近年、気候変動の影響で気象災害は頻発、激甚化する傾向にある。大規模災害の発生に備え、自治体や企業は防災行動計画を作成しておくことが重要だ。また、災害発生時には迅速に被害状況や安否を把握し、救助や物資の供給、復旧作業に向けた業者の手配などを行うことが求められている。しかし、自治体の情報収集は、多くが電話で行われており、従来の方法では、被害の全容把握に時間がかかるほか、状況把握が業務の負担になっているなどの問題があり、DX推進が企業や自治体にとって課題となっている。
このような災害時の安否確認や災害情報把握・共有に関する課題解決のため、株式会社ウェザーニューズは、2020年9月29日、自治体や企業向けにSNSを活用した対話型災害情報流通基盤システム「防災チャットボット」の一部機能の無償トライアルを開始したと発表した。
「防災チャットボット」は、SNSを通して自律的に被災者とコミュニケーションを取り、AIが対話の中から安否確認や不足物資などの災害関連情報を自動で抽出・集約し、最寄りの避難所や物資状況などの情報を提供するシステムだ。同社が内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)に参画し、中心となって開発を進めてきた同システムは、自治体を中心に実証実験を行い、システムの実用性が確認されており、将来的には、府省庁や自治体の既存システムと連動して膨大な災害関連情報を統合し、政府の意思決定を支援する次世代の避難・緊急活動支援統合システムに導入される予定だ。
無償トライアルの概要
無償トライアルでは、同システムの“災害情報の収集”と“PUSH通知”を提供。自治体や企業のスタッフによって被害が報告されると、AIがリアルタイムに分類し、被害状況が地図上にマッピングされる。自治体や企業の防災担当者はそれらの報告を地図上で確認できるほか、現地にいるスタッフに対してPUSH通知を送信し、更なる情報提供を促すことも可能で、スタッフを対象とした防災訓練でも活用できる。
今回は、自治体や企業に向けた試験的導入を前提としており、システムの改良および機能拡張を実施して、2021年度には全国の一般の人まで参加対象を広げて、全国販売を開始する予定だ。最長1ヶ月まで無償で利用できるため、台風によって災害が発生しやすいこの時期、自治体や企業のDXを推進する防災対策として活用可能だ。
今後の展開
同社は、2021年度に「防災チャットボット」の販売開始を予定しており、今回のトライアルを通じ、より多くの自治体や企業に試してもらい、新たな取り組みとして、防災訓練などの機会に試してもらいたいとの事だ。今後は、改良を進め、将来的には気象情報との重ね合わせやハザードマップなど外部システムとの連携を行うことで自治体や企業のDXを推進していくと述べている。
なお、既に自治体での実証訓練で成功している安否確認機能や、罹災証明の発行手続き、最寄りの避難所、物資情報など市民からの問い合わせ対応への活用など機能拡充を目指すとしている。
「防災チャットボット」で災害対応にSNS活用
同チャットボットの無償トライアル版は、“災害情報の収集”と“PUSH通知”によって、被害状況の効率的な収集、集約と、自治体や企業のスタッフと防災担当者間の迅速な情報共有を可能にする。
使い方
1. | 「防災チャットボット」が組み込まれたLINEの専用アカウントを通して、自治体または企業のスタッフが地域や企業拠点の被害状況を報告 |
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2. | AIが被害状況を「浸水」「土砂災害」「火災」などに分類して自動で地図上に表示。 |
3. | スタッフは、AIが分析した被害状況マップをパソコンやスマートフォンで確認 |
4. | 本部にいる防災担当者は、専用サイトの管理画面上で被害状況をリアルタイムに把握。スタッフに対してPUSH通知を行い、情報提供を促すことも可能。 双方向コミュニケーションを活用し、本部と被災地にいるスタッフ間の安否確認や復旧作業のための指示や情報共有などにも活用できる。 |
▼「防災チャットボット無償トライアル」概要
サービス内容 | 【災害情報の収集】LINEの専用アカウント上で被害状況を報告・被害報告がAIでリアルタイムに分類、地図上に表示される(他企業、自治体から投稿された報告も閲覧可能) 【PUSH通知】防災担当者は管理画面からLINE専用アカウントへPUSH通知を行い、自治体や企業のスタッフに不足情報の確認や指示などを行う |
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期間 | 1日~最長1か月 |
サービス対象 | アカウントは自治体や企業のスタッフのみの利用 ※住民対象の防災訓練等での利用を希望する場合は別途相談となる |
株式会社ウェザーニューズ