ソフトバンクロボティクスが配膳ロボット「Servi」(サービィ)を公開 デニーズ、とんでん、焼肉きんぐ、コスモポリタン等が導入

ソフトバンクロボティクスは自律移動する配膳ロボット「Servi」(サービィ)を発表し、「ソフトバンクロボティクス新事業戦略発表会」にて報道関係者向けに公開した。
「Servi」は、配膳するテーブルを選んでタップすると自律的に走行して料理を運ぶロボット。人や物などの障害物を検知して避けながら移動できる。

ソフトバンクロボティクスの自動配膳ロボット「Servi」(サービィ)全景

実際に料理をテーブルに運ぶデモ

配膳したいテーブルを画面から選択するだけの簡単な操作

発表会でのデモを見ると、移動音が静かで、障害物や人の認識精度が高く、きびきびと安定して配膳できることがわかる。

■発表会でのデモ (再掲)

■障害物や人を避けて自律走行するデモ (フルバージョン)

3基の3Dカメラと、高精度なLiDARを搭載

レンタル料金は3年プランで月額99,800円(税別)。メンテナンスや故障修理費用等がこれに含まれる。


「ソフトバンクロボティクス新事業戦略発表会」には実証実験を行なったパートナーとして、デニーズ、とんでん、焼肉きんぐ、東京ペッパーパーラーなどで知られる飲食業界各社の社長や 代表取締役たちが登壇し、次々に「Servi」を導入することを表明。実証実験の成果や、実証実験を通して感じたことも紹介した。




コロナ禍で注目されるロボットによる自動化

発表会の冒頭に登壇したソフトバンクロボティクスグループCEOの冨澤氏は、コロナ禍やコロナ終息後の「ニューノーマル時代」を見据え、ロボットの役割の重要性を語った。

ソフトバンクロボティクスグループ株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 冨澤文秀氏

同社の会話ロボット「Pepper」やAI清掃ロボット「Whiz」は東京都のすべての軽傷者保養施設で活躍していること、Pepperが来場者を検温したり、マスクの着用や手指の消毒を呼びかける「サーマルPepperパック」の発売を発表した。


また、「Whiz」は高輪ゲートウェイ駅など、全国のインフラ施設で5,000台が稼働していることを紹介した。また、「Whiz」は世界中では1万台以上が稼働、総清掃距離にして地球14周分に相当する範囲を清掃しているとして「生産が追い付かない」と語った。

そして紹介したのが自律移動する配膳ロボット「Servi」。レストランや飲食店での利用を想定した自動運搬機能を持った配膳ロボットだ。


3Dカメラを3基、LiDAR等の高精度センサーを搭載して、SLAMで自律移動する。狭い通路でも走行できるよう、60cm幅にも対応する。来店客のカバン、人などを検知して避けて移動することができる。


これまで実証実験を多くの店舗で実施し、既に半年間で合わせて3000km以上を安定して走行、既に導入企業も決定している。実際、この発表会に4社の有名な飲食関連企業が参加し、実証実験の成果を紹介した。



デニーズ、コスモポリタン、とんでん、焼肉きんぐ等に導入

セブン&アイ Food Systemsは資本金30億円、2019年度売上高 738億円の巨大企業。ファミリーレストランの「デニーズ(Denny’s)」「ポッポ」などで知られる。小松社長は「少子高齢化、採用難、などの理由から今後も労働人口は減少することが予想される。人は人にしかできないことに注力し、ロボットに代替できる作業はロボットにやって欲しいと思い「Servi」を導入検討した」と語った。

株式会社セブン&アイ Food Systems 代表取締役社長 小松雅美氏

ソルト・コンソーシアムはブランド力のあるレストランを展開。「東京ペッパーパーラー」と「大阪コスモポリタン」で「Servi」の運用を開始した。「お店で見てもらえれば、Serviがファミリー層のレストランだけでなく、おしゃれな雰囲気の店舗にもマッチすることがわかってもらえると思う」と語った。

ソルト・コンソーシアム株式会社 代表取締役 井上 盛夫氏

「とんでん」など、北海道と関東で和食レストラン105店舗などを展開するとんでんホールディングスはコロナ禍の課題として、接客時間の確保、生産性の向上、料理品質の向上を上げたうえで「今まで以上にお客様が楽しめるレストランを」を目指し、導入を正式に決定した。実証実験の結果、接客時間は2倍になり、来店客の笑顔が増えただけでなく、従業員も楽しく働けて成長が見られたという。

株式会社とんでんホールディングス 代表取締役社長 長尾 治人氏「とんでんの多店舗で導入を決めた」

1949年に愛知県豊橋市で創業した物語コーポレーションは「焼肉きんぐ」や「ゆず庵」なと、544店舗を展開している。顧客はテーブルで注文する配膳型の食べ放題店「焼肉きんぐ」では配膳業務の割合が大きいが、実証実験の結果、「Servi」の1基分の配膳能力は1日300回(走行距離にして約8km)に達することがわかったという。これは店員がヘトヘトになる数字だとした。

株式会社物語コーポレーション 代表取締役社長 加藤 央之氏

「焼肉きんぐ」では顧客と楽しい会話を交わしながら肉を焼く「焼肉ポリス」を、「ゆず庵」でも同様に最初のしゃぶしゃぶを店員が担当する「しゃぶ奉行」を300店舗以上に導入しているが、配膳などの労務負荷によって十分に業務が遂行できない課題もあった。「Servi」が配膳を担当する代わりに生まれる従業員の時間をこれら接客の時間に更に当てたい考えだ。


外食産業が抱える3つの課題解決に配膳ロボットが挑む

ソフトバンクロボティクスは「人とロボットとの共生」を掲げ、「人にしかできないことを人が行い、作業は自動化してパートナーロボットにやってもらう」ことで人手不足の解消や、効率化の推進をはかることを提案している。

ソフトバンクロボティクス株式会社 常務執行役員 兼 CBO 坂田大氏

坂田氏は、外食産業が抱える課題として、過去3年間で労働賃金が6%も高騰していること、コロナ禍を乗り切るために効率化を行って生産性の改善が急務であること、顧客や従業員が安心して働くための「非接触」の業務への変更、の3つをあげた。


ホールスタッフは様々な業務を抱えていて、そのうちの配膳と下膳をロボットで自動化することによって余裕を持った接客を行うことができて付加価値につながる、と強調した。



実証実験の結果、効率化によって座席回転数の向上し、売上アップにつながったことを紹介。Servi導入によってランチ客数が21%増え、ピーク時に複数のテーブルを効率的に下げ膳することで日次売上は5万円アップを見込めるとした。


そして、なによりも顧客満足度、従業員の満足度が向上したことを最後に付け加え、人手不足や賃金高騰を背景に、顧客と従業員が楽しめる配膳ロボットの導入効果は多岐に渡ることを強調した。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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