ヴイストン株式会社は注文時に車体寸法や車輪数を指定でき、様々なオプションパーツの搭載にも対応した研究開発用台車ロボット「メガローバーVer2.1 フルカスタム版」を発売することを発表した。価格はオープン。ヴイストン株式会社の公式Webショップ「ROBOT SHOP」にて注文を受け付けている。
サイズオーダー版はフルカスタム版に統合
同社から販売中の「メガローバーVer2.1」はヴイストン製研究開発用台車ロボットの中核モデルとして多くの支持があり、高い可搬性能と豊富な拡張パーツ、取り扱いやすくオープンなプログラム環境など、試作・開発段階に求められる要素を高い次元でパッケージ化したヒットモデルとなっている。同時に数多くの用途で活用されているため、それぞれの現場に適した形へのカスタマイズの要望も数多くあるという。
同社は個別のカスタマイズ要望についてはゼロから設計したオリジナルモデルの提供を行う一方、ベーシックモデルであるメガローバーVer2.1を基本筐体としつつ、各種のオプションパーツのラインナップを拡充する、筐体寸法の指定に対応した「メガローバーVer2.1 サイズオーダー版」を発売するなど、個々のケースに最適なソリューションを提供してきた。
今回発売する「メガローバーVer2.1 フルカスタム版」は、既発売の「メガローバーVer2.1 サイズオーダー版」をさらに進化させ、注文時の筐体サイズ指定のほか、車輪数を通常の三輪、ないしは四輪から選べる製品。「メガローバーVer2.1 サイズオーダー版」についてはフルカスタム版に統合する形とし、高能・高汎用・低価格・短納期を実現した、総合的なカスタム台車ロボットソリューションとする。
ヴイストンは「メガローバーVer2.1 フルカスタム版」の発売により、需要の拡大が見込まれる自律移動型ロボットのさらなる研究と開発の促進、さらには、日常生活における安心・安全・便利なロボティクス技術の活用に貢献していくとしている。
フルカスタム版 7つの特徴
1.注文時に寸法と車輪数の指定が可能
メガローバーVer2.1 フルカスタム版は、本体注文時に「寸法」と「車輪数」指定が可能。寸法指定の範囲は三輪時にトレッド(駆動輪の間隔)が480~1000mm、ホイールベース(駆動輪とキャスターとの間隔)が277~800mm、四輪時にトレッドが290~800mm、ホイールベースが260~800mmで、最小指定幅は1mm単位(四輪時のトレッドは駆動輪間の幅。キャスター間の幅はプラス60mmとなる)。
車輪数の指定は通常の三輪構造のほか、四輪構造の指定が可能。いずれの場合でも駆動輪は前方の二輪のみとなり、後方は従輪(キャスター)となる。可搬重量は指定寸法や車輪数に関わらず約40kgを実現する。なお、寸法と車輪数の指定が可能なのは本体注文時のみで、購入後の変更には対応していない。また、購入後にユーザーの手によって仕様を変更できる機能は備わっていない。
2.二輪駆動の大型台車ロボット
メガローバーVer2.1 フルカスタム版は、二輪駆動にキャスターを加えた構造となっているため、シンプルな制御で駆動させることができる。駆動輪には通常の車輪を採用しているため、全方位移動機構の台車ロボットと比較すると、耐久性や静粛性といった点で有利なほか、横滑りしにくいなど、より幅広い場面で活用できる特徴を備えている。
同製品は注文時の指定寸法にかかわらず可搬重量約40kgを実現しているため、様々な用途の研究・開発目的に余裕を持って応えることができる。内蔵バッテリーによる最大稼働時間は約65時間(標準的な環境下での設計値)で、長時間にわたる稼働テストなどにも対応可能。サイズ指定に対応したことで、様々な寸法・重量の機材を搭載することができ、これまで以上に幅広く、柔軟な運用を実現する。
メガローバーVer2.1 フルカスタム版は研究・開発用途はもちろん、実用を見据えた実証実験や現場での実動検証など、物流・運送業務などで求められる自動運転や自動運搬技術の迅速な開発と実用化を支援する。なお、同製品は高い可搬重量を実現している関係上、車輪の数によらず、安定した動作を実現するためには搭載する機材の重心位置に一定の配慮が必要。
3.様々な注文時オプションに対応
・メガローバーVer2.1 フルカスタム版用 LRFオプション
機体周囲の障害物等を検知するLRFを取り付ける、本体注文時の有償オプション。機体の前部、もしくは後部、あるいは両方に取り付けが可能。LRFを後部に取り付ける場合、非常停止スイッチオプションは取り付けできない。一式10万円(税抜)。
・メガローバーVer2.1 フルカスタム版用 非常停止スイッチオプション
非常時の停止ボタンを取り付ける、本体注文時の有償オプション。非常停止スイッチオプションを取り付ける場合、後部にLRFオプションは取り付けできない。一式1万円(税抜)。
・メガローバーVer2.1 フルカスタム版用 ワイヤレス充電オプション
無線充電の機能を追加する、本体注文時の有償オプション。本体前部もしくは後部への取り付けとなる。一式30万円(税抜)。
・メガローバーVer2.1 フルカスタム版用 Raspberry Pi 4Bオプション
メガローバーVer2.1 フルカスタム版にRaspberry Pi 4B 2GB版を取り付けて出荷する、本体注文時の有償オプション。拡張機器用電源基板オプション VS-WRC054が別途必要。また、SDカードおよびOSイメージは付属しない。一式9,500円(税抜)。
・メガローバーVer2.1 フルカスタム版用 ROS PCオプション
メガローバーVer2.1 フルカスタム版に、ROSで制御するための環境構築済みPCを取り付ける、本体注文時の有償オプション。別途、拡張機器用電源基板オプション VS-WRC054が必要。一式27万円(税別)。
・拡張機器用電源基板オプション VS-WRC054
Raspberry Pi 4BやROS PCオプションなどの拡張機器を搭載した際に、メガローバーVer2.1 フルカスタム版本体のバッテリーから電源を供給する、本体注文時の有償オプション。Raspberry Pi 4Bオプション搭載時およびROS PCオプション搭載時には必須となる。一式3万3000円(税抜)。
・メガローバーVer2.1 フルカスタム版用 カメラステーオプション
メガローバーVer2.1 フルカスタム版の天面に設置する、カメラ固定用のステー。ステーに対してカメラの固定高さと角度が調節可能で、カメラ画像を用いた研究・運用などの用途において、理想的な位置にカメラを固定し安定した撮像が可能。台座を含めたステーの高さはメガローバーVer2.1 フルカスタム版の天板から265mmで、十分な視界を得ることができる。一式1万5000円(税抜)。
・メガローバーVer2.1 フルカスタム版用 デプスカメラオプション(仮称)
メガローバーVer2.1 フルカスタム版に適合する、カメラ固定用ステーとデプスカメラとのセット品。近日中の発売を予定し開発中。
4.有線 / 無線接続による制御
メガローバーVer2.1 フルカスタム版はWi-Fi / BLE / BluetoothClassic の3種の無線通信と、有線のUSBシリアル通信に対応している。指定のコマンドを用いることで、PCやタブレットなど、様々なデバイスから制御することが可能。
5.ROSメッセージ通信でコントロール
メガローバーVer2.1 フルカスタム版は、ROSメッセージ通信に対応している。ROSが動作するデバイスとWi-FiまたはUSBケーブルで接続することで、ROSを使った制御が可能。ROSメッセージ通信を使うことで、速度や旋回量の指令値をわずか数行のコードでメガローバーVer2.1 フルカスタム版に送信することができ、ROSロボットとして幅広く活用できる。
導入ドキュメントと以下のサンプルプログラムが付属するため、初心者でも、ROS環境で制御システムを作成し、簡単に動かすことができる。LRF(レーザーレンジファインダー)などのセンサーを用いた高度な制御も少ない開発負担で実装することが可能。
・ゲームパッドからの操作 ・ マウス(タッチパッド)からの操作
・SLAM(gmapping) ・ SLAM(cartographer)
・navigation
(同製品に含まれないライブラリーなどのセットアップが追加で必要になる場合がある)
(SLAM、navigationを行うためにはLRFが必要。LRFオプションの利用が便利)
ROSを動作させるデバイスは別途用意する必要がある。同社が推奨するデバイスの動作環境は以下の通り。
OS:Ubuntu 16.04 (64bit) / Ubuntu18.04 (64bit)
ROSバージョン:ROS Kinetic / ROS Melodic
CPU:Intel Core i5 8259U / Intel Core i5 8259U
RAM:DDR4 PC4-19200 8GB / DDR4 PC4-19200 8GB
ストレージ:M.2 SSD 256GB / M.2 SSD 256GB
グラフィック:Intel Iris Plus Graphics 655 / Intel Iris Plus Graphics 655
(上記条件を満たしていても、相性などにより、正常に動作しない場合がある)
(仮想環境は、タイムラグにより安全な制御が行えない場合があるため、推奨していない)
6.Arduino IDEでプログラム可能
メガローバーVer2.1 フルカスタム版の制御ボードである「VS-WRC051」には、ESP32-WROOM-32マイコンが搭載されてるため、Arduino IDEを用いて制御プログラムを作成することができる。製品付属のライブラリーにはモーター制御関数や通信関数が含まれているため、少ない開発負担で制御プログラムを作成することが可能。(VS-WRC051に対してArduino IDEを用いてプログラミングする場合、Arduino IDE 1.8.9以上が動作する環境が必要)
7.専用の無線コントローラーで簡単操作
同製品に付属するゲームパッド型無線コントローラー「VS-C3」を使えば、PC等を接続しなくても、メガローバーVer2.1 フルカスタム版を無線操縦することが可能。ボタンやアナログスティックを使用し、前後へ移動、回転させることができるため、手動操縦で動作させる際や、動作確認等に便利。
本体仕様
サイズ | 三輪構成時 最小時:W549 × D413 × H168 (mm) 最大時:W1069 × D936 × H168 (mm) 四輪構成時 |
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積載重量 | 約40kg |
本体材質 | アルミニウム |
バッテリー | 12Vシール鉛バッテリー 312Wh |
駆動方式 | 二輪駆動、後部キャスター×1もしくは×2 |
本体材質 | アルミニウム |
タイヤ直径 | 駆動輪:152mm、キャスター:40mm |
モーター | DCモーター 40W×2 |
回転検出 | エンコーダー |
最高速度(参考値) | 1.4m/s(ベースモデルであるメガローバーVer2.1での参考値) |
制御基板 | VS-WRC051 |
SDK | VS-WRC051用 Arduinoライブラリ、ROSパッケージ |
収録サンプル | ・Arduinoライブラリ 車輪制御 / エンコーダー読み取り 各種通信機能等 ・ROS用サンプルコード |
インターフェース | USBシリアル、Wi-Fi、Bluetooth Classic、BLE |
付属品 | 充電器、無線操縦セット |
注文時オプション | LRF(レーザレンジファインダー) 非常停止スイッチ ワイヤレス充電 Raspberry Pi 3B ROS PC 拡張機器用電源基板 VS-WRC054 カメラステーオプション デプスカメラオプション(仮称 開発中) (※)同製品は屋内専用。屋外での使用は想定していない。 |
Youtubeチャンネルにて参考動画を公開
ヴイストンは研究開発用台車ロボットに関連する様々な動画をYoutubeチャンネルにて公開している。
ROS対応台車ロボットの牽引能力を調べてみました!
Gazeboでメカナム台車を使ってみる ー1.セットアップ編ー
SLAM性能比較! LRFを2個に増やすと何が良くなる?
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山田 航也横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。