「ドローン物流」と「アバターロボット遠隔医療」が現実に 長崎県五島市が離島モデルを構築、患者の受け入れ開始へ
「ドローン物流」と「アバターロボット遠隔医療」が現実になる。離島と本島、離島間の物流や医療の利便性向上に期待がかかる。
現在、コロナウイルス影響下の特例措置として設けられた、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取り扱いについて(令和2年4月10日事務連絡)」(「410事務連絡」)により、初診からのオンライン診療等が限定的に実施可能となっている。
これを受け、長崎市の五島スマートアイランド推進実証調査協議会は、近い将来の離島地域住民の生活を支える地域医療体制としての「離島の遠隔医療モデル」を構築し実証すべく、「ドローン物流を用いた処方薬配送」や「アバターロボットなどを患者と医師間のコミュニケーションに活用したオンライン診療」など、将来の離島地域等の住民の生活を支える新しい地域医療体制を構築。2020年10月5日より患者の受け入れを開始しており、翌年2月まで実証運用予定があることを同年10月22日に発表した。
同事業概要
長崎市の同実証調査協議会は国土交通省スマートアイランド推進実証調査業務の一環として、ドローン物流による処方薬等の輸送、およびアバターロボット、タブレット等を患者-医師間のコミュニケーションツールとして活用した、オンライン遠隔医療の離島モデルを構築。2020年10月5日から2021年2月12日まで、嵯峨島出張診療所でのオンライン診療およびオンライン服薬指導の提供を開始し、同遠隔医療実施体制を実施する。なお、11月4日~6日には、ドローンによる処方薬等の輸送体制も提供する。
遠隔医療
同事業では、初診・再診問わず離島の嵯峨島患者が嵯峨島出張診療所を訪れ、五島市本島の三井楽診療所の医師および五島中央病院に勤務する一部の医師のオンライン診療を毎週月曜日~金曜日の日中の指定した時間帯に受けることが可能となる。また、院外処方を利用し、幅広い薬の選択肢の中から処方を行い、オンライン服薬指導を介して島を出ずに処方薬を受け取ることもできる。この、410事務連絡による時限的な規制緩和により実現可能となった遠隔医療モデルの効果とその有用性、及び恒久的な規制緩和の必要性等を、同事業を通して検証し、医療資源の限られた、へき地・離島部等の地域住民の生活を支える新しい医療インフラを構築するために活用していく意向だ。
ドローン物流
昨年度、ANAホールディングスと共同で、五島市福江島から赤島および黄島へ、生活用品、食品、医薬品等を届ける実証実験を計20日間実施している。今回は、取り組みをさらに発展させ、実際の処方薬を搭載して貝津港~嵯峨島間(約5km)の運航を計画している。また、同遠隔医療と同時に、五島市立嵯峨島小中学校の保健室から同校学校医である三井楽診療所の医師に、タブレット端末のテレビ電話を介して児童の健康について相談するオンライン受診相談を行う実証を行う予定だ。
遠隔医療×ドローン物流事業実施者および役割
同事業の協議会は、構成員である長崎大学大学院医歯薬学総合研究科やANAホールディングス、NTTドコモ九州支社などの他に、協力事業者等で進めている。
▼ 協議会構成員
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 | 同大学離島医療研究所を中心に地域診療所等と連携し遠隔医療の計画と実施、域内医療従事者の合意形成などを担当。 |
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ANAホールディングス | 医薬品等の配送受付からドローン物流の運航管理全般と配送依頼システムの構築を担う。 |
NTTドコモ九州支社 | 空のLTE強度を見える化し、空のインフラであるエアウェイ策定をサポート。また、遠隔医療およびドローン飛行における通信環境を提供。 |
五島市 | 事業の進捗管理、関係機関及び現場調整、市営診療所(三井楽診療所、嵯峨島出張診療所)でのオンライン診療を実施。 |
▼ 協力事業者等
avatarin | 医師-患者間のコミュニケーションを円滑にするサポートツールとしてアバターロボット「newme(ニューミー)」を提供。 |
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自律制御システム研究所 | 補助者なし目視外飛行の実績豊富な物流ドローン機体の提供及び運航サポート。 |
メトロウェザー | 小型高性能ドップラー・ライダーにより航路上とドローンポート上空の風況を3次元でかつリアルタイムにモニタリングすることでドローンの安全安心運航を実現。 |
NTTコミュニケーションズ | ドップラー・ライダーで観測した風況データの収集・蓄積のための通信・クラウド環境と、風況の見える化ツールを提供。 |
嵯峨島小中学校保健室 | タブレットを使用した同校児童の健康に関するオンライン受診相談の実施。 |
協力調剤薬局 | 処方箋による処方薬の調剤、遠隔服薬指導を「桜町調剤薬局三井楽店」「あおぞら薬局」「ニック調剤薬局ごとう店」にて実施。 |
スマートアイランド推進実証調査(五島市)その他事業について
その他、以下の事業についても実証調査を進めている。
スマート水道メーター事業
水道メーター検針業務を自動検針に切り替え、人手をかけずデータを正確に収集することで、人件費等の費用の削減を図るとともに、漏水検知アラート、使用量監視による住民のみまもりサービスなど、新たな行政サービスに繋がるデータベースの確立と活用可能性を検証する。実証は、市内の公営住宅6棟(約80戸)を対象として行う予定だ。【双日株式会社・双日九州株式会社(協力事業者)】:スマートメーターの設置、LPWAによる水道使用量データの送受信など、実証業務の全般を担う。
エネルギーマネージメント事業
地域資源を利用した洋上風力発電等によるエネルギーの地産地消を目指し、エネルギーマネージメントシステム(EMS:Energy Management System)を使用した離島内におけるエネルギー需要の「見える化」を図り、平常時又は非常時における電力需要に対して適切な電力供給を行うための可能性について調査を行う。【五島市民電力株式会社】:市内におけるEMSの導入可能性調査における業務全般を担当。
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長崎県五島市