スマイルロボティクス株式会社(以下、スマイルロボ)は全自動下膳ロボットの試作機である「ACUR-C」(アキュラシー)を発表し、無人で下膳を行う動画およびロボットの詳細情報を公開した。
約1m離れた場所からトレーを回収できる
スマイルロボティクスが開発する全自動下膳ロボットは「モバイルマニピュレータ型」である点が大きな特徴。例えば飲食店では、アームのない搬送ロボットの場合、利用客や店員が「ロボットとテーブル間の皿の乗せ替えを手作業で行う」必要がある。それに対して同社の「自動下膳ロボット」はマニピュレータ(ロボットアーム)を持ち、ロボットとテーブル間の皿の乗せ替えを自動化する。
今回の発表によると全自動下膳ロボットのアームは冗長自由度をもち、約1m離れた場所からトレーの回収が可能。アームの最大到達距離は90cm。ロボット内部には上下に可動する棚を持ち、複数のトレーを回収できる。ハンドを交換することでトレー以外の下膳にも対応可能(もちろん配膳にも対応可)。
本体にはレーザーセンサを2つ、3Dカメラを4つ搭載し、360°人はもちろんあらゆる障害物を認識して停止&回避できる。無軌道型のため天井や床やテーブルに目印等の設置は不要。自律走行型であるためテレプレゼンスでの遠隔操作も必要ない。自律移動、認識、マニピュレーション、ハンドの高度なレベルでの統合を実現しているという。
【動画】全自動下膳ロボット「ACUR-C」による無人での下膳の様子
・シェル型構造(外から触れられない、万が一衝突しても飛び散らない)
・アームには低出力のモーターを使用(怪我をさせない、傷つけない)
・主なプログラミング言語として、高効率でセキュアな言語であるRustを使用
【全自動下膳ロボット「ACUR-C」の仕様】
自律移動方式 | レーザーを利用したSLAM |
---|---|
台車移動方向 | 全方向移動式 |
通り抜け可能通路幅 | 800 mm |
本体サイズ | 770mmx 430mmx 1,350mm |
最大移動速度 | 3km/h |
モーター最大出力(アーム部) | 53W |
最大アーム到達距離 | 90cm |
最大積載量 | 合計27kg |
トレー寸法 | 32cmx 40cmx 23cm(2段、高さは調整可能) |
登坂性能 | 5度 |
障害物回避 | 全周LiDAR+Depthカメラ |
連続稼働時間 | 5時間 |
今後、特許申請済の新ハンドを搭載
今後は飲食店とその他、下膳業務対応(医療介護施設、宿泊施設、イベント会場など)に向け追加開発を行う。
<飲食店向けの追加開発>
・特許申請済のトレー用の新ハンドを搭載
・お盆用マーカーのない状態での認識精度向上(上記動画ではマーカーを使用)
・POSシステムとの連動による指示の自動化
<飲食店以外向けの追加開発>
・飲食店以外における下膳業務への対応(医療介護施設、宿泊施設、イベント会場など)
・汎用型モバイルマニピュレータとして下膳以外への展開(エレベーターのボタンや手すりの消毒など)
(同社のロボット技術を使って解決したい課題を持つユーザーからの相談を常時受付中)
スマイルロボ 代表取締役社長 小倉崇氏は次のようにコメントしている。
一見すると「省人化」と「無人化」は似ているように見えますが、両者の間には技術的にも、飲食店の業務効率的にも、とても大きな差があると考えています。今回こうして技術的な壁を乗り越え、世界で初めて下膳の無人化の一端を実現出来たことで、今後、飲食店のホールスタッフの方々は肉体労働から開放され、より感情労働に集中出来るようになり、サービス向上、そして生産性向上へと繋がると確信しています。
昨今、コロナ禍の影響も受け配膳ロボット市場は盛り上がりを見せておりますが、「省人化」にとどまらず下膳を「無人化」することでスタッフにもお客さんにもスマイルを増やしたい!という想いをお持ちの飲食店さんと、実証実験を経てスマイルづくりしていきたいと思っています。』
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スマイルロボティクス
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山田 航也横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。