コロナ禍でロボットの問合わせが5倍に!ロボット導入を加速する注目の4つの観点、4つの分野 TIS「ロボティクス事業」の現状と将来

「新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、ロボティクス事業への問い合わせがこの半年間で5倍に増えている」(TIS 田島氏)

TIS株式会社はサービスロボットと人の業務分担、そのデザインから実装までのロボット活用を支援する「ロボティクス事業」の報道関係者向け戦略説明会を、10月13日にオンライン開催した。

新型コロナウイルス感染拡大の影響によって「非対面・非接触」のニーズが急増している。その関係から、遠隔操作やサービスロボットの活用検討が急加速していて、TISの「ロボティクス事業」にも引き合いが急増、冒頭の「5倍増」のコメントに繋がった。
TIS株式会社 サービス事業統括本部 AI&ロボティクスビジネスユニット ジェネラルマネージャー 執行役員 田島泰氏が「ロボティクス事業」の現状と今後の展望を語った。


ロボット化が期待される4つの観点

問い合わせが5倍以上増えている理由に、4つの観点をあげた。
ひとつはコロナ禍による「非対面・非接触」のニーズが増え、その業務対応には遠隔操作やロボットによる自動化が有効だと考えられていること。
2つめは「人手不足・労働賃金の高騰」働き方改革が叫ばれていることを背景にしたもの。


3つめは「有効求人倍率」の観点、人材確保が困難時代への対応。10年後には644万人の労働人口が減り、これは千葉県民の数に匹敵する。
4つめは「有能な人材の活用」の観点。1対1の対応から、遠隔操作の導入により、1人の人材が複数人を対応していくことのニーズの高まりがあるという。


その際、人をロボットに置き換えるのではなく、人とロボットとの協働、テレワークの職員との協働、AIやIoTの活用による業務の代替などがポイントとなる。


TISは「Robotics Base」というロボットの遠隔管理システムをサービス化していて、多くのロボットを連携したり、一括管理・運用するのに積極的だ。


その視点から、接客業務に於けるロボット・バリエーションは下記のようになる。

ロボット・バリエーションの3つの分野に選別。会話、移動(自律走行)、遠隔制御の3つ

Withコロナ時代に4つの業務の人員不足が加速、ロボット化への期待も高まる

また、TISは建物内でのロボット等によるサービス業務を複合的に提供していて、ロボット同士の協働、ロボットの複数業務の遂行、人とロボットの協働などを重視していて、それらの複数ロボットの管理を「Robotics Base」で行っているという。

また、公道における運搬ロボット(配送業務)の実証実験にも参画。会津の中山間地域を中心に、交通の過疎化が進む地域での無人モビリティの活用を実証検証していく。



ロボットの実用化に挑む4つの分野

実証実験の事例としては東京ビッグサイトと羽田のHICityに参画したケースを紹介。東京ビッグサイトでは、案内、運搬、巡視(警備)、清掃の4分野でロボット導入の有効性を検証した。

東京ビッグサイトでは、案内、運搬、巡視(警備)、清掃の4分野で実証実験

この4分野の中で、肌感として実際に実用化への期待が高まっているのは巡視(警備)分野だという。人手不足が顕著でニーズが高いことに起因するもので、特に夜間の警備業務のコスト削減化もあり、今後導入が加速する気配だ。
一方、案内業務はPoCの案件は数多いが、なかなか実用導入に至るケースが少ないようだ。ロボットによる音声の聞き取り等に課題があり、タブレット等で質問項目を選択するなどのしくみに合致した使い方でないと実用への障壁が高いようだ。


羽田「HICity」での実証実験

関連記事「羽田に未来型スマートシティ「HANEDA INNOVATION CITY」オープン、早速行ってきた ロボットや自動運転バスなど先進技術と日本文化がいっぱい」でレポートした内容からTISの取り組みの一部を紹介(再掲)する。

人に追従してカルガモ走行するサウザー

■動画

TISはロボットの連携をデモ。会場ではスタンプラリーが行われていたが、タッチパネルを押すと、奥から自律移動できる搬送ロボットがやってくる。そこにはスタンプラリーの景品が載せられている。

タッチパネル式ディスプレイを搭載した移動ロボット。画面をタッチすると・・

自律移動の搬送ロボットが景品を運んできてくれる

■動画

このしくみはロボットの運用管理や制御、連携を実現するTISの「RoboticBase」(ロボティック・ベース)を使って実現している。「RoboticBase」は、複数のサービスロボットを統合的に管理し、複数のロボット同士やセンサーなどの環境や人を含めた相互連携を実現するプラットフォーム。前述した「天空橋」駅改札の警備ロボットにも活用されている。


■動画


AI&ロボティクスビジネスユニットの現状と将来

TISは従来から、多くの業種、業界へビジネス展開していて、クレジットカードやデビットカードシステム、地方銀行向け統合型CRMシステムなど、決済や金融関連で多くの国内シェアを持つ。


その中にあって、AI&ロボティクスビジネスユニット(ARU)事業は、単純で定型だった従来のロボットやコンピュータ、BI事業から、知的で複雑、非定型の事業の業務をにらみ、ロボティクス、RPA、AIを展開している。


現在は約10社をコンサルティングし、人の代替えとして動くためのロボットコンサルメソッドを行っている。ここで重要なのは「ロボットやAIを導入することが目的ではなく、ユーザーエクスペアリンスを向上するためにロボットやAIをどう活用するか」だと語る。

田島氏は、人間がやらなければ成立しない業務はまだまだてくんさある、としたうえで、将来の展開としてニューノーマルに向けたシナリオを紹介した。それは、訪問客を受付し、案内する等「非対面を実現するシナリオ」、見回りや配送などの「省人化を実現するシナリオ」、配送やフードデリバリーなどの「非接触を実現するシナリオ」だ。



田島氏は将来の展望として「TISとしては、今後はロボティクスだけでなく、TISの強みである決済等を含めたシステムの連携などを絡めてビジネス化を展開していきたい。例えば、TIS社内には「置きコンビニ」のようなコーナーがあって、商品をとってSuicaなどでキャッシュレス決済を行っている。いまは「置きコンビニ」まで商品を取りにいかなければならないが、ロボットが持ってきてくれて決済ができれば新しい市場が創造できる。また、そのシステムでは誰が何をいつ購入したかの購買履歴を収集することもできる」と語った。

TISの企業ドメイン

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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