オリィ研究所の遠隔操作ロボットは、反応速度が高速な「5GやIOWNのユースケースとして技術開発にも貢献できる」と期待している、こう語ったのはNTTの澤田社長。
「先進技術を共同で研究開発すること(R&D)、障がい者の職業の選択肢を広げること(CSR)、NTTグループに導入するだけでなく、NTTの顧客に提供していくビジネス面の3つが提携の目的となる」と続けた。
日本電信電話(NTT)とオリィ研究所は、10月15日、資本業務提携に合意した。目的は、障がい者の活躍推進、リモートワールド実現に向けたビジネスの強化・技術連携、これによる双方の事業拡大。
オリィ研究所は今回、NTTのほかに川田テクノロジーズも引受先として、総額5億円の資金調達となる。
NTTは以前から「OriHime」シリーズを導入
現在、NTTはグループ全体で約3,900名の障がい者を雇用。法定雇用率以上の2.44%にあたる。そこにひと役買ってきたのが分身ロボットとしての「OriHime」や「OriHime D」だ。
最近では、身長約120cmの「OriHime D」を受付に配置。障がい者が自宅等から「OriHime D」を遠隔操作することによって来客の対応をしたり、会議室への案内業務などを行っている。
また、NTTはテレワークの推進に小型の「OriHime」を以前から導入していることが知られている。妊娠中や、高齢者の介護等があって、職場に出社できない社員でも働ける環境を用意してきた。特に、新型コロナウイルス感染拡大以降、ソーシャルディスタンス確保と、経済活動活性化を両立させるリモート環境に改めて注目が集まっている。
障がい者の活躍の場を推進するだけでなく、テレワーク環境を進める上で、遠隔操作ロボットの活用が一層重要になっていくと判断した。
外出困難者に働く機会や選択肢を提供したい
オリィ研究所は「コミュニケーションテクノロジーで人類の孤独を解消する」というコンセプトのもと、外出困難な人に就労機会を与える活動等を行ってきた。NTTも2019年から分身ロボットカフェ「DAWN」(ドーン)に協賛してきた等、親密な関係にある。発表会でオリィ研究所の代表取締役CEO 吉藤氏は「分身ロボットカフェで働いた経験を持つ人達が巣立っていき、様々な企業に就労する機会を得ている。2025年までに1万人規模の雇用を創出したい」との考えを明らかにした。
業務提携の項目を5つ発表
両社は本資本業務提携を通じて、今後目標としていく業務提携の項目を5つ発表した。NTTグループが保有する研究開発力(R&D)や、オリィ研究所の遠隔操作型分身ロボット「OriHime」をはじめとした高い商品開発力などの両社のリソースを組み合わせることで、体が不自由な方や、外出困難な方の雇用と活躍の場のさらなる拡大とリモート環境に対応した取り組みを推進(CSR)、テレワークを含めた遠隔操作ロボットによるビジネス展開を推進する考えだ。
【5つの業務提携を実施】
1.ドコモショップでの分身ロボットの活用検討(トライアルの実施)
2.分身ロボットによる受付やショールームご案内のNTTグループ会社への拠点拡大(将来的に10拠点)
3.NTTグループ各社のサービス・法人営業との連携
4.障がい者の就労支援におけるNTTクラルティとの連携
5.分身ロボットを使ったNTTグループの研究開発技術(IOWN、5G等)の推進
IOWNとは
IOWNとはInnovative Optical and Wireless Networkの略。IOWN構想とは、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、多様性を受容できる豊かな社会を創るため、光を中心とした革新的技術を活用し、これまでのインフラの限界を超えた高速大容量通信ならびに膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想。
NTTは2024年に仕様確定、2030年の実現をめざして、研究開発を始めている。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。