株式会社日経BPは、マーケティング&イノベーション専門メディア「日経クロストレンド」が作成した「技術」「マーケティング」「消費」の潮流を見極める「トレンドマップ 2020夏」を発表した。
この調査は18年夏、19年冬、19年夏、20年冬に続く5回目。今回は新型コロナウイルスの影響が本格化した20年上半期のトレンド変化を踏まえた初めての調査結果として注目される。
日経BPのマーケティング&イノベーション専門メディア「日経クロストレンド」が発表した「トレンドマップ2020夏」が調査対象とする「技術」「マーケティング」「消費」の3分野は、変化が激しく、様々なバズワードが飛び交う。この中から、中長期的に注目すべきトレンド(潮流)の見極めを目的とし、日経クロストレンドの活動に助言する外部アドバイザリーボード約50人と、編集部の記者など各分野の専門家の知見を集約したという。
その分析結果は、「現時点での経済インパクト」と「将来性」の2つのスコアでマッピングされた。
最も伸びたキーワード「ロボティクス」や「人間拡張」
前回の20年冬調査と比較し、将来性スコアが最も伸びたキーワードは、技術分野では「ロボティクス」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「人間拡張」、マーケティング分野では「チャットbot」「DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)」、消費分野では「ワーケーション(ワーク×バケーション)」「サブスクリプション消費」となった。
将来性が高スコアは「非接触技術」と「フードテック」
また、今回の調査から新たに下表の6つのキーワードを追加した。これらの中で、将来性スコアが比較的高かったのは、技術分野の「コンタクトレス・テクノロジー」「フードテック」、マーケティング分野の「デジタル接客」、消費分野の「Z世代」だった。
技術分野で躍進は「DX」
技術分野で将来性スコアを大きく上げ、かつ4.00以上の高スコアを獲得したのは、「ロボティクス」(スコア4.31)、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」(スコア4.41)。DXについては、経済インパクトのスコア(3.62)も大きく伸ばす結果となった。
この新型コロナウイルス禍で注目のキーワードとして躍進したDX関連で、最も身近で象徴的な出来事は「テレワークの急速な浸透」。ZoomやGoogleハングアウト、Microsoft Teamsなどのビデオ会議ツールを利用した在宅勤務が、すでに一般的に行われるようになっている。また、多くの企業が働き方の“新常態”として推進している。
また、「人が自宅にいる」ことを前提として、小売りではEC(ネット通販)やZoom接客が、外食ではフードデリバリー、店頭ピックアップサービスなどが脚光を浴びている。いずれも各業界のプレーヤーにDX対応を迫るもので、今後もリアルとデジタルの融合はかつてないスピードと危機感で進むことが予想される、としている。
なお、技術分野の将来性スコア上位には、「AI(人工知能)」(スコア4.69)、「5G(第5世代移動通信システム)」(スコア4.54)、「自動運転」(スコア4.48)が、前回調査と同じく上位に位置している。
マーケティング分野は「デジタル接客」が急浮上
マーケティング分野で注目されたのは、今回新たなキーワードとして追加した「デジタル接客」。将来性スコアは「EC(ネット通販)」(スコア4.38)に次いで2番目に高い4.19となった。
新型コロナウイルスの感染拡大以降、リアル店舗を持つ多くの企業が長期的な休業を余儀なくされる中で、新たな販路としてECの将来性が見込まれると同時に、リアル店舗のリソースを使いながらオンラインを通じて接客するデジタル接客も注目されている。Zoomなどを活用し、大手企業だけではなく中小の飲食店まで幅広い業種が取り組んでおり、リアル店舗の生き残る道の1つとして将来性が評価された形だ。
もう1つの新キーワード「カスタマーサクセス」も将来性スコアが4.00と高水準となった。カスタマーサクセスとは、自社の製品やサービスを利用する顧客に対して、その利用体験を高めるために企業側が積極的に働きかけるマーケティング活動のこと。サブスクリプションサービス市場の拡大とともに、サブスクビジネスの重要指標である解約率の抑制とLTV(顧客生涯価値)の向上に役立つ手法として、カスタマーサクセスの重要性が増している。
なお、マーケティング分野の将来性スコア上位には、「パーソナライゼーション」(スコア4.09)、「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」(スコア4.03)も、前回調査に続いて上がっている。
消費分野は「ワーケーション」に注目集まる
新型コロナウイルス禍で多くの経済活動が停滞する逆風の中、消費分野で最も将来性スコアを上げたのは「ワーケーション」(スコア3.32)。ワークとバケーションを組み合わせた造語であるワーケーションは、自宅などで仕事を行うテレワークよりもさらに発展した概念といえる。
また今回、同様に大きくスコアを上げたのが、多拠点生活を意味する「マルチハビテーション」(スコア3.31)だった。2030年のマルチハビテーション市場規模が約37兆5000億円に達するという予測もあり、これが今後大きく上振れする可能性も感じさせる、と分析している。
一方、消費分野で象徴的だったのが、前回調査比で将来性スコアを大きく落とした「インバウンド消費」(スコア2.97、0.54ポイントダウン)と、「ナイトタイムエコノミー」(スコア3.00、0.42ポイントダウン)だ。特にインバウンドは、20年4月の訪日外国人数が前年同月比99.9%減の2900人という衝撃の数字を記録した。いずれも依然として先行きを見通せない状況にあり、それが今回の結果へストレートに反映された形となった。
なお、消費分野の将来性スコア上位には、「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」(スコア4.33)、「キャッシュレス決済(QRコード決済など)」(スコア4.32)、「サブスクリプション消費」(スコア4.24)が、前回調査と同じく上がっている。
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