石川県七尾湾で水素燃料電池を搭載した「水上ドローン」の実証実験 モバイル回線に接続したスマートフォンで遠隔制御
日本国内の漁業就業者数は高齢化や後継者不足により1988年から一貫して減少傾向であり、漁業の効率化と省人省力化が持続可能な水産業の実現に向けた社会課題の一つになっている。近年、水産分野におけるICTやロボット技術の活用が課題解決の一手段として着目されており、漁業就業者の勘や経験に基づく漁業から、先端技術やデータを活用した漁業への転換が推進されている。
KDDI総合研究所と大阪府立大学はロボット技術の活用による漁業の効率化や、沿岸部の海洋環境推定などのデータ分析に必要となる広域な海洋環境データ収集の省人省力化を目的として、日本初(KDDI総合研究所調べ)のモバイル回線に接続したスマートフォンでの遠隔制御と長時間使用が可能な水素燃料電池を搭載した「水上ドローン」を日本海工の協力のもと開発。実用化に向け、2020年11月から石川県七尾湾で実証実験を開始することを発表した。
遠隔地から制御し海洋環境の調査が可能か検証
実証実験では4G LTEに接続するスマートフォンの画面操作で、水上ドローンに搭載されたカメラの映像を見ながら操作するリアルタイム制御と、事前にスマートフォン上で作成した航路に従って自律航行する自律制御の評価を行い、実際の漁場から離れた自宅や事務所などの遠隔地から水上ドローンを制御し海洋環境の調査が可能か検証する。また、広域な海洋環境データの連続測定を実現するために、電源として搭載した水素燃料電池の連続航行可能時間や、他の電源との性能比較、安全性の評価・検証も行う。
KDDI総合研究所は今後、今回の実証実験を通じて取得した各種データを検証することで水上ドローンの性能向上を図ると共に、水上ドローンを活用した離島への物資配送や災害対策など、新たな応用展開を視野に入れ、実用化に向け全国での海上実験を順次実施する予定。
また、従来の鉛蓄電池やリチウムイオン電池と比較して単位重量あたりの電池容量が大きく、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を排出しないため水素燃料電池についても、2030年の水素社会の到来と小型ロボットへの水素燃料電池搭載を見据えて研究開発も進める。
大阪府立大学大学院 工学研究科 海洋システム工学分野 准教授兼大阪府立大学養殖場高度化推進研究センター センター長 二瓶泰範は次のように述べている。
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水上ドローンの特徴
・航行時と海洋環境データの測定時で異なる形態を有する
水上ドローンは四つの船体を有し、各船体を独立的に制御することで船体の定点保持や急旋回といった特徴的な動作が可能。また、水上ドローンは航行時と海洋環境データの測定時で異なる形態を有し、用途に応じた選択が可能。従来の単胴船に比べ横波などによる転覆の危険性も低く、自律航行する際の安全性も考慮した設計となっている。
・スマートフォンによる水上ドローンの遠隔制御
スマートフォンの画面操作により水上ドローンの前後進・左右旋回や形態変更など各種制御が可能。また、ユーザは水上ドローンが搭載するカメラ映像をスマートフォンの画面上で確認しながら遠隔制御ができると同時に、水上ドローンの位置などを含む各種センサ情報を確認することができる。
・スマートフォン操作による自律航行航路の作成
スマートフォン画面に表示される地図/衛星写真上を、水上ドローンを自律航行させたい航路を指でなぞることで自動的に航路情報を作成できる。作成した航路情報を4G LTE通信で水上ドローンへ転送することで自律航行が開始し、現在地などの各種情報をスマートフォンの画面上で確認することができる。
・水素燃料電池は飛行ドローン向け製品を採用
水上ドローンに搭載する水素燃料電池は飛行ドローン向け製品を採用。小型・軽量ながら最大連続出力800Wの性能があり、水上ドローンへ十分な電力を供給することが可能。水素ガスボンベにはカーボンFRP(Fiber Reinforced Plastics)容器を採用することで軽量化を図り、同重量のリチウムイオン電池の4倍以上の電力を貯蔵できる。
今回、搭載した水素燃料電池と水素ガスボンベのシステム重量は約10kg(ケース重量除く)でありながら、4kWhに相当する電力を貯蔵できる。リチウムイオン電池の場合、4kWhのシステム重量は40kgとなり、水素燃料電池システムの約4倍の重量となる。
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山田 航也横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。