NTTドコモと小田急電鉄が、XR技術を使って新しい新宿のイメージ作りに挑むプロジェクト「XRシティ SHINJUKU」。その第一弾が本日、11月18日からはじまった。
第一弾は、新宿西口の地上コンコースで「XR Collection&Museum」が、新宿サザンテラスで「XR Wonder Park」の2つのイベントが行われている。「XR Collection&Museum」は来週23日(月・祝)まで、「XR Wonder Park」は12月27日(日)まで。
ARでファッションやアートを楽しむ「XR Collection&Museum」
「XR Collection&Museum」は新宿西口の地上階コンコースを利用したスペースで、自身のスマートフォンやタブレットを使って、3つのARコンテンツが楽しめるというもの。iOSまたはAndroid対応のアプリ「Styly」をダウンロードし、会場内のQRコードを読み込んで利用する。
文化ファション大学院大学と多摩美術大学とのコラボで実現した企画で、学生らが作成したアート・ファッション作品がカメラのプレビュー画面上に表示される。
XR Collection
舞台は小田急百貨店の階段から続くレッドカーペット。モデルがランウェイを歩いてやってくると、次々とモデルたちが画面に現れ、煌びやかなファッションを披露していく。
XR Museum
多摩美術大学工芸学科と彫刻学科の学生たちによる作品をコンコースのカーペット上にARで表示する。ひとつは工芸学科2020年の卒業制作優秀作品のうち、学校推薦で選ばれた作品2点を展示。デジタル作品ながら質感にもこだわり、あたかもそこに実在するような存在感を意識して作られた。
彫刻学科から2つの作品を展示。作品名は「熱_stroku」(柴田まお)、「Irreversible-不可逆性」(カトウ タイガ)、「Aseptic Kiss」(花形槙)。2020年8月に開催された「タマビ バーチャル彫刻展」から展示。彫刻学科2年生以上の有志が参加してオンライン上の会場でデジタル化された彫刻作品を作成した。
■ 動画 「XR Collection&Museum」
バーチャルキャラクターとともに新宿で遊ぶ「XR Wonder Park」
「XR Wonder Park」は、同名のアプリを使って、バーチャルキャラクターとともに新宿サザンテラスを舞台に、回遊しながらゲーム要素が楽しめるコンテンツだ。いつもの街並みが仮想空間ならではの体験に変わる点が新しい。主催はcuriosity株式会社、小田急電鉄とNTTドコモは協賛となる。
アプリを起動すると、画面の中にミライからやってきた時空潜水士ホロがARで登場。サザンテラス内にある3つ(ZONE A~Cの3ヶ所)のイベントを体験していく。
ZONE Aは、ミライから逃げ出してしまった「ミライノトリ」の行方を追うミッション。最大の見どころはリアルな生け垣からキャラクターが浮き出すところ。
ZONE Bは、未来から今の時代に迷い込んだ迷子を救い出すため、時空海賊と戦うシューティングゲーム。
ZONE Cは、ドコモタワーに時空の歪みが出現し、時空潜水艇が墜落。小田急ホテルセンチュリーサザンタワーを舞台にAR物語が展開する。
なお、サザンテラスのマップ画面も表示され、現在のミッションや、どこにいくべきかのヒントなどが表示される。
すべてのストーリーを体験するとエンディングへと誘われる。
■ 動画 「XR Wonder Park」
利用可能な時間は10時~17時まで。体験は無料だが、コロナ禍での三密を防ぐため参加は予約制となっている。詳細は公式ページで確認。
■ 公式動画 XR Wonder Park – 現実の街にバーチャルの世界が融合する、回遊型のXRアトラクション
新宿を最新のデジタル技術で魅力溢れる街に
小田急電鉄はデジタルの台頭を意識しながらも、まちづくりなどリアルの価値向上に注力する考えだ。西口再開発を機に、新宿の街全体をデジタルや最新技術で活性化したい狙いがある。そのために、XRと通信で先行するドコモと連携し、普段から新宿を行き来する人たちにとって新しい発見と体験ができる機会を提供していきたいとコメントした。
一方、ドコモは5Gの高速性を体験するにはXRが最適としながらも、今回のイベントでは5G通信は利用しないし、5Gの電波をエリアに吹いているわけでもない(4G LTEやWi-Fiで楽しめる)。むしろ、一般の人に広くXRの魅力を体験してもらうには普及している4G LTEで利用できる環境が望ましいことを強調した。
両社の「XRを通じていつもの街に新しい体験を提供したい」という思いは同じだ。採算を度外視して無料で体験できる場も用意したことはとても挑戦的で面白い試みだ。一方で、自身のスマホに専用アプリをインストールしてXRを体験してみたいという一般の人は、通りすがりの中にはごく少数だろう。
XRアート作品は見てもらわなければ始まらない。むしろ大型のテレビでAR空間を映し出し、いまそこにあるリアルの空間とデジタルの仮想空間が生み出す不思議さを通りすがりの人にもまずは感じてもらえるような工夫や仕掛けが必要なのではないか、と感じた。
「XRシティ SHINJUKU」公式サイト
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。