その後、本製品の製品化についてアドバイスを行っていたが、新型コロナウイルスの発生と感染拡大に伴い、ぜひこの製品を新型コロナウイルスを対象として開発することが重要であるという、という共通の認識を持った。現在新型コロナウイルスは世界に深刻な状況をもたらしている。未だワクチンや特効薬がない現在の状況において、感染拡大を阻止することが非常に重要な意味を持つ。その手段の1つとして、環境のウイルスを消毒するということは非常に重要なポイントであるが、今回ウシオ電機が開発した Care222 は、ウイルスや細菌への消毒効果だけでなく、人への安全性も確保されていることが最大の特徴である。すなわち、人がいる環境においても消毒を同時にできるという点において、画期的な製品であると思う。今後この製品が、医療現場だけでなく、様々な場で活用され、新型コロナウイルスを含めた感染対策の有用な手段となることを願っている
電車やバス等の公共交通機関からドローンまで
共同開発社で業務提携パートナーである東芝ライテックは、平岡社長が具体的な製品展開について言及、製品の販売開始と共に、産業用光源や一般照明器具および舞台・スタジオ照明を手掛ける東芝ライテックとの共同開発並びに業務提携を発表した。
東芝ライテック取締役社長 平岡 敏行氏
UV ライティングというコンセプトで、人や社会に貢献していこうと考えている。ウシオ電機様の医療機関等プロフェッショナルユースに向けた技術的蓄積や知見、東芝ライテックの公共交通機関やオフィス・店舗といった市場への販路や規格に対する技術的知見をあわせることで、国内市場に早く本技術を流通させ、お客様に貢献していきたい。電車や船舶、バス、シェアリングカーといった Mobility 領域、高齢者施設や教育施設、オフィス、コンサートホール等、多数の方が訪れる Facility 領域の 2 つを軸に展開していく。製品の事例として、ダウンライトにも似た可動式タイプ(21年 1月に投入予定)の他、車にとりつける車内灯のようなタイプ、一般のオフィスや施設等に使え、カメラやセンサーといったものと同時に付けられるタイプ、そして『空間全体を照らす』から『必要なところを照射する』ことができるドローンとの組み合わせ等が挙げられる。『人と、地球の、明日のために。』という東芝グループの経営理念を基に、世界中が新型コロナウイルスで苦労している中、お客様によりためになる製品をウシオ電機様と一緒に、一日でも早く投入して、安心な暮らしができるよう貢献したい