星野リゾートが導入した大浴場「3密回避」システム 開発のプロセスと宿泊客の反響 インバウンドからマイクロツーリズムへ

2020年6月以降、星野リゾートは全国各地で運営する『星のや』『界』『リゾナーレ』など、大浴場を持つ計24か所の宿泊施設に、大浴場の混雑状況を宿泊客が簡単に確認できる独自のIoT「3密回避」システムとデバイスを開発し、導入している。開発は株式会社MAGLABと株式会社CambrianRoboticsが協力した。
コロナ禍において“ニューノーマル”、とりわけ「予防・衛生意識」が人々の間で高まるなか、星野リゾートはウイルス感染予防策をどのように開発したのか、顧客からはどう評価されたのか、CambrianRoboticsがリリースを通じて発表した。それまで大きな割合を占めていた「インバウンド」顧客が激減し、「マイクロツーリズム」を掲げた変革も見ていきたい。

「衛生管理」基本的なこととして、運営する各宿泊施設の客室や公共エリアの除菌清掃、館内各所への除菌用アルコールの設置、スタッフの健康と衛生面の管理等は徹底して行われている


「衛生管理」と「3密回避」の二軸で対策に取り組む

日本の観光産業における重要な位置づけにある星野リゾートは、ウィルス拡散の不安や行動制限でストレスを抱えがちな宿泊客が、安心して旅のひとときを過ごせるように、「衛生管理」(写真上)と「3密回避」の二軸で対策に取り組んでいるという。
その一環として、CambrianRoboticsをはじめとするパートナー企業の技術協力の下、星野リゾートとMAGLABが最先端のIoTテクノロジーを活かして共同開発したのが「3密回避システム(混雑状況可視化システム)」だ。導入から約半年が経過し、現在も各拠点で活用されている。



新型コロナウイルス感染防止対策として、各宿泊施設の客室や公共エリアの除菌清掃、館内各所への除菌用アルコールの設置、スタッフの健康と衛生面の管理の徹底等はもちろんのこと、更にIoTなどの最新技術を導入し、感染予防策の徹底を計画に加えたという。
星野リゾート 情報システムグループは、それまでもIoTプロジェクトを何度か立ち上げたものの、いずれも上手くいかなかった。その理由を「顧客にとっての価値につながっていなかったから」と分析した。




「大浴場」の混雑状況を見える化

そこで、施設内で人が密になりやすく同時に可視化しにくいエリアである「大浴場」を対象にシステムとデバイスを開発。そして、このプロジェクトの推進にあたって、3つの信念を打ち出した。

・IoTという仕組みで、顧客価値向上の一翼を担う
・部門のメンバーたちが会社の危機を救い、IoTによる課題解決の実績をつくる
・短期間で走りながらシステムを作り上げ、スピーディに改善を行う業務姿勢にする


開発スケジュールはわずか6週間。「世の中にあるセンサーは、もっとインテリアに溶け込んでいくべきじゃないか」と考え、より施設に溶け込むデザインのデバイスを開発した。




時間的、物理的な制約をクリアするために、MAGLABが開発したセンサーデバイスにはCambrianRoboticsの『obnizOS for EPS32』を搭載することになった。


システム導入以降の奮闘と改善

MAGLABのサーバーとセンサーデバイスは、『obniz OS』やクラウドと双方向通信を行いながら人数のカウントデータなどを取得する。そのデータを基に星野リゾートが独自に開発したアプリケーションを通じて、宿泊様がスマホからリアルタイムに混雑状況を把握できるシステムを開発した。大浴場の「3密回避」システムだ。

しかし、導入当初は誤検知がけっこうあり、最初の1、2か月は調整の連続だったという。まず、6月に(星野リゾートの)15施設にシステムを入れたことで、現場のスタッフの協力も得られ、そこから順次、ソフトウェアや置き場所を改善、徐々に適正な運用とデータ取得ができるようになってきた。
本来、ハードウェアは半年ほど時間をかけてテストして、承認を得てから出荷していくものだが、今回はとにかく走りながら直していく、それこそ今のクラウドのように対応する方法をとった。


宿泊客からの満足度調査でも、当初は『3密回避システム』への不満や課題を示す回答が多かった。開発元のMAGLABへそれらの声を随時フィードバックし、システムを改善した。
すると、7月くらいから評価があがる声が増えてきて、クレームも減ったという。


マイクロツーリズムの推奨

日本全国に展開している星野リゾートの各施設はこれまで、拠点地域の風土や自然、文化を大切にし、料理や屋内外のアクティビティなどに地域のものを積極的に採り入れてきた。そして、2020年4月頃、コロナ禍が深刻化する中、片道1~2時間程度で足を伸ばせる近距離旅行として「マイクロツーリズム」の推奨を本格的にスタートした。

『界 仙石原』の総支配人は、コロナ禍以降から現在までの状況をこのように語った。
「緊急事態宣言が出た4月、5月はご予約の7割がキャンセルとなり、最も影響が顕著でした。 しかし、私たちが行っているコロナウィルス感染予防策やマイクロツーリズムについて、ウェブサイトやメディアを通じて知られるようになった6月以降、客足が戻ってきました。お客様からのお問合せも、6月は非常に多かったです。10月になってから、『界 仙石原』は前年比並みに稼働率が回復しました」


宿泊客のこうした動向は、他施設でも明白だという。例えば、インバウンドの宿泊客が半数を占めていた『星のや京都』では、京文化をテーマにしたマイクロツーリズムを打ち出したところ、2020年8月に近畿エリアからの宿泊客の割合が4割にまで増加し、全体稼働率は約80%に回復した。


また、同じ時期、静岡県浜松市の『界 遠州』では、茶畑やお茶風呂などのプログラムを提案したことで中部エリアからの宿泊客の割合が5割に達し、全体稼働率は90%以上、リピート客も増加した。宿泊客のターゲットをインバウンドから周辺地域の人に変え、それが軌道に乗ったと言えるだろう。



この記事はCambrianRobotics社が発表したリリースに基づき、要約したものです。
星野リゾート「最高水準のコロナ対策宣言」—「3密回避」システム導入とその反響 —
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000023.000040376.html

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ロボスタ編集部

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