オンライン診療と連携してドローンが医薬品を空中配送　「Level４」を見据えて浜松市で実証実験

ドローンのAI管制プラットフォームを開発するトラジェクトリーと、ドローンの社会実装を支援することで産業の更なる発展を推進するスカイピークは、静岡県浜松市天竜区春野町で実施する「春野医療MaaSプロジェクト」の実証実験に参加することを発表した。

ドローンを用いた医薬品配送

実証実験では「ドローンを用いた医薬品配送」として以下の内容を実施。期間は2020年10月19日～2020年12月下旬まで。

・離発着地点に関する検証
安全を担保した上で実際にドローンによる医薬品配送が必要な患者宅を着陸地点として、各ドローン物流にとって必要な離発着条件(地形や広さなど)を検証する。

・飛行経路に関する検証
ドローンごとに機体スペック等が異なるため、安全かつ最適な飛行経路は異なる。そのため、近隣の高圧鉄塔や高圧線の配置を踏まえた上で実際に飛行実験を行い、各ドローン機体にとって最適な飛行経路(障害物との距離や高度など)を検証する。

・医薬品受け渡しに関する検証
医薬品の種類、離発着地点及び飛行経路を考慮した輸送サービス範囲、病院側のドローンへの荷物積み込み作業負担及び安全性、患者側のドローンからの荷物取り外し作業負担及び安全性、患者側作業の代替手段、全体的な経済性などを検証する。

天竜区は医師不足に加え、高齢者の通院困難等の課題に直面

「春野医療MaaSプロジェクト」は浜松市が経済産業省の「地域新MaaS創出事業」における先進パイロット地域の一つとして選定され、実施するもの。「オンライン診療・服薬指導・ドローン等による医薬品配送」により、地域課題解決を目指している。

浜松市のなかでも高齢化が進行している中山間地域の天竜区(高齢化率約42%)では、医師不足に加え、高齢者の通院困難等の課題に直面している。そこで、浜松市、地域の医師会、民間企業が連携し、オンライン医療サービスと連携した「ドローンによる医薬品配送サービス」の実証実験を行う運びとなった。
同プロジェクトの全体像として、大きく以下2点について実証実験を実施する。

1.移動診療車によるオンライン診療
2.オンライン服薬指導から薬剤の配送

このうち、トラジェクトリーとスカイピークは2に相当する「ドローンを用いた医薬品配送」の実証を行っている。春野医療MaaSプロジェクトの実装は首相官邸が発表する「空の産業革命に向けたロードマップ2020」における「Level４」有人地帯での目視外かつ補助者なしの自律飛行(自動運転)実現を目指している。これにより、高齢者は将来的に自宅にいながら医薬品を手に入れることが可能となる。(なお、「Level1」は目視内での操縦、「Level2」は目視内での自動・自律飛行、「Level3」は、山や海水域などの無人地帯における補助者なしでの目視外飛行と定義されている。)

「春野医療MAASプロジェクト」デモムービー

浜松市の取り組み

浜松市は人口減少・超高齢化社会に向けて、昨年10月に「デジタルファースト宣言」を実施し、デジタル・スマートシティ推進により、持続可能な都市づくりを目指している。2020年4月には、分野間連携及びデータ利活用を促進するため「浜松市デジタル・スマートシティ官民連携プラットフォーム」を設立した。

モビリティ分野では2019年に「スマートモビリティチャレンジ推進協議会」に加盟し、全国他都市との知見の共有を進めるとともにモビリティプラットフォームを構築しているMONET Technologiesと連携協定を締結し、浜松市のモビリティ推進の体制を強化。さらに「浜松市モビリティサービス推進コンソーシアム」で官民連携及び異業種連携による地域の移動手段の確立や移動とサービスの連携を推進している。

浜松市は2020年度中に今後のMaaS政策推進の方向性や、ロードマップを示す浜松市MaaS構想の策定を予定し、「春野医療MaaSプロジェクト」は「浜松市モビリティサービス推進コンソーシアム」と連携して進めていく。

この記事を読んだ人におすすめ

関連する記事はまだありません