身につけて歩けるイス「アルケリス」を約40%軽量化 片足あたり約2kgの「アルケリスFX」サンコロナ小田、大和ハウス工業と開発

バッテリー不要で長時間の立ち作業が楽になる装着型「アルケリス」が大幅な軽量化に成功した。

アルケリス、サンコロナ小田、大和ハウス工業は製造現場での立ち作業の負担を軽減するアシストスーツ「アルケリスFX」を開発し、2020年10月13日より大和ハウス工業の全国9工場に順次導入することを発表した。法人向けの一般販売は2021年1月を予定(個人への販売はない)、販売パートナー企業はサンコロナ小田と大和リース。


実証実験の結果を反映して開発

「アルケリスFX」は長時間の立ち作業の負担を軽減するアシストスーツ。重量は片足あたり約2kg。作業員が中腰姿勢になると、一定の角度で膝を固定し、椅子に座っている状態にすることができる。これにより、立ち姿勢の維持や腰の曲げ伸ばし時に動かす脊柱起立筋(骨盤や背骨から頭部まで付いている腸肋筋、最長筋、棘筋からなる背中で最も大きい筋肉)の活動量を最大33%抑える(筋骨格解析ソフト開発会社テラバイトにて検証)ことができる。


「アルケリスFX」はアルケリス社が販売する医療従事者の立ち作業を支援する「アルケリス」をベースに、サンコロナ小田の炭素繊維複合材料を採用。大和ハウス工業の工場での実証実験の結果を反映して開発された。

「アルケリスFX」は医療従事者用のアシストスーツ「アルケリス」を軽量化したもの。「アルケリス」は手術における長時間の立ち姿勢を支援するためにアルケリス社が2018年11月に開発。2019年11月より大和ハウス工業の工場でも導入していたが、片足約3.2kgあり、移動作業を伴う製造現場では、適合する作業範囲に課題があった。



そこで、製造現場の作業員向けに改良すべく、サンコロナ小田が開発した軽量かつ高強度の炭素繊維複合材料「Flexcarbon」(フレックスカーボン)を採用。重量を約40%軽量化したことで装着による身体負担を軽減できるため、製造現場の高齢者や女性作業員など多様な人財が活躍できる職場環境の醸成につなげることができる。

大和ハウス工業の導入拠点と導入台数は次の通り

■大和ハウス工業工場の導入拠点
東北工場(宮城県大崎市):2台
新潟工場(新潟県上越市):3台
竜ヶ崎工場(茨城県龍ケ崎市):11台
栃木二宮工場(栃木県真岡市:6台
中部工場(静岡県袋井市):1台
三重工場(三重県三重郡菰野町):3台
奈良工場(奈良県奈良市):5台
岡山工場(岡山県赤磐市):4台
九州工場(福岡県鞍手郡鞍手町):2台
合計:37台


建設業就業者数は499万人まで減少し55歳以上が3割超を占める

住宅・建設業界では人手不足の深刻化とともに高齢化の進行が大きな課題となっている。総務省「労働力調査」によると、建設業就業者数は1997年の685万人から、2019年には499万人まで減少した。また、国土交通省によると、建設業就業者は55歳以上が3割超を占めており、新規の入職者数も減少していくと試算されている。

戸建住宅や事業施設などの建築部材を生産する工場でも作業員の身体負担が大きく、雇用確保の観点からも労働環境の向上が急務となっている。特に、鉄骨製品の溶接・組み立て加工などの作業では、完全なロボット化が難しく人手に頼らざるを得ない作業もあり、中腰姿勢が続くことで腰への負担や疲労の蓄積が問題となっている。そこで、3社は長時間の中腰姿勢や立ち作業を支援するアシストスーツ「アルケリスFX」を開発した。


各社概要

以下、プレスリリースより引用

<アルケリス株式会社>
2020年2月10日、金型製作・金属加工会社の株式会社ニットーよりスピンオフして設立されたスタートアップ企業。株式会社ニットーが開発したアシストスーツ「アルケリス」の企画・開発・販売を引き継ぎ、事業を展開しています。「アルケリス」は、長時間に及ぶ手術においても、中腰姿勢による筋肉に負荷を軽減し、医療従事者のパフォーマンスを安定させるアシストスーツです。「アルケリス」は、製品デザインだけではなく、働き方改革が進む昨今、「アルケリス」を使用することによる労働環境改善を含めた社会デザインが高く評価され、2018年10月に「2018年度グッドデザイン賞」の特別賞である「グッドフォーカス賞」を受賞。2019年12月には、一人でも多くの人が快適で暮らしやすい社会に向けて、特に顕著な活動の実践や提案を行なっている団体・個人を表彰する「IAUD国際デザイン賞」で銀賞を受賞しました。
<サンコロナ小田株式会社>
1955年3月26日創業。撚糸(ねんし)メーカーとしてスタートして以来、分繊(ぶんせん)・開繊(かいせん)の技術を武器に、素材から製品までの企画・製造・販売の一貫体制でインテリアカーテンからファッション、炭素繊維複合材料まで幅広く手掛けています。現在はサンコロナ小田グループとして、国内に3社、海外に5社を展開しています。サンコロナ小田が開発した炭素繊維複合材料「Flexcarbon®」は、2020年5月には、世界最大の複合材料の展示会「JEC Innovation Awards 2020」においてアシックス社と共同で最優秀賞を受賞し、国内のみならず世界からも高い評価を受けています。また、JST(国立研究開発法人科学技術振興機構)のセンターオブイノベーション(COI)プログラムに参画しており、同プログラムの開発及び社会実装プロジェクトリーダーを務めている大和ハウス工業と3社共同開発に至りました。
<大和ハウス工業株式会社>
1955年4月5日、「建築の工業化」を企業理念に創業。2013年2月には、熱中症や熱ごもりなどの防止のため、老朽化した奈良工場や竜ヶ崎工場を次世代環境配慮型工場「D’s SMART FACTORY(ディーズ スマート ファクトリー)」に建て替え、工場作業者の労働環境改善のための設備を導入しました。2017年10月より技能者のモチベーション向上と雇用維持を図るべく「技能者支援金制度」を導入。さらに、2018年2月には、サイバーダイン社が開発するロボットスーツ「HAL腰タイプ作業支援用」を全工場に導入するなど、作業現場の働き方改革に努めています。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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